「ちん○んはそもそも腸だった!」「脳内物質は腸でつくられる」など、目からウロコの藤田紘一郎先生による白熱講座!

「やりたい!」「好き!」の感情は、腸でつくられる物質によるものだった! 食べたものの消化吸収だけじゃない。脳内物質にも男性ホルモンにも免疫力にも、腸は非常に大きな役割を果たしているのだ

■モテたければ腸を鍛えなさい

モテたい。「彼女いない歴=社会人歴」という本誌記者(30歳)は昨年、マジでそう思った。勤勉で、寝不足でも深夜の皇居ランニングを欠かさず、カロリー摂取を控え、半年で190cm・140kgの肉体を90㎏にまで絞ることに成功した。

謙虚だが、自信がない。それでも当時は確信をもった。「イケそうな気がする」ーー。

しかしそれから1年。いまだ春は訪れず、皇居ランニングは続けている。デブの頃は一日中、菓子パンを食っていたが、今は夕食にカップ麺や牛丼をひとつ食べるだけだ。

――自分は何か間違えているのか?

そこで、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生にお話を聞きに行ったのであった。すると、藤田先生はこう言った。

「モテたければ腸を鍛えなさい」

え!? 「筋肉を鍛えろ」とか「体力をつけろ」ならわかる。「絶倫になれ」とか「ちん○んを鍛えろ」ってのもわかる。だが、なぜに「腸」?

ちん○んはそもそも腸だった!

【1】ちん○んはそもそも腸だった!

藤田先生によると、なんと性器はそもそも腸だったという。

「動物は、最初は腸だけで生きていたんです。今でもミミズのように、カラダの大部分が腸という生き物もいますよね。進化の過程で、腸から分化する形で生殖器が誕生したのです。

人間でも、母親のおなかの中の胎児を調べると、5週目ではまだ生殖器はありません。8週目になって腸にくびれができ、『生殖結節』になる。それが男性器、女性器へとそれぞれ発達していくのです」

腸と性器の位置が近いのにはそんな理由が! でも、「やりたい」と思うのはやっぱり脳なんじゃ?

「ミミズには脳がありませんが、それでもセックスします。ミミズは両性具有で、ひとつの個体に男性器も女性器も備えていて、相手を見つけると自分の男性器を相手の女性器に、自分の女性器を相手の男性器に結合させます。シックスナインでありセックスでもあるという、人間よりもすごい性行為です。ここからも、腸こそ旺盛な性欲の源であることがわかります」

ミミズは雌雄同体で「シックスナインかつセックス」という交尾を行なう

【2】脳内物質は腸でつくられる!

だけど、今の話はあくまでミミズ。脳がないから腸が代わりをしているだけでは?

「まず、セックスしたいなあと思うのは、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の働きによります」

脳の中にある、欲望や気持ちよさ、やる気を伝える物質ですね。

「その認識は、後半は○だけど前半は△です。セロトニンやドーパミンは脳の中だけにあるのではない。というか、セロトニンでいえば、脳にあるのは体内の総量のわずか2%です」

え?

「8%が血液の中、そして90%は腸の中にあるのです」

ええ?

性欲の源はミミズも人間も同じく腸

「これらの神経伝達物質は腸でつくられているんです。トリプトファンというアミノ酸を腸内で分解して合成し、セロトニンになります。同様に、フェニルアラニンをもとに合成されるのがドーパミンです。

今から5億年前、動物に脳が誕生するのですが、それ以前は、これらの作業はすべて腸の中で行なわれていました。つまり、腸に性欲のすべてがあった。

そして脳の誕生後も、腸が神経伝達物質をつくっていることに変わりはありません。そのほんの一部を、ドーパミンやセロトニンになる直前の前駆体という形で、脳に送っているのです」

てことは、性欲の源はミミズも人間も同じく腸であると。

「ドーパミンやセロトニンは脳内伝達物質と呼ばれていますが、だから本来は腸内伝達物質なんです。ミミズが脳の代わりに腸で快感を感じているのではなく、人間が腸の代わりに脳で性欲や快感を感じるようになったのです」

ちなみに、セロトニンとドーパミンは、何が違うんですか?

「セロトニンもドーパミンも、性欲と深く関わる神経伝達物質ですが、簡単に言うと、セロトニンが『やりたい!』、ドーパミンが『好き!』ですね」

確かに微妙に違う! 「やりたい」と「好き」って。

「ドーパミンは愛情や幸せを記憶します。セックスで『この人が好き。離れたくない』という気持ちが生まれるのはこのためです。また、酒やギャンブルの依存症もドーパミンの働きで起きるんです」

というわけで、明日配信予定の次回は引き続き、「男性ホルモンの正体」、そして「本当の精力とは何か?」についてうかがいます!

●藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)1939年生まれ、旧満州ハルビン出身。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。腸内細菌や免疫の探求を続けるなかで、早くから現代の「清潔すぎる社会」へ警鐘を鳴らしてきた。『笑うカイチュウ』『50歳からは炭水化物をやめなさい』『脳はバカ、腸はかしこい』など著書多数

(写真/Thinkstock)

■週刊プレイボーイ40号「東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎先生のモテる内蔵の作り方」より