夏本番を迎える前に知っておきたいのが「熱中症」の基礎知識だ。
まずは「WBGT」。これは、湿度、日射や輻射熱、気温の関係によって数値が出る湿球黒球温度(Wet BulbGlobe Temperature)の略称で、熱中症を警戒するための国際的な予防指数。気温のように「℃」で表すが、気温とは異なる数値で、環境省では「暑さ指数」と呼んでいる。
元ウェザーニューズで気象研究家の幣洋明氏が解説する。
「具体的には、指数31℃以上が『危険』、28~31℃が『厳重警戒』、25~28℃が『警戒』、25℃未満が『注意』となっています。
例えば、気温30℃の真夏日でも湿度35%と乾いていればWBGTは24℃で『注意』レベルですが、湿度65%ならば『厳重警戒』、湿度85%だと『危険』レベルに上がります。WBGTが28℃を超えると熱中症で搬送される患者数が急増します。
また、酷暑で有名な埼玉県熊谷市の8月の最高気温の平均値31.9℃(1981~2010年)は、湿度が75%だとWBGTが31℃となり、『危険』に入ります。皮膚温より気温のほうが高いので、特別な場合以外は運動はやめたほうがいい。
日本の夏は通常、太平洋高気圧に覆われて、南西から湿った空気が流れ込む高温多湿な気候ですから、このWBGTの指数には常に注目すべきでしょう」
環境省のホームページでは全国840ヵ所におけるWBGTの予測値、実況値を提供しているので参考にしよう。
お茶ではなく味噌汁を飲もう!
そして対策。暑いからといって水だけを取りすぎると、細胞が膨らみ、むくみが出る。そして血液中のナトリウムイオン濃度が低下する水中毒を起こしやすい。嘔吐(おうと)や痙攣(けいれん)も引き起こし、最悪、死亡する場合もある。
山王病院・奥仲哲弥副院長が、こうアドバイスする。
「水分補給は塩分や糖分、ナトリウムが含まれるスポーツドリンクで行ないましょう。お茶は塩分補給ができず、利尿作用があるので効果がありません。それから、食事のときには暑い夏こそ味噌汁を飲みましょう。よい塩分補給になります」
一方、自分ではなく、熱中症らしき人に遭遇したらどうすればいいのか? 元フランス外人部隊で戦闘メディックを務めた野田力上級伍長が、戦場での経験をもとに言う。
「涼しい日陰に寝かせて、衣服をゆるめます。そして、上体に血液が行くように両脚を高くし、スポーツドリンクなどを飲ませます」
奥仲医師は次のようにアドバイスする。
「タオルなどで額を冷やしても効果はありません。適切な応急処置は、冷たい缶ジュースを両脇の下か、首の両横側に当てることです!」
湿度の高い梅雨の晴れ間などに気温が上がった場合も要注意。今からしっかり対策しておこう。