日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。死んで生き返る"使い捨て労働者"による復讐エンタメ!

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『ミッキー17』

評点:★4点(5点満点)

© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. © 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

映画は現実と違ってなんでもジョークにできる

気はいいものの、あまり頭の回転がよろしくなく、かなりしょうもない男が主人公のSFブラック・コメディである。

ときは未来、とある未知の惑星に新天地を求めて航行する宇宙船があった。乗員は宗教的な熱意に動かされた植民者たちで、それを率いるのはいかにもキリスト教福音派がかった政治家である(マーク・ラファロがトランプ大統領の物真似を交えつつ演じている)。

主人公は「使い捨て(エクスペンダブル)」として、危険な任務を任され、そして大体死ぬ。しかし彼の記憶は日々ディスクに保存してあり、それを新たに3Dプリントした身体に移すことで、ある意味「死んでは生き返る」を繰り返すのである。

面白いのはそんな状況にありながら主人公があまり深く悩んだり我が身を呪ったりしないところで、それが本作をダークなコメディとして成立させている。あえて深みに踏み込まないことで、逆に「人間の実存とは?」という問いかけ自体がジョークになってくるのだ。

物語の後半ではエイリアン種族と植民者たちの対立がクローズアップされるなど、社会的なテーマもたくさんちりばめられているが、現実社会と違って何でもジョークにできているのが本作の強みなのである。

STORY:人生失敗だらけの男・ミッキーが手に入れたのは、「何度でも生まれ変われる」夢の仕事。しかし、それは過酷すぎる業務で次々と死んで生き返る究極のブラック労働だった!ある日、手違いで自分のコピーが生まれ事態は急変する

監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロほか
上映時間:137分

全国公開中

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