「この料理、気になるけど、苦手な食材が入っているからオーダーしようか悩むな」「昨日飲みすぎたから、このメニューをサッパリした味つけで食べたい」「ダイエット中だし、同じ料理をカロリー控えめな食材に替えられないか」。
外食の際、誰でも一度はこんなふうに思ったことがあるのではないだろうか?
そんな客のこだわりやわがままに応えるべく、カスタマイズしながら自分好みの味に作り上げるメニュー「カスタムめし」を出す飲食店がここ数年、都内を中心に増えている。
カスタムの内容も、トッピングチョイスから、ベースとなる食材やスープやソースなどの味つけに至るまで、実にさまざまだ。
■カスタムめしは時代が生んだ外食スタイル
外食産業に詳しい、グルメ評論家のはんつ遠藤氏が語る。
「これまでも『サブウェイ』がすべての具材をお客が選ぶ方式でサンドイッチを出したり、カレーハウス『CoCo壱番屋』が豊富なトッピングを提供するなどがありましたが、現在はさらに細分化し、深化しています。
例えば、六本木の生パスタ専門店『Gaston&Gaspar』。ここでは、パスタやソースの種類から、すべての具材までを客自身が選び、イチから自分好みに作り上げることができます」
こうしたカスタマイズが成立するようになった背景について、はんつ氏が続ける。
「理由のひとつは、自分だけのメニューを食べたいという人が圧倒的に増えてきたこと。今はインターネットやSNSなどで、自分の食べたものをアップしていく人がたくさんいます。彼らは注目を集めるために、他人とは違うメニューを食べたいという欲求が強いんですね。
背景に日本人の味覚の多様化が
一方で、お店側も普通の営業をやっていたのでは注目されにくくなってきたので、何か新しい試みをして一般の人たちにどんどんアピールしたいと考えている。
そこでカスタマイズサービスを提供することで、お客さんのSNSやネットに載せてもらって、一般の人の目に触れる機会を増やしたい。そんなお店側の思惑があるんですよ」
また、外食産業専門のニュースサイト『Food Watch Japan』の齋藤訓之(さとし)編集長は、こうした現象の裏側に、日本人の味覚の多様化を挙げる。
「いまはさまざまな食べ物があふれている時代で、個人にとってのおいしさも多様化してきました。そのため、メディアなどで『この店はおいしい』といわれても、頭からは信用しなくなってきたように思います。そういう人は、自分好みの味にカスタムできるお店があれば行きたいと思うのは当然ですよね。
また、『ちょい足しクッキング』ってコーナーがテレビの情報番組の中にあって大人気になりましたよね。ラーメンに○○を足したらおいしくなるって、アレ。これのおかげで、カスタムして食べる面白さが浸透し、その流れが外食産業にまで広がっているのではないでしょうか」
「Gaston&Gaspar」で自分だけのメニューにトライ!
それでは、実際に「Gaston&Gaspar」六本木店へ行ってみよう。パスタとソースを選び、トッピングの中から魚介・肉から1種類、野菜系から2種類を自由に組み合わせられる「クリエーション」(1280円)と呼ばれるカスタムめしが食べられる店だ。しかもパスタは6種類、スープは8種類、トッピングは39種類。
それらの選択肢の多さに一瞬ひるむものの、オーダーシートを記入。平たく波状の形をした「レジネッテ」のパスタを選び、ソースはトマトクリーム。そしてタコ、ブロッコリー、温泉卵のトッピングをチョイス。さらに追加で柵ウニ(600円)をオーダー。組み合わせを決めていく行為はなんだかゲームをしているみたいだ。
約10分、ワクワクした気持ちでいると、待望のパスタが到着。おー、想像以上のうまさだ! ゼロからオーダーしただけあってなんだか特別なものを食べている実感がわく。
外食でも自分好みの味を追及したいというワガママな人にはピッタリ! 後編では、ラーメン、すし、海鮮丼など個性的なカスタムめしを提供する人気店をご紹介します!
●Gaston&Gaspar六本木店 ポルトガルで見つけたイタリア料理のオーダースタイルを日本へ持ち込み人気に。パスタ料理を作るパスタクリエーション(1280円)のほかサラダクリエーションも(1280円)*価格は税抜きです
東京都港区六本木7-4-4 アートシェル1F TEL 03-6447-1685
(取材・文/大野智己 撮影/下城英悟 取材協力/釣本知子)