世界に冠たる「メイド・イン・ジャパン」に、またひとつ“伝説”が加わる。ご存知、コンドーム大手のオカモト株式会社が満を持して販売するのは、その名も『オカモトゼロワン』。薄さ僅か0.01mm、しかもその薄さは根本から先端まで均一だという。
すでにオカモトのコンドームには薄さ0.02mmの『うすさ均一 0.02EX』というシリーズがある。実は、昨年2月から始まった同シリーズのキャンペーンでは、商品パッケージにお試し用サンプルとして1個だけ0.01mmのコンドームが添付されていたのだが、それを覚えている人も多いだろう。そのサンプルがついに商品化され、4月2日に発売されることになったのだ。
■均一な薄さが生んだ柔らかさ
しかし、最大の特徴は薄さだけでなく「均一性」だ。ボトム・センター・トップの全てが0.01mm台になっているのだ。
「正直、薄く作るだけなら簡単です。コンドームはガラスの型をポリウレタンの原料液にくぐらせて作るんですけど、先端は当然、原料液が垂れて厚くなってしまいます。男性ならわかると思うんですが、先端はより薄い方がいいでしょう(笑)。なので、均一の被膜を安定的に作るのには非常に苦労しました。うすく、やわらかいポリウレタンを研究していくなかで、ようやくたどり着いたんですよ」
こう開発の苦労を語ってくれたのは、同社の医療生活用品部でマーケティング推進室に所属する和田翔雅さんだ。当初は、従来の製品で使用していた原材料で模索していたが、それを根本から見直し、新たな原材料を開発したという。
さらに、同社製品のウリである「柔らかさ」に関しても満足いくものに仕上がった。ポリウレタンのデメリットはその硬さにある。今回の改良の結果、そのデメリットもかなり克服できた、と和田さんは胸を張る。
「もちろん、厚みが薄くなれば伸びやすく、柔らかくなるんですけど、しなやかさも向上して非常にいい仕上がりになっているんですよ! 密着感もしっかり感じ取れるはずです」
シビアな基準でより安全性を強化
■検査の厳格化でより安全に
ただし、薄くなるということは同時にリスクも増える。それは「安全性」だ。ピンホール(穴)がある商品を市場に流通させてしまえば大問題だ。ユーザーの人生を変えてしまう可能性だってある。
「薄いコンドームに対して、薄くなればなるほど不安や恐怖心を持たれるお客様もいらっしゃるんです」
そこで開発陣が行なったのは検査の見直しだ。今までより薄い分、いかに不良品を防ぐことができるかが重要になる。
「通常も電気導通によって穴がないかを確認する電気ピンホール試験など、様々な検査を行なっています。しかし、『オカモトゼロワン』は特にデリケートなので、検査のやり方や基準を見直しました」
異例の反応に社内も騒然
■『オカモトゼロワン』に集まったユーザーの期待
こうした苦労を重ねて完成した『オカモトゼロワン』。しかし疑問なのは、ユーザーがその恩恵を実感できるのかという点だ。目にも見えない、その厚みを肌はしっかり感じ取れるのだろうか。
「これがわかるんですよ! 特に従来のものと並べて触ってみると、はっきり違いがわかります。キャンペーンで行なったアンケートでも93%のお客様がその薄さを実感されています。また、パッケージから中身を取り出した段階で“明らかに薄い”と感じられた方も多いようです」
ちなみに、前述のアンケートでは1万7000件もの回答があったというが、これには社内も騒然となった。
「これはもう異例中の異例でしたね。この数は本当に驚きました。しかもアンケートの項目欄には、みなさん、しっかり感想を書いてくれているところに期待を感じましたね。幅広い層のお客様がびっしり書き込んでくれたんです」
ユーザーの期待感はそれだけにとどまらなかった。
「お客様からの『いつ発売するんですか?』という問い合わせもすごかったんですよ! 入社以来、店頭以外で発売日の問い合わせをこれほどいただくことはなかったんですけど、僕だけでも4、5回は電話を受けて話しているんですから。なかでも女性のお客様が多いんです。『ホントにみんな、欲しいのかな?』って思うくらい(笑)」
少なくともアンケートの回答には女性からの「柔らかくて摩擦が少ないので性交痛がない」という意見が多く寄せられたという。そういう意味で、男性からだけでなく女性からの注目やニーズが高かったことも快挙と言えるだろう。
海外には見過ごせない数の愛好者も
さらに、『オカモトゼロワン』の発売に期待を募(つの)らせていたのは日本の国民だけではない。日本のコンドームが薄いということは世界中の愛好者の間で知られているからだ。
「最近は海外からの観光客にも注目されていて、お土産でまとめ買いする人も多いんです。データを見ていると『明らかにケース買いだ!』ということもあります。薄さへの関心は、万国共通なんだなって思うこともありますね」
海外でのコンドーム販売は、各国で医療機器としての法規制が違うため難しい。そのため、日本に来て購入するしかないのだ。富士山の世界遺産や2020年の東京オリンピックなど海外からの旅行客が見込める今、『オカモトゼロワン』は世界に羽ばたく可能性もある。
最後にひとつ、もっとも気になることを和田さんに聞いてみた。これ以上に薄いコンドームが登場する可能性はあるのだろうか。
「う~~ん、難しい質問ですね。これ以上薄くなって、人間にわかるのかなと思いますよね。もちろん、コンドームにはいろいろなニーズがありますから、まだまだ開発は続けていきますよ。我が社は『薄くて、丈夫で、やわらかい』を開発ポリシーに80年以上、コンドームを作ってきました。今後もお客様の想像を超えるような商品を作っていきたいですねね」
(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/鈴木昭寿)