年の瀬も近づき、日に日に冷え込みが厳しくなってきた。このところ以前より寒さがこたえる、手足が冷えるなどと感じることはないだろうか? 実はこの“男の冷え”が意外に侮れないのだとか。統合医療医で“冷え”に詳しい川嶋朗先生にうかがった。
―先生、今日も寒いです! 最近、以前よりも寒さが身にしみる気がするんですが、男の冷え性もあるんでしょうか?
「もちろん、あります。男の冷え性は女性よりむしろ怖いものなんですよ。なぜなら、男は自分が“冷え性”だとはなかなか認めず放置してしまうからです。でも実際には、養命酒が30~50代男性1200人に調査したところ、“手足の冷え”を感じている男性は3割以上もいました。また、日本人の平均体温は昭和32年の記録では36・9℃でしたが、現在では36.1~3℃くらいまで下がっているという調査結果もあります」
―なんと、日本人は昔より冷えている? でも、なぜ冷えたらいけないんですか?
「西洋医学で“冷え”は“血流の不足、あるいは代謝の低下により起こる熱産生不足”と考えます。血流が悪いと、全身に酸素や栄養素を運ぶことができません。それらが不足すると体の各部位が必要なたんぱく質を合成できず、熱も生み出せません。肝臓や腎臓から老廃物を運び出すこともできなくなり、血管がつまりやすくなってさらに血流が悪くなる。負の連鎖です」
―血の流れが悪くなって栄養素が運ばれず毒素も出て行かない、ということは…?
「体のあちこちに『痛い』『硬い』『動かない』『こる』などの症状が出てきます。肩こり、頭痛、腰痛などですね。また、体が冷えると新陳代謝を司る酵素の働きが低下します。酵素は体温が36.5℃~37℃で正常に活動し、体温が1℃下がると代謝量はマイナス12~20%、免疫力は30%落ちるといわれています」
草食男子も冷えが一因?
―冬になると必ずひどい風邪をひくのは…もしや、冷えによる免疫低下?
「そうかもしれませんね。風邪くらいならいいでしょうが、がんを予防するのも免疫の仕事だから怖いんです。私の患者さんでも体温が35℃台の人が珍しくありませんが、35℃台だとがんが発生しやすくなります」
―たかが冷えが、まさかがんにつながるとは…。
「また、冷えていると脂肪を分解する酵素の働きが落ちるので、メタボリック症候群にもなりやすく、ダイエットしてもなかなか痩せられません。それから、男性特有の症状として見過ごせないのがED。陰茎が膨張するのは血液が流れ込むから。流れが悪くなったら…単純なことですよね? 冷えると血管も収縮しますから血液が流れ込みません」
―なんと、冷えているとモテる男から遠ざかってしまうんですね。
「もうひとつ面白いデータがあります。最近、結婚しないし彼女もいない男性が増えていますよね? 実は恋愛中は“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが激減し、抗ストレスホルモンの副腎皮質ホルモンが増加します。つまり、恋愛をすると過度のストレスにさらされますが、そもそも冷えている人はセロトニンも副腎皮質ホルモンも作れない。つまり、恋愛のストレスに耐えられないので、体が無意識に恋愛を避けてしまうんです」
―草食男子も冷えが一因と…。それらは体を温めることで改善できるんでしょうか?
「できますとも。温めることはお金もかかりませんし、強くなれば負荷をかけても大丈夫になり、体質そのものも変わっていきますよ!」
―というわけで、次回は冷えた体を温める方法について具体的にうかがっていきます!
●川嶋 朗(かわしま・あきら) 1957年生まれ。統合医療医・医学博士。2003年6月~’14年3月まで東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長を務める。現東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当。著書に『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト』(アスコム)ほか