2020年9月10日

●『キン肉マン』作者 ゆでたまご(嶋田隆司・中井義則)

『キン肉マン』が『週刊少年ジャンプ』で連載していた1980年代、当時の少年たちは毎週月曜日に本屋さんへ駈けこんでいました。『ジャンプ』を月曜日に読んでいないと、学校での話題についていけないからです。

そして現在、話題に追いつくことはとても容易になりました。SNSがあれば、誰でも話題を発信できるし、それを知ることもできます。本屋さんに駈けこんでいた少年たちからすれば、夢のような話かもしれません。しかし私たちは、ウェブ連載に移行してから約9年になりますが、特にここ数年は、現在は"良くも悪く"も便利な時代だとも考えるようになりました。

まず私たちにとって、現在の環境が『キン肉マン』にとっていい影響だと思うのは、読んでくれた皆さんの感想がすぐにわかること。「今週の作業はキツイな」と思ったとき、皆さんの発言を見ると励ましにもなるし、じゃあもっと楽しんでもらうにはどうすればよいかと考えるモチベーションをたくさんいただいています。あるいは、『キン肉マン』が連載していることを知らなかったけど、SNSの評判をきっかけに読んでくれるようになったという方もいると思います。それはとてもうれしいことです。

逆に悪影響だと思うのは、私たちの漫画原稿そのものやその内容が、簡単にSNSに上げられてしまうこと。感想を自由に述べ合ってもらうのは構わないんです。むしろ大歓迎です。しかしたとえば先日の8月31日、319話が『週プレNEWS』で公開されると同時に、ネット上には感想を述べあうという必要性以上に作品内容がわかってしまう文章や画像を含んだものがたくさん見受けられ、とても悲しくなりました。そして9月1日未明に、私、嶋田隆司がSNS上で一連の発言をした次第です。

読者の皆さんが月曜日に学校や会社へ明るい気持ちで行けるように、私たちが一生懸命描いている作品が『キン肉マン』です。そんな私たちの血肉ともいえる漫画原稿のうちの一枚が、私たちの意図が伝わらず望まない形でSNSに上げられただけで20ページの原稿をすべて読んだように思われたことも非常に残念でした。20ページすべて読んでくれたら、もっとおもしろいのに。

そして、私たちが一番気になったのは、他の読者の皆さんへの配慮という点です。特に『キン肉マン』は先月から『週刊プレイボーイ』でも連載を開始し、ウェブ媒体、紙媒体でさまざまな読み方ができるようになりました。つまり、それだけ人によって読むタイミングも違ってきます。かつて『ジャンプ』で『キン肉マン』をいち早く読もうとしていた少年たちも、自分が読む前に内容を話されたら怒っていたように、今回はその配慮のない行動がSNS上の一部の読者によって引き起こされてしまったのだと、私たちは考えています。

『キン肉マン』の連載が始まってから41年がたちますが、私たちがやっていることはあの頃と何も変わっていません。変わらず、他のどの漫画よりおもしろいと思われる作品を毎週懸命に作っているつもりです。

だから皆さんもあの頃と同じように、誰かが悲しんだり、怒ったりするような可能性のあることは控えていただき、皆さんがお互いに思いやりを持って、楽しんでくれることを願います。

●『週プレNEWS』編集部

『週刊プレイボーイ』および『週プレNEWS』にて、いつも『キン肉マン』をご愛読いただき、誠にありがとうございます。

ゆでたまご先生も心を痛めている、Twitter、Instagram等のSNS、およびブログ等、インターネット上における『キン肉マン』画像のスクリーンショット投稿について両先生と話し合いを重ねた結果、編集部としても読者の皆様の良識ある行動を改めてお願い申し上げます。

たとえ軽い気持ちであったとしても、漫画のスクリーンショットをSNSやブログに著作権者の許諾無く投稿(アップロード)する行為は、法で定める一部の例外()をのぞき、著作権の侵害にあたり、場合によっては刑事罰が科され、あるいは損害賠償請求の対象となります。悪質な著作権侵害、ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもありますので、ご注意ください。

※著作権法上の「引用」の条件を満たす場合など。