インフルエンザの推計患者数が1月12日現在ですでに約34万人にも上り、各地でノロウイルスの集団感染も発生するなど、冬の感染症がピークを迎えようとしている。
マスクが手放せない季節となった、意外とマスクについて知らないことも多い。そこで、冬の感染症に詳しい昭和大学医学部臨床感染症学部門の二木芳人教授に、マスクの予防効果、使い方など基礎知識を聞いてみた。
「電車の中で隣にインフルエンザの患者さんがいても、マスクをしているから絶対に大丈夫とはいえません。マスクの本来の目的は、自分がインフルエンザにかかったときなどに、咳やくしゃみをして周りにウイルスをまき散らさないため。
だから、マスクをしていれば口の周りに直接しぶきが飛んでくるのを防いでくれるかもしれませんが、顔や服にもウイルスはつきますし、マスクをしていても必ず隙間ができますから、そこからウイルスは入ってきます。ですので、マスクの予防効果は限定的ということになるでしょう」
ということはマスクをしていても、外出しただけでウイルス感染してしまう危険性はある?
「街を歩いていて、すれ違いざまに感染することはめったにありません。狭い部屋の中や近くにいる人から感染することのほうが圧倒的に多い。
というのも、ノロは状況によっては空気感染するといわれていますが、インフルエンザは空気感染はしません。飛沫感染で患者さんの咳やくしゃみの中にいるウイルスで感染しますが、そのしぶきが届くのは2メートル程度です。ですから、学校や職場などで、マスクをせずに咳やくしゃみをしている人がいたら、だいたい3メートルくらい離れたほうがいいですね」
もちろん、予防効果が限定的とはいえ、マスクをしないよりはあったほうがいい。その際には、注意点があると二木先生。
「マスクは基本的に使い捨てです。一度使ったマスクは捨てたほうがいい。マスクを使うと、表面にはたくさんのウイルスがつきます。それをまた使うのは衛生的に問題です。
また、マスクをわしづかみにして外している人がいますが、あれではマスクをしている意味がありません。ウイルスが手についてしまいます。ですから私たち医療関係者は、マスクの部分を触らずに耳にかけるヒモの部分をつまむようにして持って外します」
他人に感染させないため、そして自分の予防のため、やはりこの季節、マスクは必需品だ。
○二木芳人(にき・よしひと) 昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門主任教授、昭和大学病院感染症内科科長、日本感染症学会感染症専門医。共編著に『感染症診療Pro&Con』(南江堂)などがある。
(取材/村上隆保、イラスト/西アズナブル)
■週刊プレイボーイ6号「感染(うつ)る前に読む! インフルエンザ&ノロ予防最新知識」より