12月24日発売の『週刊プレイボーイ』1・2合併号の特別付録DVDが大きな話題を呼んでいる。カルト的な人気を誇る『劇場版テレクラキャノンボール2013』と、来年2月に公開を控える『劇場版BiSキャノンボール2014』がそれぞれ“週プレ版”として、カンパニー松尾監督の手で再編集された。
テレクラ愛を語りつくした前編に続き、後編ではなぜ、そもそもAVであった〝テレキャノ〟が女性を巻き込んでのヒットに繋がったのか。そして、BiSというアイドルグループの解散ドキュメントをAV監督が撮ることになったか。アイドル VS AV監督。前代未聞の撮影の裏側を監督自らが明かすーー。
* * *
―『劇場版テレクラキャノンボール2013』は女性のお客さんが多いようですね?
カンパニー松尾(以下、松尾) おかげさまで(笑)。正直、女性客が多いとか変な感じで。AVもテレクラも知らないし、見たこともないという人が観にきてくれているのは面白い現象だなあと思ってはいますけど。
―女性客がくるだろうなぁって予感みたいなものは?
松尾 全然(笑)。そもそもボクは女子を想定して〝テレキャノ〟を作ってないです。想定していたのは90年代からボクのAVを観てきた男性ですよ。その人たちが、渋谷の片隅の映画館に足を運んでくすくす笑ってくれればそれでいいと思ってたのが本音です。まあ多くて1日20人集まって、ヒットもせず終わり、カルト映画として語り継がれるみたいなイメージです(笑)。で、「カン松はよくこんなひでえ映画作ったもんだね」とかひっそり盛り上がってくれたら狙い通りって思っていましたね。
―なるほど(笑)。
松尾 AVやサブカル好きの男性が観て幸せを感じたり、喜んでもらいたかった。だから、結構な数の女性がテレキャノを劇場で観て、その感想をツイートしている現実を目の当たりにすると変な感じで(笑)。全く想定してない層の反応ですから。
女性が〝テレキャノ〟を観るワケ
―〝テレキャノ〟を観た女性の反応ってどんな感じなんですか?
松尾 マジメな話をすれば女性は肝が座ってますよ。〝テレキャノ〟のグロい部分も「キャー」とか言いながら、絶対に目を逸らさず楽しんでます。逆に男性はそういうグロい部分に弱かったりするんですよ(笑)。
―女性客は〝テレキャノ〟のグロい部分も許容していると?
松尾 まぁでも、本来は女性がわざわざ足を運んで観る必要のない映画だと思う。観ちゃった女性は事故にあったと諦めてほしい(笑)。
―女性が〝テレキャノ〟を観る理由はどこにあるんでしょうか?
松尾 まあ、〝テレキャノ〟がヒットした背景には、2011年の東日本大震災があると思うんですよ。アレを経験してからの日本は長らく自粛ムードになっていたじゃないですか?
―ええ。
松尾 その流れから今年ようやく解放された気がするんですよね。ずっと抑圧されていた反動で、〝テレキャノ〟のような不謹慎でバカな作品を多くの人が求めた部分はあるのかなって思いますけど。まあ、女子で言うと、いま売れてる商材の多くって女子向けばかりですよね? 極端なとこだと、マカロンだとかパンケーキですよね。
そういうスイーツ女子的な商材って、マーケティングから導き出された「今どきの女子ってこういうのが好きなんでしょ?」という上から目線の押しつけですよ。それに対して飽き飽きした層の女子が『劇場版テレクラキャノンボール』に足を運んでくれたのかなって感触はありますね。
アイドルとAV監督が合体した裏側
―そんな一般女子を巻き込んでいるカンパニー松尾が、来年2月7日より全国公開される『劇場版BiSキャノンボール』でアイドルを撮りました。
松尾 なぜ、AV監督のカンパニー松尾がBiSというアイドルグループの解散を撮ったのか気になると思います(笑)。まぁ話は簡単でスペースシャワーTVのプロデューサーさんと、BiSのマネージャー兼仕掛け人の渡辺さんから「2014年7月にBiSというアイドルグループが解散するのでドキュメントを撮ってもらえませんか?」と言われたんですね。けど、ボクはBiSを知らなくて。
―知らなかったんですか?
松尾 全然知らなかった。それでまぁ、BiSのことをアレコレ調べてみたらスゴいことやってて。全裸PVだの、ハグ会だのってね。こんなやらかしてるヤツらのケツをボクに持てという意図はわかる。最後にAV監督のボクが撮れば、なんか研究員(※ファンのこと)の皆さんに期待を持たせられますから。それはわかるんです。けどね、コレやったらオレって単なる噛ませ犬じゃん、と(笑)。それとね、すぐ踏み切れなかった理由がもうひとつあって。
―教えてください。
松尾 撮る内容ですよね。ボクがBiSの6人を相手に撮るとします。ヒストリーを追って、お涙頂戴の感じでまとめるのは絶対に違う。ましてや解散日だけ撮って編集しても浅いドキュメントにしかならない。一応、AKBのドキメュメント映画のDVD買って観たんですけど、カメラの台数も多いし、密着している期間も非常に長い。これを基準にして考えると勝機がなかったんですよ。
―でも引き受けました。
松尾 ひとつだけ頭に浮かんだことがあって。解散ライブの後の彼女たちの姿ってどうだろうかと。解散ライブが終わった後や、その翌日の彼女たちって一体どんな顔で、何をしてるのか? それを実現するためには6カメ必要なんです。そこで待てよ、と立ち止まったんです。〝テレキャノ〟メンバーは6人いるぞ、と(笑)。
しかも全員、監督だから彼らにカメラを任せればいい。彼らを使うなら〝テレキャノ〟システムを持ち込めるぞと。ちょうど(今年5月10日放送の)『めちゃイケ』が〝テレキャノ〟をオマージュして、世間的に盛り上がってたんで、先方に提案したらOKが出て(笑)。
―よくOKが出ましたよね?
松尾 懐が深すぎるよね(笑)。以上がアイドルとAV監督が合体した裏側です。
(取材・文/黒羽幸宏 撮影/佐賀章広)
●カンパニー松尾 AV監督。1965年生まれ、愛知県出身。87年に、童貞ながらAVメーカーに入社。翌88年、監督としてデビュー。ハメ撮り旋風を巻き起こす。代表作は 全国のテレクラを巡り素人を相手にハメ撮る『私を女優にして下さい』シリーズなど。現在は2003年に自ら立ち上げた「HMJM」の監督として活躍中。趣 味はオートバイ、好きな食べ物はカレー