新生活に向けて引っ越しを考えている人、物件は決まっただろうか。次に選ぶのが「引っ越し業者」だが、なかには悪質な業者も存在するので注意したい。
最近は、比較サイトで一括見積もりするのが主流になっているが、見積もりを出すと、1時間以内にすべての登録業者から電話があるほど、引っ越し業界は激しい競合状態にある。
こうした中から悪徳業者を見抜く方法を、関東甲信越を業務エリアにする引っ越し業者の幹部A氏に聞いた。
「彼らの狙いは、無料サービスの実査定で家に上がり込むこと。強引な業者だと1時間以上、家に居座った挙句、『契約してもらわないと社に戻れません』などとあからさまな営業をかけてくるケースもあります。そこで断ると手のひらを返したように不機嫌になる業者もいて、なかには帰り際に『これが欲しかっただけだろ!』と捨てぜりふを吐かれ、特典の景品を投げつけられたという人もいます」
さらに悪質なケースだと……。
「実査定終了後、『ぜひウチでやらせてください』と念押しして梱包用の段ボール箱を玄関に置いて帰り、他社と契約した客に対しては後で段ボール箱代を請求するというムチャな業者もいます」(A氏)
もちろん、優良業者も多数存在するので、比較サイトは大いに活用すべき。ただ、こういう業者に当たってしまった場合は、“強く断る”ことで対抗しよう。
そして料金。これからの繁忙期には平時の3、4倍に価格が跳ね上がることもある。そこで業者が勧めてくる可能性が高いのが、料金が若干安くなるフリー便。日取りを指定し、時間は業者任せにするという契約方法なのだが……。
「繁忙期に入ると、業者によっては稼ぎ時とばかりに、各作業班に一日5、6件の仕事を詰め込みます。もちろんフリー便を頼んだ客は後回しなので、当日の仕事がスムーズに進まなかったり渋滞にはまったりすると、さんざん待たされた挙句、到着が深夜に及ぶこともあります。作業員は疲労困ぱいで、ミスも発生しやすい」(A氏)
サービスの低下にはこんな理由がある。
「作業員の時給が高騰するのもこの時期なので、学生や普段は別のアルバイトをしている引っ越し業者未経験の人が日雇いで現場にたくさん入ってきます」(A氏)
A氏いわく、不慣れなスタッフが多くなれば、思わぬ不運に見舞われることも。
「大手なら必ずひとりは社員を作業班に投入するものですが、格安をうたう小規模な業者は人手が足りなくなるので、ドライバーのみそこそこ経験のあるアルバイト、残りは未経験というような危うい作業班が現場を受け持つことになります。荷物の扱いが雑になり、傷つき防止シートも張らずに搬出を行なって家の床や壁を破損させ、敷金が戻ってこなくなるといった事例もよく聞きます」
たとえ格安でも敷金が戻らなかったり、家具が破損すれば元の木阿弥(もくあみ)。そんな業者を見抜くコツは?
「やはり格安すぎる業者は警戒すべきですが、見積もり結果が『一式1万5000円~』などザックリしていたり、契約をせかしてくる業者は避けたほうがいいでしょう。また、電話口などで平気で他社批判をする業者も要注意です」(A氏)
せっかくいい物件が見つかっても、引っ越し当日のトラブルほど気分が悪いものはない。新生活を気持ちよく迎えるには、引っ越し料金であまりケチらないことも大切だ。
(取材/興山英雄)