NHKの朝ドラ『マッサン』が話題だが、注目度ではカレー界のニューウエーブ「マッサマン」も負けていない! 今、食品メーカー各社が相次いで家庭用の新商品を投入している新カレーとは、いったいどんなものなのか!?
■米CNNが世界一に選んだ!
日本のカレー界で、タイ料理の「マッサマンカレー」(以下、マッサマン)がブレイク寸前だ。
このところ、東京をはじめとする大都市圏の本格タイレストランで、マッサマンをメニューに加える店が続々と出現しているばかりか、デニーズやジョナサンといった大手ファミレスでも、今年に入ってから期間限定フェアの一品として提供、さらにはTBS系の料理番組『新チューボーですよ!』で取り上げられるなど、メディアへの登場機会も急増しているのだ。
きっかけとなったのは2011年、米CNNの旅行サイト『CNN Go』が「世界のおいしい食べ物ベスト50」の第1位に、マッサマンを選んだことだった(ちなみに同ランクの2位以降は、ナポリ・ピッツア、メキシコ産チョコレート、すし、北京ダックと続く……)。その影響が、じわじわと日本にも及んできているのである。
世界一の美味と評されたマッサマンとは、いったいどんなカレーなのか? 人気ブログ『◆毎日カレー◆と★タイ料理★』の管理人で、タイ専門月刊誌『ワイワイタイランド』にもコラムを連載中の食品ライター、エスニカン氏に尋ねてみた。
「『マッサマン』とは、タイ語で『イスラム教の』という意味。その名のとおり、タイ深南部のイスラム教徒が多い地域で食べられていたイスラム色の濃いカレーを起源とする、という説がまずひとつあります。そして、もうひとつ有力な説は、かつてタイの王様が参勤交代のような形でインド亜大陸との間を往復していた頃、お付きの調理人がインド料理的な要素にアレンジを加え、タイ王宮の料理のレパートリーに加えたことから生まれた料理だとするもの。数年前までは、現地でも五つ星ホテルのタイ王宮料理系レストランか、南部料理を出す食堂や屋台ぐらいでしか食べることができなかったのですが、世界一に選ばれて以降、バンコクなどでは多くのレストランがマッサマンを出すようになっています(笑)」
■レトルト系 ●素材を生かしたカレーマッサマン 無印良品/300円(税込み)/2013年8月発売(*2014年7月にリニューアル)
<エスニカン氏の寸評> マッサマン人気の火つけ役的存在。今夏から具材を豚肉から鶏肉に変更するなどリニューアル。味は無難
●タイダンスタイカレーマッサマン ヤマモリ/330円(税別)/2014年8月発売
<エスニカン氏の寸評> タイ現地生産。ヤマモリらしい本物志向と日本人向け仕様のバランスが秀逸
●マッサマンカレー にしきや/594円(税込み)/2014年3月発売
<エスニカン氏の寸評> レトルトカレーには定評がある会社。食べやすく味も良いが、タイの香りがやや弱い感も
マッサマンは日本人の舌にぴったり
そのマッサマン、いったい、どんな食材からできているのか。
老舗タイレストラン「ゲウチャイ」新宿店のタイ人料理長、サワイ・ウムウラン氏に聞いた。
「マッサマンにはほかのタイ料理ではあまり使わないクミン、カルダモン、コリアンダーシード、メース、シナモンといったスパイスを使うので、普通のタイカレーのようにハーブの香りが前に出るのではなく、インドカレー的な味わいもあります。具の肉は鶏もしくは牛が主体ですが、シーフードの場合も。野菜ではジャガイモがよく使われ、カシューナッツやピーナツなどのナッツ類が一緒に煮込まれるのも特徴です」
同店でもやはり、マッサマンの売り上げが近年伸びているのだという。
「当店では24年前のオープン時からマッサマンをメニューに載せていますが、ここへ来て注文されるお客さまがぐっと増えていますね。例の『世界ナンバーワン』の影響もあるのでしょうけど、マッサマンは甘味と程よい酸味とスパイスの香り、そしてコクがあるので、日本人の好みに合った味なのです。また、日本の男性は、極端な辛さやココナツミルクの風味が苦手な方が多いのですが、マッサマンはそれらも控えめ。だから、グリーンやレッドといったタイカレーに比べ、男性人気が高いのも特徴です」(ウムウラン氏)
■レトルト系 ●大人のためのタイカレーマッサマンカレー 北野エース/350円(税込み)/2013年11月発売
<エスニカン氏の寸評> 商品化は比較的早かった。手軽さはあるが、マッサマン本来のうまみに欠けるか
●エスニックごはんの具マッサマンカレー 明治屋/248円(税込み)/2014年9月発売
<エスニカン氏の寸評> 電子レンジで手軽に作れる。タイ産ペーストの香りが心地よい。味も上々だ
■冷凍食品系 ●カップdeレンジタイカレーマッサマン ニッスイ/オープン価格/2014年9月発売
<エスニカン氏の寸評> ココナツライス付きなのがうれしい。意外にも、辛さもしっかり併せ持つ。コスパも優等生
急増する市販のマッサマン
こんな巷(ちまた)の動きを、目ざとい日本の食品メーカーや輸入元が見逃すはずはない。レトルト、缶詰、調理キット、冷凍食品と形態はさまざまながら、昨年あたりから各社が続々とマッサマンを投入し、気がつけば市販品カレーの中でも新潮流になろうとしているのである。
日本のタイレストランはどこも女性客で埋め尽くされているように、女子の間でタイ料理人気は絶大。とくれば、行きつけのタイレストランの2、3軒も持ち、近頃ハヤリのメニューに詳しい男になれたら、モテ度は確実に高まるというものだが、そのためにあちこちでマッサマンを食べ歩いていたのでは、財布がすぐカラになってしまう。
でも、手頃な値段の市販品なら、「マッサマンとはなんぞや」の予習も無理なくできる。ただ、ここまで品数が増えてしまうと、いったいどれが本物に近く、かつ手軽に作れるものなのか、見当もつかない……。
■要調理系 ●フライパンキッチンマッサマンカレーの素 エスビー/180円(税別)/2014年2月発売
<エスニカン氏の寸評> 日本のカレーにベクトルを寄せた工夫は感じられるが、味のベクトルには若干疑問も
●成城石井タイ手作りマッサマンカレーキット 成城石井/490円(税抜)/2014年3月発売
<エスニカン氏の寸評> 珍しいタケノコ入り。味わいはあっさりしている
●手づくりカレーキットマッサマン 無印良品/400円(税込み)/2013年8月発売(*2014年8月にリニューアル)
<エスニカン氏の寸評> タイの味わいが楽しめる入門編。ココナツミルクの香りがいい
エスニカン氏のオススメ4選は!?
■エスニカン氏のオススメ商品は!?
そこで現在出回っている市販品をかき集め、日本で一番マッサマンに詳しいエスニカン氏に、片っ端から評価していただいた! 詳しくは各商品の寸評を見てほしいが、掲載商品の中でエスニカン氏が特にオススメするのは、現地メーカーが作る本格派で、ほかのキット品に比べて調理が簡単な上、紙容器がエコな「ロイタイ マサマンカレースープ」(ロイタイ)、タイ産ペーストの風味が秀逸で、容器も手軽に捨てられる「エスニックごはんの具 マッサマンカレー」(明治屋)、タイでの製造ながら日本人にも食べやすく工夫してあり、安価で入手可能な「じゃがいも・豆のタイカレー マッサマン」(いなば食品)、タイ生産ならではの完成度を誇る「タイダンス タイカレー マッサマン」(ヤマモリ)の4点とのこと。
さあ、今すぐ最寄りのスーパーへと走れ!
■要調理系 ●ロイタイマサマンカレースープ ロイタイ/183円(税込み)/2012年4月発売
<エスニカン氏の寸評> タイのココナツミルク大手メーカーの商品。具なしだが、味は現地仕様
■缶詰系 ●タイカレーマッサマン(ツナ入り) ニッスイ/オープン価格/2014年4月発売
<エスニカン氏の寸評> 缶詰のマッサマンでは先行。コスパよく、ツナとの相性もイイ
●じゃがいも・豆のタイカレーマッサマン いなば食品/300円(税別)/2014年8月発売
<エスニカン氏の寸評> さすがトップブランドの味。マッサマンでは後発だが、その分の工夫も随所に見られる
(撮影/五十嵐和博)