この夏、ご当地食材を使ったユニークなアイスクリームに注目が集まっているが、宮城県石巻市にユニークアイスに力を入れている老舗の和菓子店があるという。その名は風月堂。
販売するユニークアイスの数は140種以上というから驚きだ! なぜユニークアイスを作りだしたの? どんな人が買っていくの? 社長の佐藤恵昭(よしあき)さんを直撃した。
─そもそも、なぜユニークアイスを作ろうと?
「昭和50年代後半にコメ余りで、コメを使った菓子作りを模索していたのがきっかけです。そのとき、アイスクリームなんかどうだろうと思いついたんですね。コメをバターやミルクで炊いて、ソフトな食感を残したままアイスにする製法を何度も試行しました。
で、完成したのがユニークアイス第1号の『ササニシキアイス』です。冷たいアイスの中でも、コメが固くならず、ご飯のやわらかさをちゃんと保つ技術を編み出すまでが本当に大変でした。でも苦労してできた分、今ではお店の看板メニューとなっています」
─それがきっかけで、いろんなユニークアイスを?
「ササニシキでも作れたんだから、ほかの食材でも作れるだろうと思いました。でも、これがなかなか大変で。食材の食感、香りを残しつつ、アイスを作るのは本当に難しい。ただ凍らせるだけではだめですから。ひとつ作るにはかなりの時間を要します。でも、それが楽しいのかもしれません(笑)」
─いったいどんな人が買いに来るんですか?
「地元の人はもちろん、全国の自称“アイスマニア”の人もたくさん来ますよ。通販もやっていますので、こちらの注文も多いです」
─思い入れのあるアイスは?
「今年の夏、3年ぶりに『ほやアイス』が復活します。震災の影響で石巻産のホヤが手に入らなかったので作ることができませんでしたが、やっと水揚げが始まったので、要望に応えて製造を再開します。ホヤが苦手という人も食べやすいように、臭みを取り除く独自の調理法も再考しました」
─最後に、佐藤社長の夢は?
「現在の2倍以上、300種類近いユニークアイスを製品化することで全国のまちおこしをサポートしていきたいです。将来的には風月堂に作れないアイスはないと言われるようになりたいですね」
見た目もユニークなアイスの数々
●口に充満する磯の香り 「ほやアイス」 ミルクアイスに小さなホヤがたっぷり入っている。強い磯の香りが口いっぱいに広がる珍味。イヤなクセはまったくない。1個350円
●贅沢すぎる一品 「フカヒレラーメンアイス」 アイスに細切りのぷにぷにしたフカヒレと中華麺をイン。ナルトとシナチクも実物を凍らせたもの。醤油の風味が漂う。1個360円
●冷たいにんにく&唐辛子味 「エミちゃんのキムチアイス」 これはストレートに凍ったキムチを食べている感覚。においも味もまさにキムチ! キムチが苦手な人にはつらいかも。1個350円
仙台といえば、やっぱりコレ!
●ストレートなソース味! 「茶色い焼きそばアイス」 ミルクアイスの上にたっぷりのったソース。このソース味が全面にアピールしてくる。中には実際の焼きそばの麺が入っている。1個360円
●仙台の名物といえばコレ 「牛たんアイス」 ふたを開けると牛タンの香りがふんわりと。細かく刻まれた牛タンの食感と味が驚くほど主張してくる。1個360円
●甘辛のハーモニー 「明太子アイス」 ミルクアイスの上にタップリとのせられた明太子ソース。合わないと思いきや意外にマッチ。明太子スパのソースのようなイメージ。1個350円
■風月堂 宮城県石巻市錦町5-14 電話/0225-96-4713 FAX/0225-96-4717 営業時間/8:30~18:00 定休日/年中無休
(取材・文/林 将勝 釣本知子 撮影/佐賀章広)