「アイドルオタク」と聞くと、どんなイメージをお持ちだろうか?

「現実の女子と触れ合えないから握手会に行く」「アイドルにハマりすぎて仕事をしない」など、どちらかというと“負のイメージ”を持っている人も多いはず。しかも、「自分は“リア充”(=リアル充実組)だ」と自負している人たちにしてみると、その傾向はより強いのでは?

そういう人が、一度、アイドルグループのライブ会場や握手会に行ってみるとビックリするはずだ。そこには、小ギレイな服を着て、まるで新歓コンパのようなノリで仲間と会話をする若者たちで溢れているのだ。

とはいえ、ひと昔前(90年代頃)のアイドルオタクに一風変わった人が多かったのも事実。つまり、現在のアイドルオタクがオシャレになったともいえるのだ。

ではなぜ、アイドルオタクのファッションは“ダサくなくなった”のだろうか? 自らもハロプロの熱狂的なオタとして活動していた経験があり、『図説 オタクのリアル』(幻冬舎コミックス)という著書を持つ、ライターの安田誠氏はこう答える。

「10年以上前のオタクは、なぜかGジャンにバンダナ、オープンフィンガーグローブを身につけたような特殊な人が多かった。しかし最新の調査(マイナビ調べ)では大学生の39.5%が『自分を「オタク」だと思う』と答えているように、いわゆるフツーのセンスを持つ人々がオタク趣味に走る時代になった。結果として、オタク全体としてみれば特殊さが薄まり、ファッションの全体的な底上げがなされたのではないでしょうか」

つまり、もともとオタクだった人がオシャレに目覚めたというよりも、フツーのセンスのオタクが増えた、という分析だ。

ファストファッションの普及も要因のひとつ

また、「日本ツインテール協会」会長として数々のアイドルに触れつつ、ファッションブランド「glamb」のデザイナー兼代表も務めるマルチクリエイターの古谷完氏は、アイドルオタクのファッションの変化について、こう分析する。

「最近のアイドルオタクのファッションを見ると、“可もなく不可もない”ものが多い気がします。その理由は、ユニクロやH&Mといったファストファッションの普及によるところが大きいでしょう。これらのデザインは大多数の好むスタンダードなものばかりなので、どう合わせてもハズしようがない。

また、アイドルはまず“世界観”をウリにしますから、オシャレなTシャツなどを公式グッズとして出すグループも多い。それを身につけるオタクが増えたことも、服装のセンスがよくなった要因かもしれません」

握手会では、好きなアイドルに会うのだから、清潔かつオシャレにキメるのは当然。アイドルオタクと呼ばれている人たちは、むしろフツーの人よりも外見に気を使っているオシャレな人が、実は多かったのだ。

(取材/西中賢治、取材協力/ヒロタシンイチロヲ、釣本知子)

■週刊プレイボーイ19・20合併号「(実は)恋と仕事に勝つ要素はすべてアイドルオタクが持っていた!!」より