原因不明の“痛い難病”が20代から40代男性に増加中。ほかにも若いうちから痛みを伴う病気は意外に多く、なかには命に関わるものもあるので放置できない。なぜ痛いのか、どう対処すべきか――?

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日本人の4人にひとりが、年に10回以上襲われているという頭痛。大きく分けると一次性頭痛(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛)と二次性頭痛があり、二次性頭痛にはくも膜下出血という命に関わる病気で起こるものもある。

【目玉をえぐられるような痛み! 群発頭痛(ぐんぱつずつう)】

●Aさんのケース 昨年、家電メーカーに就職したAさんは、入社1ヵ月を過ぎた頃から夜中に「目玉をえぐりとられるような痛み」で目覚めるようになった。病院には行かず、毎晩泣き叫びながら七転八倒するうち、2週間後に突然、痛みが消滅。

ところが、今年の春に再び同じ激痛が起き、今度は2週間たっても治らず自殺を考えるほど憔悴(しょうすい)。心配した親に連れられて、頭痛外来を訪れた。

●どんな病気か? 「群発頭痛」という名前が示すとおり、毎日1、2時間の頭痛が数週間から数ヵ月続き、しかも定期的に繰り返される。痛みは決まった時間に起きる。発症数は少ないが、患者の大半は20代から40代の男性なのが特徴。一次性頭痛のなかで痛みは断トツ。じっとしていられず壁に頭をぶつけるなど、のた打ち回って暴れる人も少なくない。

●なぜ痛むのか? 群発頭痛の痛みには諸説ある。目の後ろを通っている動脈が拡張して炎症を引き起こし、強烈な痛みを発する、というのもそのひとつだ。

●治療法や予防法は? 病院では、発作期の痛みには唯一保険適用のあるスマトリプタン皮下注射が推奨される。片頭痛薬のトリプタン製剤や酸素吸入でも効果が得られることもある。

酒やたばこを控えて十分睡眠をとれば、頭痛の頻度や程度は徐々に軽くなるので、気持ちを落ち着けて治していこう。予防薬にはカルシウム拮抗剤などがある。

ギリギリと締めつけられる! 緊張型頭痛

【ギリギリと締めつけられる! 緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)】

●Bさんのケース プログラマーのBさんは契約社員としてゲームメーカーで働いているが、2年前から頭全体を大きな手でギリギリと締めつけられるような頭痛に苦しんでいる。肩や首の凝りもひどい。

「連日の激務で病院にも行けず、市販の頭痛薬を服用してしのいでいます。ただ、最近はほとんど薬が効かなくなってきて……」

あまりの痛さに叫びながら頭をかきむしることもあり、仕事の効率も悪化しているという。

●どんな病気か? Bさんの場合は一次性頭痛のうち「緊張型頭痛」の典型。頭痛で最も多いタイプで、20歳を過ぎると増えてくる。

後頭部や頭の両側に加え、首や肩も締めつけられるように長時間痛むのが特徴だ。

●なぜ痛むのか? 頭部の筋肉が常に緊張して収縮するために痛みが生じる。

長時間のうつむき姿勢やストレス、不安が緊張型頭痛の引き金になるといわれているが、いちばん多い頭痛の割に、詳しい発生メカニズムはまだ解明されていない。

●治療法や予防法は? 軽い緊張型頭痛であれば市販の頭痛薬を服用することで痛みが軽減するが、薬の使用が長く続くと、「薬物乱用頭痛」と呼ばれる病気に移行する恐れが出てくる。

何年も頭痛に苦しんでいる人は、頭痛外来や痛みをとることを目的にした診療科・ペインクリニックを受診しよう。治療法には局所麻酔薬を使うトリガーポイントブロック注射などもある。

予防法は、ストレスをためないこと、気を張りつめる作業をできるだけ避けて、肩を温めて血流をよくすることくらいしかない。

頭の片側がズキズキ痛い! 片頭痛

【頭の片側がズキズキ痛い! 片頭痛(へんづつう)】

●Cさんのケース 植木職人のCさんは、以前からしばしば頭痛に襲われていた。痛むのは主に朝で、いつも片側だけズキズキする。市販薬を飲んでもほとんど効かない。

ある日、ズキズキ痛を我慢して仕事に出かけたら、一瞬、目の前をパッと閃光が走り、激しい痛みと吐き気を催した。得意先の庭にいたため、なんとか吐き気はこらえたものの、頭痛は2時間続き作業できない。痛みが治まると、今度は強烈な眠気がやってきた。

「オレの頭に何か棲(す)んでいる!?」

恐怖に駆られたCさんが慌てて病院へ駆け込むと、「片頭痛」と診断された。

●どんな病気か? 多くは頭の片側が痛む血管性の頭痛で、市販の頭痛薬では治らない場合もある。30代から40代の女性に多いが、10代男子でも成人男性でもかかる。

頭痛の発作は4時間から72時間程度続いて自然に回復する。

頭痛が始まる前にまぶしいギザギザの光やオーロラのような模様が見えたり、吐き気を伴うこともある。

●なぜ痛むのか? 以前は血管が拡張するために痛む「血管の疾患」と考えられていた。

だが、現在は大脳の深い部分にある脳幹の付近に片頭痛の発生器がある「中枢神経疾患」と考えられている。

●治療法や予防法は? 市販の頭痛薬は炎症を抑えるタイプのため、中度以上の片頭痛には効かないこともある。

医療機関では、ゾーミッグやレルパックス、アマージなどのトリプタン製剤が処方される。

副作用はあまりないが、服用回数が多くなるとほかの薬との併用が必要になるので、病院で医師に症状を詳しく説明して相談しよう。

(監修/奥仲哲弥先生[山王病院副院長] 取材協力/臼田美穂先生[麻酔科医] 取材・文/浅野恵子 世良光弘)

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