実は男にも多いという“冷え性”。その影響は肩こり、頭痛などにとどまらず、メタボやEDの原因にもなるという。
今回は、冷えた体を温かくエネルギッシュに甦らせるための方法を、統合医療医で“冷え”に詳しい川嶋朗先生にうかがった。
―それにしても、なぜ現代人は昔より冷えてしまったんでしょうか?
「ひと言で言うと、生活が便利になったからです。冷蔵庫でいつでも冷たい飲み物が飲めるし、エアコンで体温調節の必要がなく、乗り物が発達して運動不足に。日常的に負荷がかからないと体は自然と怠け、寒いときに熱を作る能力、熱いときに熱を逃がす能力が奪われてしまったんです」
―そんな私たちの冷えた体を温めるにはどうすれば?
「まずは、冷たいものをとらないことから始めてください。仕事の後に毎日冷えたビール…なんてもってのほか。飲み物は冷蔵庫で冷やすのをやめ、せめて常温で。それでも不十分と感じるなら、体温より高い温度のものをとるようにしましょう」
―おつかれさまの一杯がダメとは、なかなかキビシイです。
「ビールを焼酎のお湯割りやウイスキーのお湯割りなどに変えてください。蒸留酒だから太りませんし。また、ホットビールも意外においしいですよ。ベルギーなどではメジャーで、日本でも買うことができます」
―ホットビール? あまり聞いたことがないですがやってみようかな。
「飲み物だけで不十分なら食べ物にも気をつけたいですね。体を温める食材の基本は、寒い季節や寒い地方で採れるもの(リンゴ、さくらんぼ、鮭など)、色の濃いもの(赤ワイン、黒砂糖など)、味の濃いもの(味噌、しょうゆなど)、地中に向かって伸びるもの(根菜類)、水分が少なくて固いもの(豆類、玄米、小魚など)。
また、咀嚼(そしゃく)も大切で30回くらい噛むと理想的ですね。縄文人は1回の食事に4千回以上噛んでいたといいますが、現代人は600回くらいまで減っていますから」
理想の服装は“バカボンパパ”
―服装はやはり厚着が基本ですか?
「特に血流の多い場所を温める工夫をしてください。太もも、おなかまわり、腰まわりなど筋肉の多いところと重要な臓器のあるところです。理想はバカボンのパパ。あれをインナーに取り入れると完璧です。最近は腹巻もそんなに分厚くないし、スマートに身に着けることができますよ」
―バカボンパパですか! 昭和の人たちは自然と冷えない服装をしていたんですね。
「そうですね。あと、大切なのは適度な運動。適度というのは、自分にとって少しキツイと感じるくらいのことです。体力には個人差があるので、歩くだけで息が上がる人は歩くだけでOK。激しすぎる運動はマイナスになりかねません。それと、熱の約30%は筋肉から作られるので筋肉をつけてほしいですね。筋肉は6秒以上負荷をかけると増える傾向があるので、そういうことを意識して行なってください」
―適度な運動は、メタボ予防にもなって一石二鳥です。
「それから、 “心の冷え”であるストレスも体を冷やす一因です。読書、音楽、スポーツなどなんでもいいので没頭できる趣味や、気軽に話せる友人を持っておきたいもの。そして、今挙げたような対策ができなかったとしても手っ取り早いのがお風呂。血のめぐりが良くなるし、40度以下のお湯だと副交換神経が優位になりリラックス効果もあります」
―そうやって日常生活を変えていけば、誰でも体温を上げることができますか?
「ほぼ皆さん、上がります。程度ややり方にもよりますが1年くらいが目安。温かくエネルギッシュな体になれば、恋愛にも積極的になれるでしょう。最後に、タバコはニコチンで血管が収縮するので間違いなく冷えの原因になります。頑張って対策する一方でタバコを吸っていたら、かなり効率は悪いのでご注意を」
●川嶋 朗(かわしま・あきら) 1957年生まれ。統合医療医・医学博士。2003年6月~14年3月まで東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長を務める。現東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当。著書に『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト』(アスコム)ほか