さまざまなセックスの問題を薬に頼らずカウンセリングで解決していくダリュシュ博士 さまざまなセックスの問題を薬に頼らずカウンセリングで解決していくダリュシュ博士

国別のセックス頻度ランキングで最下位、夫婦のセックスレスも増え続ける日本。スケベは多いのに一体、どういうことなのか? 日本在住のポーランド人性科学者・心理学者のダリュシュ・スコブロインスキー博士がその原因を解説し、セックスレス改善の奥義をレクチャーしてくれた!

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―そもそもセックスセラピーとはどういうものなんですか?

ダリュシュ・スコブロインスキー(以下、DS) 性に関するあらゆる問題を抱えている人が治療対象で、薬に頼らずカウンセリングで解決していきます。重いものだと幼少期にレイプされたトラウマでセックスができない人から、カップルのセックスレス、男性のED(勃起不全)、女性の無オーガズムなど対象は多岐にわたります。

―患者とセックスすることで治療するわけではないのですね。

DS 違います(笑)。セックスのパフォーマンスを改善する技術は伝えますが、実際に体で教えることはありません。

セックスセラピーは19世紀末にドイツとアメリカで始まったもので、それにジークムント・フロイトが精神分析学を取り入れました。第2次世界大戦後にはアルフレッド・キンゼイ博士がセックスに関する広範な調査「キンゼイ・レポート」を作成し発展させ、1960年代から70年代にはウイリアム・マスターズ博士と妻のバージニア・ジョンソンがさらに多くの調査・実験を行ない、技術を進歩させました。

―ダリュシュ博士ご自身は、なぜセックスセラピストに?

DS 私はポーランド出身で、ポズナニ大学の修士課程で心理学を専攻していたんですが、選択科目に臨床性科学というのがあり、「セックスに関する学問なんて面白そうだ」と思い副専攻にしたんです(笑)。教授の授業が素晴らしくて私は夢中で勉強しクラスで1番になり、博士課程では教授の助手になりました。

博士課程を修了した後は、オーストラリア、シンガポールで大学講師をやりながらカウンセリングもした。そして2012年から日本に来て、早稲田大学やテンプル大学などで心理学関連の講義をしながら東京にオフィスを構えてカウンセリングをしています。

セックスレスの原因は親子一緒に寝る「川の字」

―コンドームメーカーのデュレックスの調査(05年)によると、1年間のセックス頻度で1位はギリシャの138回、日本は最下位の45回ですね。

DS 日本性科学会などの報告では、日本の夫婦間のセックスレス(1ヵ月以上、性的接触が一度もないこと)も増えています。09年に35%だったのが、今では約40%の夫婦がセックスレスです。

―そんなに!? 原因は?

DS 日本では親子一緒に「川の字」で寝る家庭が多いですよね。これがセックスの妨げになる大きな原因。妻が出産し母になると、家庭の中で母と子の間の絆が一番強く重要なものになります。そして夫はある意味疎外され、夫婦間は疎遠になってしまいます。

ところが欧米では、家庭の中で夫婦の絆が一番大事なんです。子供が生まれてから一緒の部屋で寝るのは最初の2、3ヵ月間だけ。1歳になる頃には絶対に別の部屋か、少なくともベッドは別ですね。日本では母と子の結びつきが強すぎるので「甘え」という現象も出てきます。

―だから、親離れできない子供や子離れできない母親が多い……と?

DS はい。そういうふうに母親に育てられた男性は、成人して結婚し子供ができると妻が「母」になってしまうので「母としての存在」である妻に性欲を抱くことに対し無意識に罪悪感を抱く……。そして、性欲は不倫や風俗など外で発散するというケースが多いんです。また、この母と子の強すぎる絆は日本人男性の「制服フェチ」にも関係があります。

―どういうことですか?

DS 過干渉であったり、支配的な母親に育てられた男性は、母親に対して潜在的にネガティブな感情を持っている。そのせいで、独立した大人の女性に近づくのが怖い。そこで、何も要求してこない「安全でピュアな女性」の象徴として学校の制服を着ている女性を好むようになります。もちろん、メディアの影響なども無関係ではありません。

セックスレスに効く「感覚集中法」のやり方!

―では、セックスレスカップルにはどのようなセラピーを?

DS 最も有効な方法として、「感覚集中法」があります(詳細は後述)。まず、「セックスをしなくちゃいけない」というプレッシャーをカップル双方から取り除き、相手の生殖器や胸、尻以外の部分を愛撫(あいぶ)するところからスタートするものです。

男性は特に、セックスというものは勃起して、挿入して、射精するという一連のプロセスを完遂することが大事だと思っていて、その義務感がセックスの妨げになっている。生殖器を忘れて五感を使い、数週間をかけてコミュニケーションをとりながら気持ちを高めていく方法です。

―触っちゃいけない「お預け作戦」ですね。まさに心理学だ。

DS ある女性は顔を愛撫されているうちに、鼻が性感帯だったと発見しました。お互いに何をしたいか、してほしいか? どこが気持ちいいか? 新たな発見をしていくんです。これはとても効果的なので、セックスレスカップルだけでなく、最近どうもパートナーとのセックスがマンネリだなと感じている人にもぜひ試してほしいですね。

*これが「感覚集中法」だ!

STAGE1 全裸になり相手の性的な部分(性器、胸、尻)以外を男女が交代で15分ずつ触る。リラックスしてタッチを楽しむように。最低1週間、できれば毎日行なう。週1回程度しかできない場合は、期間を4週間程度に延ばす

STAGE2 触れる範囲を性器、胸、尻へと拡大。ただし、それらの部分にだけ集中するのでなく全身を優しく愛撫すること。決して激しくしてはいけない。これも交互に15分、毎日~週3回くらいのペースで1、2週間行なう

STAGE3 交代ではなくお互い同時に接触する。性器、胸、尻だけに集中せず全身を優しく愛撫する。できれば毎日15分から1時間、1、2週間行なう

STAGE4 挿入せず女性上位で、ヴァギナ全体でペニスをマッサージ。恥骨のあたりを優しくこすりつけるイメージで。女性は同時に手でペニスを愛撫してもいい。オーラルセックスを取り入れてもいいが、それだけに集中しないこと。毎日15分から1時間、1、2週間行なう。このステージになると、お互いに刺激がうまくなっているので、もう少し短い期間でもいい

STAGE5 オーラルセックス(苦手な人はこの過程は省略可能)。ただし、焦って急な刺激をしてはダメ。これまで同様、ゆっくり時間をかけて愛撫する。15分から1時間、1、2週間行なうが、これも第4ステージ同様、カップルによってはもう少し短期間でもいい

STAGE6 いよいよ挿入。女性上位になり、挿入のペースやスピードなどを女性がリードするほうがうまくいく。愛撫から始めて15分から1時間、できる限りの頻度で少なくとも1週間行なう。それが終わった時点で、お互いに満足しているか話し合い、場合によっては第3ステージに戻ってやり直す。双方が満足していればセラピー終了!

*各自の生活スタイルによって可能な範囲で行なう。男女とも途中のステージでオーガズムを迎えることは差し支えない

●明日配信予定の後編では「薬に頼らないEDと早漏の改善方法」がテーマ!

 

■ダリュシュ・スコブロインスキー 1971年生まれ、ポーランド出身。職業柄セックスがうまいと思われ、女性クライアントからお誘いを受けることもあるが、「愛する妻もいますし、職業倫理上お断りしています」と笑う。早稲田大学やテンプル大学などで心理学関連の講義を持つほか、東京都内でカウンセリングオフィスを営んでいる。【http://bright-life-counselling.com/】

(取材/稲垣 收 撮影/本田雄士)