ペリト・モレノ氷河の大パノラマ! 赤鼻トナカイ状態だけど感動中!

ブエノスアイレスから国内線で3時間。大自然パタゴニアの玄関口、エル・カラファテの街にやってきた! 到着するなりサムーイ!

危険なブエノスアイレスとはまるで違う田舎の雰囲気。澄んだ空気の向こうには山や湖が静かに佇み、小さな街にはロッジのような宿やレストラン、氷河ツアーの代理店、みやげ屋が並ぶ。

さっそく街を散歩しようとすると、私にだけ1匹の犬がついてきた……ていうか先導してくれる。よし、この犬について行ってみよう。見たいお店で立ち止まると一緒に止まり、お店の外で私を待っている忠犬ぶりは、まるでハチ公! 愛くるしいコイツに私はエル・カラファテに ちなんで「エル」と名付けた。よろしく頼むよエル!

この街に来た目的は、有名なペリト・モレノ氷河を見ること。さっそくツアーを申し込まなくっちゃ。エルに誘われるまま歩いていくと、一軒のツアーオフィスに着く。するとオフィスの美人なお姉さんが、「ペペはあなたになついたのね」とニッコリ。そうか、この犬は「ペペ」っていうんだ。ちなみにペペとはスペイン語圏で定番のファーストネームJOSE(ホセ)のニックネームらしい。つまり、このワンちゃんは日本でいう「太郎」ってとこか。

そんな太郎に連れて来られたこのオフィスで、これも何かの縁かと、旅人にとっては高級ツアーの氷河ミニトレッキングAR$800(約10500 円)を申し込む。すると、お姉さんは最後にこう付け加えた。「国立公園入園料に別途AR$130(約1700円)かかるから、そこんとこよろしく!」。まさかの別料金……ペペはこの美人の手下だったのだろうか。

エル・カラファテは氷河だけじゃない。私の大好きなチョコレートも名物で、チョコレート屋の多さは“犬も歩けば棒に当たる”状態。どの店に入ろうか決めかねていると、ペペはなぜか一軒のお店の前で私に飛びつき店に入っていった。お勧めなんだね? よし買おう。氷河に挑むには糖分が必要だ! …と自己正当化しつつ、有名な湯葉型のチョコレートで至福のチョコレートタイム。結果、数時間で2店舗へ客をひいた営業上手なペペ。雇いたい。

営業上手のワンちゃん、ペペがイチオシのチョコレート屋

湯葉を丸めたような形のチョコレートはパタゴニアチョコレートの定番の形

澄んだ空気を吸って心が洗浄されたら、背中に羽根が生えました

巨大ガリガリ君に食べられる!?

■巨大ガリガリ君に食べられる!?

チョコレートでパワーチャージした私は、翌朝まだ空が真っ暗の中、氷河ツアーに出発した。

ツアーといえど、氷河まで辿り着くにはピックアップバス→大型ツアーバス→フェリー→トレッキング→氷河トレッキングと、道のりは長い。もし日本から来るとしたら、これにプラス地球の反対側までの移動があるのだから気が遠くなる。

TOKIOまでの距離は17221KMだって。想像つかないけどとにかく遠いね

フェリーに乗り込むといよいよ胸が高鳴り、ひとつ山を抜けると遠くに青白くそびえる氷河が! それはまるで超いっぱいの“ガリガリ君”! どんどん近付いてくると、いつも食べてたガリガリ君に逆に食べられるんじゃないか…と錯覚するほどの巨大さだ。

ペリト・モレノ氷河のあるロス・グラシアレス国立公園は、南極、グリーンランドに次ぐ氷河面積を誇る。雪崩が多いのが特徴だといい、夏の終わりに参加した私は、時折遠くから 「グゴゴゴゴ…」という音を耳にしては、「崩れた! 崩れた!」と大騒ぎ。 目の前で轟音とともに崩れる氷河はスローモーションに見えるけど、カメラを急いで出しても間に合わない。

光が指すと徐々にブルーが浮かび上がる。裂け目の青がなんとも不思議に青みを増す

氷河の堂々たる出で立ちと凄みにしばし見とれ、早速ツアーに置いて行かれそうになりながら、氷河の壁近くを歩き始める。氷河までの距離ついに数センチ!

青い! 蒼い! 碧い!

見たことのないブルーのグラデーションにテンションは最高潮! 私は寒さを気にもせず、手袋をはずして氷河にそっと触れてみた。そして、氷河の隙間からあふれ出す湧き水を飲んだ。甘い。どうやらただの水ではないな。旅人マリーシャのHPが全回復した。

青いクリスタル。まさに宝石とはこれなんじゃないかと思う程キレイ

ついにメインの氷河ミニトレッキング。スペイン語班と英語班に分かれ、ガイドさんから説明を受ける。このペリト・モレノ氷河は全長約35km、水面からの高さは平均60mで、1日あたり2mも進んでるんだって!

「トレッキングする時は、足を肩幅に広げ、ザクザク刺すように歩いてね! 登り、下りで姿勢をうまく使ってバランスをとりましょー! さあ、用意はいい?」というガイドさんに続いて「オー!」と拳を上げたけど、いざ氷河を見上げると、自分がいかにちっぽけかを思い知らされる。高くそびえ立つ氷河の壁を前に「これに登るの…?」と不安でいっぱい。先のグループが氷河の上で豆のような小ささになっている。

こりゃーしんどそうなトレッキングだな。氷河は気に入ったけど、運動神経の悪い私がこの大自然に太刀打ちできるのか。

プロの氷河を登る姿はカッコイイ!彼女に着いて行けば大丈夫

青白い景色の中に、金色に輝く光が!

■金色に輝く光が!

躊躇してる暇もなく、スニーカーにはアイゼンをはかされた。ツアーが進み始めたので恐る恐るついて行くけど、このアイゼンてやつはなんとも歩きにくいよ!

第1ポイントですでに半泣きの私。どうなることやら。それでもこの美しき青にテンション上昇。まるで二重人格のように怖がる私と喜ぶ私。大自然の中で、いち人間の小さく複雑な思いを揺らがせながら、青をじっくり拝んでいると毎度のように遅れを取ってしまう。そして足首がグニャリといくよ! 第2ポイントにさしかかると、もう全身を使って歩くしかなく、大きく手足を動かしながらバランスを取って前に進んだ。

すると、私の右足のアイゼンが外れてしまった。チビをごまかすために少しヒールの入ったスニーカーを履いていた私に、ガイドさんは「靴が問題ね」。トレッキングシューズを買う余裕も荷物の隙間もなかったとはいえ、やっぱり靴は大事だね。

私だけ何かの踊りのようなおかしな動きで進んだ

少しみぞれが降ってきた。寒さに体の末端が冷え、歩きづらい氷河道に少し疲れが出てきた。まだ進むのかなーと心が折れ始めた頃だった。

キラーン! 全面青白い景色の中に、金色に輝く光を見つけた! キター!

そうです。氷河ウイスキー

これのために頑張ってトレッキングしたようなもん。いきなり足は軽くなり、ウイスキーめがけて走り出す。氷河のクラッシュアイスがこんもり入った グラスにウイスキーを注ぐと、なんともおいしそうな一杯のでき上がり! いただきます!

幸せな時間はあっという間。皆が一口だけ味わったウイスキーをボウルに捨てている中、私は急いで全部飲み干した。冷えて疲れた体に、ウイスキーとお菓子の糖分がじわじわ染み渡る。

「アイラブチョコレート!」とご機嫌ではしゃぐ私に、ずっとヘルプしてくれたガイドさんが「グッジョブ!」と笑顔でチョコ菓子をもうひとつくれた。最高のご褒美をもらって氷河ミニトレッキング終了ー! さすがに遭難するわけもなく、無事生きてます。

ドルチェデレチェのチョコ菓子付き。ウイスキーにピッタリー! 至福!

世話の焼ける客ですみまてん。また飲み来まーす!とホロ酔い

【This week’s BLUE】今回私が一番惚れた青。氷河の割れ目からあふれる湧き水はほんのり甘い!

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】