ここ数年、ダイオウイカやダイオウグソクムシといった海中生物のブームがたびたび巻き起こっているが、次なるブームの兆しが見える生物がいる。
そう、サメだ! 海の覇者、サメだ!!
「いまさらサメ?」と思うなかれ!
きゃりーぱみゅぱみゅさんがサメグッズを数多く収集しファッションアイテムにしているほか、ココリコの田中直樹さんや人気美人声優の戸松遥さんらがサメ好きを公言するなど、熱狂的マニアが芸能界で増えてきているのだ!
また、テレビ東京が毎週月~木曜日に放映している『午後のロードショー』は先月、サメ映画を特集し、『フライング・ジョーズ』『ジョーズ3』といったトンデモ映画が毎週観られたと話題だった。
もちろん水族館でもサメは集客にひと役買っている。
茨城県の「アクアワールド茨城県大洗水族館」は日本最大数を誇る46種ものサメを飼育し、サメマニアを唸(うな)らせているが、神奈川県にある「京急油壺マリンパーク」では昨年4月から「SHARK博覧会」を開催。人気が高いため、現在も延長開催しているほど!
京急油壺マリンパークでサメの水槽などを担当している天田未貴さんは、次のように語る。
「今、当館では約20種のサメを飼っていますが、ほかにもメガマウスの剥製標本や、大昔に存在していた18m級のメガロドンの化石やレプリカ模型(約8m)なども大迫力で見応え抜群ですね。水槽には危険なサメといわれているオオメジロザメもいますが、うちのコはとても臆病でかわいい性格。そういう個体ごとに違う意外性もサメの魅力です。
昨年はサメ博のおかげで入場者数が一昨年より1割ほど増えましたし、サメ人気は来ていると思いますよ」
謎が多いサメの荒々しすぎるセックス
続いて、東海大学大学院の海洋学研究科にて水産学専攻修士課程を修了し、現在はシャークジャーナリストとしてサメの魅力を布教している沼口麻子さんにもサメブームの実態を伺った。
「私は約2年前から毎月、全国各地でサメファンを集めたイベントや講演会を催していますが、参加人数の定員をオーバーすることが多く、特に去年ぐらいからサメファンが増えてきているという実感がありますね。
サメは地球上に500種類以上存在し、成体で20㎝程度にしかならないツラナガコビトザメという種もいれば、12m以上にまで成長するジンベエザメもいて、その生態も特徴もさまざま。とても奥が深い生き物なので、ハマる人が多いんだと思います」
サメの体の構造は約1億5000万年前から2億年前にほぼ完成しており、当時から独自の進化を遂げていたといわれている。
「知覚メカニズムでいえば、獲物の体液のにおいを数百m先から感じることができたり、十数m先の獲物が発する弱い電気を感じ取れる種もいるんです。また、骨はすべて軟骨でできていたり、海の中で狩りがしやすいように軽量化したり、硬骨魚にはない特徴がいろいろあります。まだまだ謎が多いんですけどね」(沼口氏)
さらに、交尾や出産といった生殖活動は特に驚かされることばかり!
「サメは雄が雌に噛(か)みつきながらセックスするんです。理由は、雌の総排泄孔(人間でいう女性器)に交接器(人間でいうペニス)を挿入する際、雄が体を固定させるためという説と性的興奮を得るためという説があります」(沼口氏)
雄ザメは漏れなく全員DV男? 期待以上の荒々しいセックス事情だ!
そもそも哺乳類ではなく魚類であるサメが、体内受精させて子孫をつくるというのも驚きである。
「サメは卵を産む卵生タイプの種が4割ぐらい、赤ちゃんを産む胎生タイプの種が6割ぐらい。胎生タイプでもさらに細分化されていまして、子宮内の赤ちゃんザメに無精卵を食べさせて成長させるホホジロザメやオナガザメの仲間のような種もいれば、胎盤とヘソの緒を通じて母から栄養をもらうシュモクザメのような種もいて、本当にいろいろです」(沼口氏)
サメという存在自体がメジャーゆえに、なんとなく知ってるつもりになってしまっていたが、実はわれわれは彼らサメという種のことをろくに知らなかったのかも!
(取材・文/昌谷大介、東 賢志[A4studio] 取材協力/京急油壺マリンパーク水族館)
■週刊プレイボーイ33号「ブーム先取り!? ダイオウイカの次は、もしかしてだけど海の覇者サメがくるかも!?」より