ありえない――これが週プレの第一印象だ。
先日、サントリーが日本全国20歳から69歳までの「和食好き」を自認する600人の男女に、和食に関するアンケートを行なったことを公表した。「あなたが和食を好きな一番の理由は?」とか「あなたがもっとも好きな和食は?」といった項目に、それぞれ興味深い回答が寄せられており、なかなかおもしろい調査ではある。
……だが、その中で「あなたが一番好きな和食の丼メニューを教えてください」という項目の調査結果が「ありえない」のだ。
親愛なる週プレ読者ならば、好きな丼と聞かれたら、脊髄反射的に、いや、むしろ食い気味で「牛丼」と即答するであろう。しかし、件のアンケートでは1位どころかベスト5にも入らない8位と惨敗。“得票率”はわずか2.8%である。これは丼キングに輝いた「海鮮丼」(20%)の7分の1以下の数字だ。驚くべきことに、伏兵中の伏兵「とろろ丼」(3.3%)にも敗れるというとんでもない結果となっているのだ!
「悔しいですっ!」
そ、その声は……牛丼といえばこのお方、漫画『キン肉マン』原作者のゆでたまご・嶋田隆司先生! そうでしょう、そうでしょう! 先生から、ガツンと言ってやってくださいよ!
「海鮮丼や天丼なんて、あなた本当に普段から食べてますか?とアンケート回答者に聞いてみたい気分ですよ! あんなものたまにしか食べないものでしょう! 海鮮丼なんてボクの嫌いな丼No.1ですよ! ええ、ボク、シーフード嫌いですから! というか、もっとも嫌いな丼に負けたことも悔しいですけど、とろろ丼にも負けるなんて……どう考えても牛丼が負ける相手じゃないのに!」(激おこの嶋田先生)
ですよねー! でも、やっぱりアレと同じですかねぇ。大好きなAV女優がいて、毎晩お世話になってるのに、人から好きな女優を聞かれると「綾瀬はるか」とか「掘北真希」って、ついつい答えてしまうようなものかもしれません。安く見られているだけというか、お手軽な女って思われているというか。
「……まぁ、そうでしょうか」(若干、引き気味の嶋田先生)
ただ、あえてこの結果を甘んじて受け止めるとして、なんで牛丼はこんなに惨敗したんでしょうか?
「う~ん、アンケートの質問の中の『和食の丼メニュー』って聞き方がくせ者かもしれません。和食って聞かれると高級なイメージがつきまとうし、そうなると手軽な値段の牛丼よりも、海鮮丼や天丼を選ぶ人が多いのも頷けます……って納得はしてないですけどね! ただ、『和食』って言葉に構えた人が多かったんでしょう。本当はみんな、いつも牛丼ばっかり食べてるくせに……」(再び息を吹き返した嶋田先生)
美人料理研究家の森崎友紀先生、牛丼は和食ですか?
牛丼惨敗の原因は、「和食っぽさが足りないから」との嶋田先生の見立てはすごく頷ける。たしかに海鮮丼や天丼に比べると、和食度は落ちるような気はする。
だが、そもそも牛丼は和食なのだろうか? 美人料理研究家の森崎友紀先生に聞いてみた。
「牛丼は正真正銘の和食です(断言)。明治時代に生まれた牛鍋がルーツと歴史的にも古く、調理面でも醤油とお砂糖を混ぜた日本独自の『割り下』で味付けされている。はっきり言って、和食以外のなにものでもありません。また海外からも和食認定されていて、たとえば台湾のガイドブックなんかには、日本の牛丼チェーンなどが、オススメの和食店として紹介されているくらいです」
なるほど! ちなみに、海鮮丼や天丼と比べても遜色ないくらい、牛丼を和食っぽくする方法とかないですかね?
「器を変えればいいんですよ。和食って、ひとつのスタイルなので、器を高級なものに変えることで、かなりそれっぽくなります。たとえば親子丼の名店として知られる『玉ひで』さんなんかは、器がものすごく美しくて、それが料理の“品”を格段に上げています。味もさることながら、見た目にも美しいこと。それが和食度アップに貢献しますので、牛丼も高級な漆器の器に蓋をつけて出せば、誰がどう見ても和食になると思います。あと、ご飯はお椀に、具は平皿に、別々に盛れば完全に和食になりますよ」(森崎先生)
先生、別々の皿に分けたら牛丼じゃなくなりますから!
いぜんとして牛丼の人気が低かった謎は残ったままだが、それでも世界に誇る“和食”であることは間違いないのである。
(取材・文/週プレNEWS編集部)
■参考サイト「サントリー和食通信」 http://www.suntory.co.jp/beer/wazen/tsu-shin/