梅雨時や季節の変わり目など、治ったはずの古傷がズキズキ痛むという人をよく聞く。後頭部を11針縫ったことのある“古傷持ち”の週プレ記者も悩んでいるひとりだ。そこで、古傷をいくつも抱えながら、今も第一線で活躍しているプロレスラーの武藤敬司氏にアドバイスを請(こ)うてみた!
*** ――どのくらい古傷をおもちなんですか?
武藤 ほぼ全身古傷だらけだな。一番痛いのは右ひざだよ。もう4回手術したよ。右ひざをかばってたら左ひざも痛めて、こっちも手術したな。受け身の取りすぎで右ひじが曲がらなくなったし、頸椎(けいつい)のヘルニアになったりもしてるよ。
――右ひざの痛みはいつ頃から?
武藤 右ひざの傷とは26、27年の付き合いだな。女房よりも長いよ(笑)。24歳のときに日本で半月板の3分の2を摘出する手術をしたんだ。ところが、その手術の1、2週間後にプエルトリコで試合をやっちゃってさ。当時はスポーツドクターもいなくて、完治しないまま試合をして傷が悪化したんだ。右ひざは日々悪くなってるよ。
――武藤さんも雨の日は古傷が痛みますか?
武藤 いっつも痛てえよ! 雨でも晴れでも。試合のたびに尋常じゃないダメージを受けてるからな。
――直接衝撃を受けてますもんね。日常生活はどうですか?
武藤 とりあえずひざ中心に生活を考えてるね。ひざのことを考えたら、すべてのスタイルが洋式になるんだよ。畳じゃダメ。テーブルにソファじゃないと。
――徹底されてるんですね。何か痛みのケアはされてますか?
武藤 試合の後は酒で忘れようとしてるな。本当は絶対やっちゃダメなんだけど。ただ、起きたときは酒が抜けて普通に痛てえよ。
全力で筋トレ、痛みもどこかに飛んで、ムーンサルトプレス炸裂!
――お酒ですか(笑)。
武藤 まあでも、マッサージは一応やるかな。風呂やサウナは好きだからゆっくり入ってるよ。
――古傷の痛みにおびえる僕みたいな人にアドバイスをいただけますか?
武藤 多少痛みを持っていたとしても、有酸素運動をすれば、血流も流れて痛みも飛ぶような気がするんだけどなぁ。そもそも、四十肩とか五十肩とかで「古傷が痛い」とか言う人もいるけど、それってただの運動不足じゃん! 日常で肩を上げないからだよ。もっと動けよ!って言いたいね。
――僕も古傷を痛めるのが怖くて運動を控えがちでした……。
武藤 実際、筋トレをした後に、右ひざの調子が良くなってるときがあるんだよ。理由はわからないけど。だから気持ちの部分もあると思うんだよ。俺の右ひざなんてどう考えたって悪いのに、痛くないと思うときがあるからね。
――僕の古傷なんて、もはや古傷と呼べない気がしてきました。今後はどのように古傷と付き合うんですか?
武藤 人工関節にしようか、去年から慎重に考えているんだよ。人工関節にすれば、完璧に痛みが消えた状態で試合ができるらしいんだ。ただ、人工関節を支える俺の骨が、衝撃に耐えられずに折れる可能性があるから。
――それは怖いですね。
武藤 でも、まだもう少し頑張ってみようって、試合をするたびに思うんだ。だから痛くても痛みなんて気にしないで、全力で筋トレして全力で闘うだけだよ。やらなきゃいいのに、今でも試合になるとムーンサルトプレスやっちゃうんだよなぁ。
――次元が違いすぎますよ、武藤さん! 自分がいかに小さなことで悩んでいたかわかりました……。
*これは天才レスラー武藤敬司だからなせる業(わざ)。一般の古傷もちの皆さまはまねしないでください。
(撮影/下城英悟)
■週刊プレイボーイ30号「なぜ梅雨に古傷が痛むのか!?」より