5対5のフットサルコートで行ない、もちろんゴールキーパーもつける「バブルサッカー」。チームの区別はバブルの横線の有り無しでするが、視界が悪くほとんど敵味方がわからない 5対5のフットサルコートで行ない、もちろんゴールキーパーもつける「バブルサッカー」。チームの区別はバブルの横線の有り無しでするが、視界が悪くほとんど敵味方がわからない

体に巨大な風船をつけ、サッカーをするという奇妙なスポーツ「バブルサッカー」がひそかに人気だという。ルールは? どんな人が参加しているの? 日本がW杯で盛り上がるなか、行なわれた全国大会をリポート!

■おバカ(?)スポーツ「バブルサッカー」とは?

W杯で大盛り上がりだった日本列島! だが、そんな白熱ムードとはまったく逆のおバカなサッカーに興じる者が増えているという情報が!

その競技の正体は……ノルウェーのバラエティ番組で誕生した「バブルサッカー」。基本ルールは、フットサルと同じ。5対5で行なう小規模なサッカーのイメージだが、何よりその特徴は選手全員が上半身に特殊ビニールで作られた巨大風船を装着すること。これにより、プレーヤーは全力でタックル(通称“バブルアタック”)し合うことができ、激しく、かつ安全にブッ飛ぶ体験を楽しめるというのだ。

 両者、ガチンコのバブルアタック! やっている本人たちは本気でも外から見るとシュール 両者、ガチンコのバブルアタック! やっている本人たちは本気でも外から見るとシュール

女子もバンバン相手にアタック!

日本には今年2月に初上陸し、一気に人気が拡大したとのこと。バブルサッカーを開催しているラブスポ東京の広報担当者に話を聞いてみると、

「YouTubeの動画を見て興味を持ったという方が多く、予約はすでに9月までほぼ一杯です。東京だけでなく関西でも注目され始めており、日本初の全国大会も開催されますよ」

ということで、急遽(きゅうきょ)その全国大会を取材しに行くことに!

開催地は東京・味の素スタジアム……の横にあるフットサルコート。日本がW杯ムード一色のなか、何を考えてる男どもが集まってくるのかと眺めていたが、驚いたのは女性参加者の多さ!

しかも若くてかわいいコがなぜか多い。男女混成チームで参加しているという美女(22歳)に話を聞くと、

「最初はYouTubeを見て笑った勢いで登録しただけなんですけど、予選突破しちゃいました。とりあえず走ってぶつかっとけばいいのでサッカー未経験でも男子に交じることができて楽しいんです!」

 右側は女性なのだが、試合が始まれば関係なし! ふたりがかりでボールを奪われ吹っ飛ばされる。しかし、まったく痛くないので、そこは安心 右側は女性なのだが、試合が始まれば関係なし! ふたりがかりでボールを奪われ吹っ飛ばされる。しかし、まったく痛くないので、そこは安心

どうやらはしゃぐのが大好きなリア充女子が集まっているもよう……。ちなみに主催者によると、普段行なわれている大会も参加者の3割程度は女性とのこと。個人や2、3人で参加した者同士が即席チームとなり試合に参加することもできるとのことなので、出会いの可能性もあるかも?

実際に入ってみると……

……しかし、今日は出会いなど関係ない、全国44チームのトップを決める一大イベント。選手たちの表情はこの頂上決戦に向けて真剣そのもの。キャリーケースを引きずりながらやって来た関西代表チームの男性(26歳)は、

「ひとり3万円も交通費かかってるんで、絶対、優勝賞金獲得して、元を取りますよ!」

と鼻息が荒い。優勝賞金は7万円なので、5人の交通費を考えると優勝しても赤字だということは黙っておいた。

■ゆるいムードのなか、激しく吹き飛ぶ男女!

観戦前にその魅力を知っておくため、本誌記者もバブルを着用してみることに。

「重いです! 前がほぼ見えないっす!」(記者)

――走れる?

「えっ? 聞こえないっす!! 」(記者)

重さ約11kg、直径約1.5mとバブルはかなりでかくて重い! バブルの上側は一応あいているのだが、外からの音はかなり聞き取りづらく、息苦しいのだ。でも、せっかくなので、そのまま出場者と共に練習に参加することに!

 装着はバブルの真ん中に入り込み、リュックサックのように背負う。さらに前側に取っ手がついていて、試合中もずっとこの取っ手を握りながら走る 装着はバブルの真ん中に入り込み、リュックサックのように背負う。さらに前側に取っ手がついていて、試合中もずっとこの取っ手を握りながら走る

サッカー技術はもはや関係なし!

まず行なわれたのは「バブルロワイヤル」。センターサークルを土俵として数名の選手たちがただただぶつかり合って自分以外をサークル外に出すというもの。

「驚かせてきますよ。僕、格闘技経験あるんで」(記者)

果敢に土俵に飛び込んだ本誌記者だが、予想外の方向から巨体男性のバブルアタックをくらい、マンガのように場外へ吹っ飛ぶ。どうやらぶつかり合いは体格がものをいいそう。

「痛くないけど、めっちゃ暑いっす!」(記者)

次はボールを使った練習もしてみることに。パスを出してみると……ゴロなら足でトラップできるが、浮いた球はバブルに当たってトラップ不可能。さらにシュート練習では本誌記者がシュート体勢になり片足を上げた瞬間、横からタックルを受け激しく転倒。

「これ、サッカーの技術関係ないですわ」(記者)

バブルサッカーの難しさを体感したところで、日本初の全国優勝をかけた大会が始まった! 会場に響き始めた音楽は、ゆずの『夏色』。かなりポップなムードに包まれる……が、しかし選手たちは、本田バリの気迫溢れる表情だ!

キックオフはプレーヤーが一列に自陣のゴールラインに。ここが普通のサッカーとは違うところ。

 キックオフは自陣のゴールラインからスタート。ちなみに試合時間は前後半5分ハーフだが、息苦しいためこの短時間でもしんどい キックオフは自陣のゴールラインからスタート。ちなみに試合時間は前後半5分ハーフだが、息苦しいためこの短時間でもしんどい

ホイッスルが鳴った瞬間、両サイドからボールめがけて全力ダッシュ! センターライン付近で人間がバインバインと吹き飛んでいく。

「シュールすぎる……」(記者)

その後も、誰かがボールを拾ったところでパスは一切つながらず、バブルを身にまとった人間がひたすら転がり続けているだけというなんとも異様な光景が。

そのうち偶然転がってきたボールを蹴ってゴールネットを揺らすと、バブルをぶつけ合って大喜び。これが全国レベル……なのか?

バブルサッカーの魅力とは?

試合終了後、息の上がった勝利チームの選手にインタビュー。

――バブルサッカーの魅力とは?

「みんなで爆笑しながら楽しめるところですね。いや……でも試合中はガチになっちゃうか。特に予想外の方向から倒されたときは頭に血が上って『ぶっ飛ばしてやろうか』と。ただ、誰に倒されたかもわからないんですけど」

会社の仲間で参加しているということなので職業を聞いてみると。なんと! 六本木ヒルズにオフィスを構える某外資系金融に勤務というではないか!! 日本トップの頭脳の持ち主たちがこんな(?)スポーツを!

――たまに、バカバカしくならないですか?

「最初は息抜きのつもりだったけど……やり始めるとみんな真剣に取り組むタイプだからハマって、毎月やってます。あと、大きな声では言えないんですけど、普段威張ってる先輩を吹っ飛ばすのがかなり快感なんですよ(笑)」

どうやらストレス発散の魅力もあるようだ。

――ケガはしない?

「見た目より安全なのでケガをしたこともないですし。周りでした人もいません。いや……でも朝起きたらいつも全身痛いな」

準備運動は念入りに! ちなみに、体験した本誌記者は翌日激しく首が筋肉痛になったそうだ。

(取材・文/黄 孟志)