フグを捌(さば)いているようだが、週プレ釣り部が釣ったもの?

強風で見るからに波が立ち、荒れる海にも関わらず、鍋を豊かにするためショウサイフグGETを決めた週プレ釣り部。もはや釣り愛なのか食い意地なのかは不明だが、こんな状況で釣れるのか!?

***私と釣り友K氏を乗せた信照丸は、午後1時に松部港を岸払いした。幸いなことに午後は晴れている。真冬だが日差しを浴びて出航するのは気持ちがいい。これでターゲットのショウサイフグが釣れれば最高だ。

しかし、港を出たとたん、船に大きな揺れが。船首が高い波を裂き飛沫(しぶき)がかかる。船は激しい乱高下を繰り返す。

どの港もだいたいそうなのだが、港の出入り口は波が立つのだ。その理由は、港の出入り口は複雑な環境だから。水深が浅くなるにつれ波高が大きくなるのはわかるだろう。

しかし、波の回折と干渉は知っているだろうか? 港周辺の障害物に波が当たって跳ね返る、これを波の回折。そして、波と波が別々の方向から重なると、別の形の波が形成される、これを波の干渉という。船頭さんが緊張する場所なのだが、この日は風が強い分、さらに激しかった。

ゆっくり船は走っているのだが、我々は両手両足を突っ張り身体を支えるだけで精一杯。海底を魚探でリサーチしているのか船が何度も旋回している。港を出てから30分くらいで、船は船首を風上に向けて、エンジンはスローダウン。船は上下に浮き沈みしながら左右に揺れている。普段よりもかなり長く感じた。

ポイントに到着し、いざ釣り開始。水深は25mほど。大きく揺れる船上でオモリに直結しているテンヤバリにアオヤギを付ける。オモリは25号だ。

リールのクラッチを切り、仕掛けは数秒で着底。トントンとオモリが底を叩いている。右手で竿もち、左手で船べりを掴む。腰は船べりに密着させて、身体の安定を確保する。しかし、容赦(ようしゃ)なく船は上下する。

オモリが底から離れ、2、3秒後にトンと底に着く。風は顔を叩く、たまに飛沫が当たる。フワっと身体が浮いたと思いきや、ドーンと船首が海面を叩く。背中合わせのふたりは無言。

しばらく経って、船長から移動の合図。両足を踏ん張り、腰を船べりに密着させながら仕掛けを回収する。…いつの間に食われたかエサが少なくなっていた。もちろん落としている間は波の影響でまったく気づかず。非常にやりにくい。

諦めムードが漂うなか…

ほどなくして先ほどと同じく水深25mのポイントに到着。姿勢を安定させながら、リールのクラッチを切った。ドーンと船首が海面を叩く。しばらくすると、背後から「きたっ!」と聞こえたような気がして、振り返ってみるとK氏がリールを巻いている。本人は叫んだようだが、風に吹き消されて、ほとんど聞こえなかった。

ちらちら振り返りながらK氏の様子を伺っていると、やがて仕掛けとともにショウサイフグの真っ白な腹が! まぁまぁサイズのショウサイフグだ。鍋材確保!

私といえば、底どりもままならず苦戦中。定期的に空アワセもしているが、魚信(アタリ)がまったく解らない。しかもそうしているうちにK氏は2匹目も確保。こんな状況で今日はもう無理かとほとんど諦めムード。釣れるK氏が不思議でならない。

しかし、その矢先、「ツンッ」と忘れかけていたアタリが! すぐさまシャクるとズンッとした重みが伝わってくる。ふわっとしたり、ずずっーと重くなったり、船の上下で魚の大きさはわからないが、やがて仕掛けが見えてきた。

「おっ、ショウサイだ!」。大きく膨らんだ真っ白い腹にカットウバリが2本刺さっている。荒れ狂う海も目に入らないくらい嬉しかった。港を出てから約1時間、海は鎮(しず)まるどころか、ますます白く波立っていた。

どうやら、今日はべた底が良く、底にオモリを放置した時に「ツンッ」「クンッ」といったわずかな魚信が捉えられるようだ。たぶん、オモリを底に着けたままラインを張らず緩めずのゼロテンションの状態が理想なのだろう。空アワセはむしろ逆効果で、フグを散らせる原因だったのかもしれない。

気を良くして釣り再開すると、次は「クンックンッ」と小気味のいい魚信がきて、思わずシャクリが大きくなってしまった。ちゃんと乗ったようで「グンッグンッ」と大きく引いてくる。フグではないようだが、あがってきたのは27cmの本カワハギ。思わぬゲストにびっくりした。

K氏と合わせて3匹目のショウサイフグ。鍋にはもう十分だが、ほかの料理も食べたいのがホンネ

順調に釣れ始めたところで…

これだけのサイズのカワハギになると丸々煮付けにするか、刺身を肝和えにするか迷うところ

この後、ふたりとも釣れだしたが、海上はさらに荒れてきた。船には前から横から大波が叩いている。昔、同じ海域で時化(しけ)に遭遇したことがあった。あまり大きくない船だったが、艫(船の最後尾)から波が入ってきて恐ろしい思いをした。船はミヨシ(船の船首)が海に突っ込むと、浮きあがれないそうだ。

普段は、切り上げるタイミングを熟知している船長の判断に任せるのだが、そうもいってられない。朝からの悪天候で正直、体もかなりへばってきている。K氏と私は早上がりを船長に申し出た。釣り人も無理をしないで、安全確保を自らの判断で行ないたい。

この日の午後は、約2時間の釣行。結果は、私がショウサイフグ5尾+カワハギ1尾、K氏はショウサイフグ5尾。陸にあがっても、まだ身体は揺れていた。冬の海、侮(あなど)るなかれ! それでも冬の魚は脂が乗っていて美味しいし、釣技も磨ける。もっともっと探せば楽しい釣りが発見できる。

着岸した船上で、フグ調理師の免許を持った仲乗りの息子さんが、我々の釣ったフグを捌(さば)いてくれた。頭を落としたので全長が三分の二くらいになってしまったが、白身がたっぷりあるショウサイフグ、鍋が楽しみだ。唐揚げもやるかな?