江古田ちゃんの瀧波ユカリが“愛されオヤジ”の“モテメソッド”を伝授!

人気マンガ『臨死!!江古田ちゃん』の著者にして、流行語“マウンティング”の名づけ親として知られる、瀧波ユカリ

彼女が“オヤジ愛”のすべてを46のエッセイとかるたに詰め込んだ『オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。』は“オヤジ予備軍”の週プレ読者にとって、まさに必読の一冊だ。

さあ、コレを読んで、来るべき中年~壮年期のための準備を始めよう!

―この本、アラサー男子が読むと勇気がわくと思うんです。

瀧波 そうなんですか(笑)。

―はい。単純に「オヤジって意外とモテるんだ」っていう驚きもあるし、加齢臭プンプンでもモテる“愛されオヤジ”の条件が身につくように年を重ねれば、僕らも中年ライフを謳歌(おうか)できそうだぞと。

瀧波 あの、なんかちょっとその考え方って危険な気がします。

―危険、ですか?

瀧波 ここ数年、“枯れ専”とか“老け専”っていう言葉が認知されたことで、世の中に“オヤジ好き”を専門にしてる女のコが一定数存在するって考えてる方もいると思うんですね。でも、それって男の人の都合のいい幻想ですよ。

―…………。

瀧波 大前提として、オヤジは若い人より頼りがいがあるし、お金だっていっぱい持ってるじゃないですか。そこがモテるためにはまず大事な要素なので。「オヤジなら誰でもいい!」みたいな女子、そうそういませんからね(笑)。

―なるほど。とはいえ、本の中で瀧波さんは「オヤジはモテる」ってちゃんと書かれてるじゃないですか!?

瀧波 私が書いたオヤジのモテっていうのは、オスとしてギンギンにモテるって意味じゃなくて、ふんわりした「ゆるキャラ」的な存在として愛されるモテなんですね。

―はい。

オスか、ゆるキャラか

瀧波 若い頃ってモテたいあまりに他人の評価を気にして、言動にしろ服装にしろ、中途半端なことをしがちですよね。その点、オヤジたちは「嫌われたらどうしよう」みたいなのがすごい希薄な人種で、電車の中で平気で鼻毛を抜いたりするじゃないですか(笑)。でも、その隙だったり落ち着きだったり諦めっていうのに、女子はくすぐられたりするものなんです。だから、若い人も自分がどっちなのかを選ぶべきだと思うんです。

―オスか、ゆるキャラか。

瀧波 で、私はゆるキャラのほうを推奨していて、そういうふうに愛されるコツを身につければ、棚ボタ的にオスっぽい感じの恋愛もついてくるかもしれないよっていうことを、若い方にはお伝えしておきたいですね。狩猟民族的にガツガツ攻めて成功するのはひと握りなのに、ムリしてがんばって空回りしてる人がいるじゃないですか。

―耳が痛いですね。ちなみに、それはいつジャッジすれば?

瀧波 もう大学ぐらいの時点でジャッジするべきです(笑)。

―とっくにその時期、過ぎちゃってますよ!

瀧波 じゃあ、急ぎましょう。まず鏡を見るところからですね、できれば三面鏡で(笑)。自分がどっちかっていうことは、鏡が教えてくれますから。

―わかりました。でもですね、その“愛されオヤジの条件”っていうのを確認していくと、「ハゲは全然アリ」とか、男的にはアウトだと思ってたことが、女子的にはオッケーなんだっていう、逆の意味での誤解というか、そういうのがあるなって。

瀧波 ハゲの話で言えば、頭皮が見えるくらい髪が薄くても、全然マイナスポイントじゃないっていうか、むしろ、「赤ちゃんに似てる」って意味でプラスだったりするときもあるんで。

―「日本人の新生児の顔は、ガッツ石松か笑福亭鶴瓶のどっちかに似てる」っていう俗説があるとも書かれてましたもんね。

瀧波 そう。オヤジの顔って実は赤ちゃんに近くて、女子って遺伝子レベルでオヤジの顔が好きなんですよ。石破茂さんとかキュンとしますもん。だから、カツラをのっけるとか、髪の毛を逆サイドからムリヤリ持ってきて撫でつけるとか、そっちのほうがむしろ不快感を与える可能性があります。あと、包茎も女のコってあんまり気にしてないですよ。まあでも、これはオヤジと関係ないけど(笑)。

絵に描いた中年に、女の人はヌレる?

―いや、でも大事なことなんで。

瀧波 だって、そもそも日本人男性の7割が包茎だっていうじゃないですか。性行為ができないレベルだったら問題ですけど、逆にガッチリ手術しましたよっていうほうが引きますから(笑)。

―ありのままでいいと。

瀧波 ええ。ありのままの状態が人に迷惑をかけたり不潔な感じを与えたりするものでなければ私はいいと思うんですよね。

―なんかでも、「キレイであればいいってもんじゃない」、眉毛も体臭も皮脂も逆に野性的な魅力だってのはどうなんですかね。ほら、メンズコスメもそうですけど、割とそういうのを風潮的に消したがるし、『LEON』じゃないですけど、ファッション誌でも割とキレイめなオヤジを推奨してるじゃないですか。

瀧波 そもそもあれ、ジローラモじゃないですか、外国人じゃないですか(笑)。なんかもう、日本人要素ゼロみたいな。どうやったって彼にはなれないし、そりゃ年取れば毛も抜けるし脂は出るし肉もつくわけで。それをがんばってかき消そうとしてるところが見えちゃうのが一番ツラいですよ。

―うーん。でもそんな絵に描いた中年に対して、女の人ってときめいたり、ヘンな話……ヌレたりするもんなのかって、ちょっと疑問なんですよね。

瀧波 なんか、女性との関係において、最終目標にセックスを持ってきてる時点で若いっていうか、急(せ)いてる感じがします。

―…………。

瀧波 そういう方って、例えば食事会とかでも、「話しかけると下心があるって思われるんじゃないかな……ってすごい不安だけど僕話しかけてみたよ」みたいな空気でこられるじゃないですか(笑)。そういうのって意外と伝わるんですよ。

―そ、それはどういうトコから?

瀧波 やたらモジモジしてたり。

自分がどう思われようと構わないのがオヤジ

―それ、僕のことですかね。

瀧波 ええ、まあ(苦笑)。

―でもお言葉ですけど、女子って男と初対面のとき、セックスは目標のうちに一切入ってこないもんなんですか? 合コンとかで初めて男と会うときは、さすがに何パーセントかはヤル気で来てるんじゃないかなって。

瀧波 ヤル気なんてないですよ(笑)。もう、なんでそういうふうにしか考えられないんですか! 長い人生、そんないろんな人と出会って、「この人とは友達になれたな」とか「この人とはわかり合えなかったな」とかいろいろあるじゃないですか。なんでそういうのを純粋に楽しめないんですか!

―うーん……。

瀧波 それって裏返すと、傷つきたくないとか、変な人だと思われたらどうしようとか、そういう恐怖心、要するに自分がどう思われるかっていうことをすっごい気にしている状態だと思うんですよね。それをもうなくしてほしいんです。自分がどう思われようと構わないっていう。それを気にしないのがオヤジですから。なんでもかんでも短絡的にモテにつなげないのが大人のカッコよさ、落ち着きなんです。そこを意識するだけでも、全然違ってくると思いますよ。

(イラスト/瀧波ユカリ)

●瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)1980年生まれ、北海道出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。2004年から『月刊アフターヌーン』にて、"家では全裸"な24歳女子を主人公にした『臨死!!江古田ちゃん』を連載(単行本は全8巻)。私生活では2007年に結婚、2010年に第1子を出産。育児の様子はエッセイ『はるまき日記』にまとめられている。待望の新連載『あさはかな夢みし』が『月刊アフタヌーン』の1月号にてスタートする予定

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