腸の役割は、食べたものの消化吸収だけじゃない。性器はそもそも腸から分化し、ドーパミンは腸でつくられるという意外な事実が判明。 さらに、体力と精力は別モノで、性的興奮にも腸の働きが密接に関係していることがわかった。
「彼女いない歴=社会人歴」の本誌記者(30歳)が、東京医科歯科大学名誉教授・藤田紘一郎先生に教えを請う、最終回!
【5】腸内細菌で腸を鍛えよ!
精力を高めるには、脳と性器と腸のバランスが大事であると。でも、それを鍛えるにはどうしたらいいんですか?
「ここまでのお話からもわかるように、鍛えるべき精力の源は、まさに腸なのです」
腸を鍛える?
「多くの人は、腸の役割は消化吸収くらいにしか思っていませんが、そのほかにも腸は、神経伝達物質をつくる、ビタミンをつくる、免疫力をつける、病原菌を追い出すという具合に、とてもたくさんの仕事をしているのです。人の免疫の70%は腸がつくっていますから」
めちゃくちゃ働いてるんですねー。
「こうした腸内細胞の働きに不可欠なのが、腸内細菌です。つまり、腸内細菌がなければ性欲も精力もわいてこない」
【6】でかいうんこは精力の証
でも、自分の腸内細菌が多いか少ないかなんて、どうすればわかるんですか?
「ここで、でかいうんこの話をしましょう」
でかいうんこ!?
日々のでかいうんこは精力の証
「うんこは何でできているかと聞くと、たいていの人は食べ物のカスだと答えます。しかし、うんこの固形成分に占める食べカスの割合は、実は3分の1でしかありません」
マジすか?
「3分の1は腸内細菌の死骸、残りの3分の1が腸粘膜の死骸なのです。先ほどお話ししたように、腸は毎日フル活動しているので、腸内細菌、腸粘膜はすぐに死にます。小腸の粘膜の寿命なんかたった1日です。だから、大腸がんに比べ小腸がんはとても少ないんですよ。がんになる間もなくすぐに死んで排出されるから。
つまり、日々のでかいうんこは、腸がしっかり働いている証(あかし)ということです。これは、セロトニンやドーパミンもガンガンつくられているということですから、精力の証ともいえます。
実際に私は、世界各地を回り、さまざまな民族のうんこを調べてきました。すると中南米、なかでもメキシコ人のうんこが一番でかい。そして、ある調査では、日本人は週1回の性交割合が34%、性生活の満足度はたった15%なのに比べ、メキシコ人は週1回以上の性交割合が71%、満足度は63%なのです」
【7】「草食男子」は医学的にも不健康
で、でかいうんこを出したい! どうすればいいですか?
「腸内細菌のエサとなるのが食物繊維です。メキシコ人は世界で最も多くの食物繊維を摂取しています。1人当たり一日平均93・6g。これは日本人の約3倍です。
あと、腸内細菌をバランスよく増やすために、発酵食品が有効であることがわかっています。味噌には麹菌、漬物やチーズには乳酸菌、ヨーグルトにはビフィズス菌、納豆には納豆菌など、いろんな細菌がいます。日本の伝統食品には発酵食品がいっぱいあるんですね。なのに、若い人はあまりそういうものを食べなくなっていますよね」
草食男子も腸内細菌の減少が関係?
確かに食べないです。
「日本人の腸内細菌は、戦前の3分の1にまで減っているんですよ。近年、恋をしない、セックスに興味がない、『草食男子』という言葉をよく聞きますが、腸内細菌の減少に伴うドーパミンやセロトニンの減少も影響していると私は考えています」
なるほど。
「最近の若者は草食でダメとかいうとオヤジの説教みたいだし、本人がそれでよいといえばそれまでなんですが、腸内細菌が減って腸がきちんと働いてくれないと、神経伝達物質が減ってうつ病が増えるし、免疫力も落ちます。つまり、医学的に見ても不健康といえるわけです。
やはり、女性は本能的に健康な男性に惹かれます。腸の衰退は生物としての衰退なのですから」
今日から食物繊維と発酵食品をたっぷり摂取して、モテる内臓を育てよう!
●藤田紘一郎(ふじた・こういちろう) 1939年生まれ、旧満州ハルビン出身。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。腸内細菌や免疫の探求を続けるなかで、早くから現代の「清潔すぎる社会」へ警鐘を鳴らしてきた。『笑うカイチュウ』『50歳からは炭水化物をやめなさい』『脳はバカ、腸はかしこい』など著書多数
■藤田先生の講義をもっと受けたい人は…… 『健康はシモのほうからやってくる』 藤田紘一郎 1200円+税 三五館
(写真/Thinkstock)