空と同じく、海もドンヨリと濁った東京湾。まずはシロギス釣りから!

今回のターゲット「シロギス&アナゴ」の実釣の日がやってきた。雨の心配はないものの、五月晴れとまではいえず、しかも海は若干濁り気味……。雲行きは怪しいが、とにかくシロギス釣りをスタート!

***

伊藤遊船は江戸川河口付近に架かる東西線の高架橋の真下。この辺りの河川敷には貸ボート屋が4、5軒あり、週末賑わう。沖釣りは大型乗合船で行くことになるが、ここ江戸川河口は、下げ潮で水が引いた時は、川の真ん中の水深が深いところまで小舟で停泊中の大型乗合船に横付けして乗り換える。船にいた女将さんが笑顔で見送ってくれた。

大型乗合船に乗り換え、岸払い(船払い)したのが午後1時近く。船はスローな速度で河口を航行する。だんだん川幅が広くなり、程なく海に出た。船は速度を増して一路、盤州干潟へ向かう。千葉県木更津市の小櫃川河口から東京湾に広がり、干潮時は1400haに及んで露出する広大な干潟だ。

複数の川の上流から濁った雨水が流れ込んだのか、海の色はミルク紅茶色。これも東京湾の湾奥の宿命か、はたして昔も同じだったのだろうか。

走ること50分、船足がスローダウンした。釣り場に到着した。少し風がある。水色は江戸川河口よりは綺麗だが、やや濁っている。私たちの周りには既に3隻の釣り船がいた。

シロギスは小物とはいえ、誰にでも釣れる人気ある釣魚だ。天ぷら、刺身、マリネなどサッパリした食感はまことに春らしい。そして、なんといっても、その魚信がたまらない。鋭角的なアタリと引きは小気味良いという言葉がピッタリ。

しかし、時には「肘叩き」といわれる大型のシロギスが、遠くから一直線にエサに向かい、引ったくって逃げる。この大型魚の魚信は、細身の竿をも引ったくる強烈な引きなので、穂先がガクンと下がると竿尻がポンと跳ねる。このテコの原理で竿尻が釣り人の肘を叩くことから「肘叩き」といわれている。このサイズは釣り人究極の喜びである。

待ちに待った第一投!

■我先に、と焦る一投目

「じゃー、この辺でやってみましょう」と船長。

実は本日の釣り人は、お客が3人、船長1人の合計4人のいわゆる「大名釣り」だ。一説によると「大名釣り」とは、昔、大名が釣り船を出したとき、釣り人は大名一人きりで、家来などの取り巻きが数名、仕掛け作りやエサ付け、魚の取り込みまで家来にやらせ、自分は魚が掛かったらグイグイ引くその感触を楽しむだけ。他、食べること以外は何もしなかったそうです。それが変化して、大きな船に座席の心配することもなく、少人数で釣りができることを「大名釣り」というようになったとか。

たとえ誰にでも釣れるシロギス相手でも、「一番に釣りたい!」のは釣り人の性

私は左側の艫(とも・最後尾)、K氏は右側の同じく艫。もう一人のお客さんは右側のミヨシ(最前列)、船長は人数が少ないのとお土産を釣るため、普段は出さない竿を左側の最前列に出した。船は水深6m前後の浅場にアンカー(錨)を打ち、エンジンを止めた。「どうぞやってください、水深6mです」。

キタ! 小気味の良い魚信だっ

アオイソメを付けて第一投・・・・・・・釣りは精神統一だとか、日常のストレス発散だとかいわれる。しかし私だけではないと思うが、釣り物、釣行日、船宿などが決定された前日は、仕事もおろそか、退社時間の工夫、釣り道具の心配に加え、まともに睡眠がとれずやっとのことで起きることがしばしばある。これが本当の姿なのだと、私は思う。

何も心配なくゆったりと釣ればいいものを、精神統一は忘れ、誰よりも早く1匹目を釣りたい。誰よりもたくさん、大きい魚を釣りたいという気持ちが先行してしまう。エサ付けの指先も震えてしまうのだ。まして、一匹も釣れなかった日にはストレスは倍返しとなる。多くの釣り人は、たぶん経験あるんじゃないかと推測する……。

ドキドキの第二投目、ブルブルッと穂先にアタリ、すかさず合わせるとカンカンと小気味良い魚信が手に伝わる。シロギスに違いない。このカンカンというアタリは、シロギスがハリ掛かりしてハリを外そうと、頭を鋭角的に振った時の感触だ。

シロギスはエサを吸う、ガブッと食べるのではない。だから、エサの先を吸い込んだときに僅かにモソッとした変化がある。これが前アタリで微妙な感触だ。活性の良い時はここで合わせが効くのだが、エサの先っぽだけを吸うような時はハリ掛かりしない。これをすっぽ抜けという。

2投目でファーストヒット! 小粒でも引きは想像以上だ

じゃあ、どうする。アタリがあったら待つ。しかし、待つとエサだけ取られる。どんな魚もそうだが、待ちすぎてからのハリ掛かりは、ハリを飲み込まれる。それを外すのがやっかいだ。下手するとハリスが切れることも。

幸先のいいスタートだと思ったが……

■結局、シロギスの釣果は……

釣りは難しい。経験を積んでもなかなか上手くは行かないのだ。アタリがあったら素直に対応する。素直ってどういうこと。無欲。忘我。無心。益々分からなくなる。自分なりにここぞと思う瞬間に電光石火の合わせをくれるってことかな。

本日はシロギスの活性が上がらず、ポツポツ釣れた程度だった。場所移動も数回行ったが状況は夕方まで変わらなかった。午後2時前後に釣り始めて夕方5時ちょい前までで結果、15~25センチのシロギスを私が25匹、K氏が20匹、他の人も同じぐらいの釣果。K氏は一人密かに小型のシロギスをエサにして、マゴチを狙っていたが今回は不発に終わった。

パールピンクで気品のある色合い。サイズにはちょっと不安だが、うまそうだ!

船長「5時半ごろからアナゴに行きます。目的地の木更津沖が現在南西風が12m以上の強風なので、今季まだやっていないのですが、ここから少し沖の深場で探ることにします。アナゴ釣りの準備をして下さい」

周りはまだ明るいが、後半のアナゴに期待しよう。

(6月21日配信の第4回に続く)