発売中の『週刊プレイボーイ』52号で男性誌初グラビアに挑戦した人気モデルの市川紗椰(さや)が、“鉄友”であるエッセイストの能町みね子を招いて、鉄道の素晴らしさをプレゼンテーション! この異常な愛情、非・鉄オタにも届くのか!? 話題の鉄オタ美女ふたりが、ゆるっと居酒屋トーク!
■アメリカでの乗り鉄は“スリルのある遊び”
―まずは、おふたりの最近の“鉄活”の様子を教えていただけますか?
市川 先週、やっとトワイライトエクスプレスに乗れました! 来年春に運行が終了してしまうので、今のうちに乗っておきたくて。
能町 確か大阪から札幌まで、22時間かけて走るんですよね?
市川 そうです。それだけ時間があると、もはや鉄道を味わうことしかできないんですよ(笑)。寝台に横になって走行音を聞きながら、「この列車もなくなってしまうのか」と浸ったり。もちろん、走行音は家でも聞けるように、レコーダーですべて録音してきました。
能町 すごい(笑)。私はこの間、大相撲の九州場所を見るついでに福岡のローカル線を乗りつぶしておこうと思って、篠栗(ささぐり)線~香椎(かしい)線に乗ってきました。
市川 そのルートだと、会場の福岡国際センターの周りをぐるーっと大回りする形になりますよね。
能町 そうそう。でも、福岡国際センターってかなり港寄りにあるので、香椎線の終点の西戸崎駅まで行って、そこから船を使ったほうが早いんですよ。…まあ、博多駅からタクシーで行ったほうが圧倒的に早いけど(笑)。
市川 でも大回りのほうが楽しいですよね! わかります!
―早くもマニアックな話になりつつありますが…そもそも鉄オタになったきっかけは?
能町 私は、なぜか幼稚園の頃から駅の名前とか無駄に全部覚えちゃう子供だったんです。当時は札幌に住んでいて、よく小樽(おたる)の親戚のところまで函館本線に乗っていってました。車窓から見る日本海の景色に、子供ながらに旅情を感じたりしてましたね。
市川 私は4歳から13歳までアメリカに住んでいたんですけど、乗り物全般が好きだったこともあって、よく日本の鉄道の図鑑とか読んでたんです。それで年に1回、日本に来るたびに鉄道を見に行ったりして、「わー、いいなぁ」って思ってました。
誰もが感動する鉄道って?
能町 じゃあ、日本の鉄道から鉄オタになったんだ。
市川 そうなんです。アメリカの鉄道に鉄オタ目線で乗り出したのは、むしろ日本に住んでからですね。最初は、向こうのアムトラックっていう鉄道会社から入って。
能町 アムトラックは、アメリカ全土をつなぐナショナル鉄道ですね。
市川 そうです。でも、アメリカで乗り鉄をするということは、“スリルのある遊び”。なぜなら、時間どおりに電車が来ないから(笑)。一度、4時間で着くはずのところに11時間かけて行ったこともあります。
能町 私の場合は、電車そのものより、車内で地元の人を観察したり、田舎の駅で降りたりするのが好きっていうところがありますね。特に東北方面の鉄道の旅はイイ。
大学の卒業旅行で、青森~秋田を走る五能(ごのう)線に乗ったんですけど、津軽のおばあちゃんたちが何を言ってるのかさっぱりわからないんですよ(笑)。その異国感に衝撃を受けて、結局その年に3回、青森に行ってしまいました。
市川 同じ青森でも、地域によって方言が違うんですよね。
能町 そうそう。一度、津軽線で女子高生たちと車掌さんが会話してるのを聞いたことがあるんです。どっちもすごいなまってたんですけど、後で女子高生が「あの車掌さん、何言ってっかわかんなかったねぇ」って(笑)。そのとき初めて、なまりの強さにもグラデーションがあると知りました。
市川 私も青森の弘南(こうなん鉄道のある駅で、地元の女のコが電話してるのを聞いたことがあるんです。そのコもけっこうなまってたはずなんですけど、最後に相手に向かって「なまってて何言ってっかわかんねぇから、切るね」って(笑)。
北国の冬をなめて降りると遭難します!
能町 場所によっては、ナチュラルに女子高生が「俺」って自称したりしますからね。
市川 “ボクっ娘”みたいに、オタク系のコじゃなくて?(笑)
能町 じゃなくて(笑)。ともかく、冬に北の鉄道に乗るのはいいですよ。豪雪の中を走る鉄道の力強さには、誰もが感動します。ただ、北国の冬をなめて電車を降りると、遭難しますけどね。
私も津軽線の蟹田(かにた)駅から隣の中小国(なかおぐに駅まで歩いていこうとしたことがあるんです。「5kmなら大丈夫だろ」と思ったんですけど、駅を出て10分後にはふぶきだして、死ぬかと思いました。
市川 私は北海道の日高本線が好きなんですけど、あそこはどこにもつながっていない“盲腸線”じゃないですか。それに無計画で乗っちゃって、終点の様似(さまに)駅で3時間、じっと次の電車を待ったことあります。もう、吹雪(ふぶき)で何も見えなかったですね(笑)。
※明日配信予定の後編では、ふたりのオススメ路線も紹介!
●市川紗椰(ICHIKAWA SAYA) 1987年生まれ、愛知県出身、アメリカ育ち。鉄道(主に車両や路線図、時刻表)、アニメ、グルメ系の情報に詳しいマニア気質。能町とは、鉄道のほかに大相撲ファンとしても意気投合
●能町みね子(NOMACHI MINEKO) 1979年生まれ、北海道出身、茨城県育ち。鉄道系の著書に『うっかり鉄道』など。また、『久保みねヒャダこじらせナイト』や、『ヨルタモリ』などのテレビ番組にも出演中
(取材/関根弘康 構成/西中賢治 撮影/本田雄士 衣装協力/パメオポーズ)
■週刊プレイボーイ52号(12月17日発売)「市川紗椰×能町みね子 鉄子の異常な愛情」より