万人受けが魅力の一つだと思われていた軽だが、最近は個性を放つ「イロモノ軽」が続々と投入されている

軽自動車だけが右肩上がりで成長…というトレンドが続き、万人ウケが軽の魅力のひとつだが、ここ最近はマニアもうならせる個性的な「イロモノ軽」が続々と登場している。

その代表格ともいえるのが、女性からマニアまで幅広くカバーしてくれるカラーバリエーションで人気を博したスズキのハスラーだ。

すでに街中でもおなじみのハスラーは、スズキらしいお手軽、かつセンスの良さが光るイロモノ軽だ。簡単に言うと、世界的にも今最もアツいジャンルであるクロスオーバーSUVの一種だが、考えたら、それ以前の軽には存在しなかった。さらに、そのデザインが若者には新しく、中高年マニアには懐かしい。

基本設計はワゴンRだから、実用性や機能性に問題なし。クロスオーバーの発想は軽以外にはすでにあったし、デザインもどこかで見た風。技術的にも特筆すべきは皆無なのだが、スズキは時折、絶妙のタイミングで、ズバッと魅力的な商品を造る。ハスラーはそんなスズキのセンスが爆発した好例だ。

スズキ ハスラー

それに対するのが、ダイハツのウェイク。同車はスーパーハイトタントよりさらに85mmもノッポにした新ジャンル。着座姿勢もきちんと練り直されていて、パッケージから新しい提案型商品。笑ってしまうほど細長いカタチだが、これが「第4の軽」として、数年後に街中にあふれている可能性はゼロではない。

難を言えば、高重心のために高速や横風で不安感が増すため、乗り心地は決して良くない。しかし、これを「物置にタイヤがついていれば御の字」とか「現地にそのまま行ける移動式趣味部屋が欲しかった」と割り切れるなら、ウェイクは新しい世界を開いてくれる軽である。

ダイハツ ウェイク (撮影/岡倉禎志)

他の軽と一緒にするのは失礼千万!

さらに、定番ではないけど、独特の魅力がある「個性派軽」としては、三菱i-MiEV(アイミーヴ)やスズキ・ジムニーも無視できない存在だ。ただし、これらを前記2台と一緒にするのは失礼千万。この2台は「こんなん、どうっすか?」みたいな軽いノリの企画商品ではない。

i-MiEVは電気自動車(EV)に社運をかける三菱にとっては本気の未来へのかけ橋だし、ジムニーはアジアなどに「これがないと生きていけない人」がいる本物の道具。とにかく、他に代用がきかない存在なのだ。

三菱 i-MiEV

EVのi-MiEVには2種類のバッテリー容量モデルがあって、フル充電航続距離はJC08モードで120kmと180kmだから、普通に安心して使える距離は80kmから140kmといったところか。日産リーフの228kmと比べると短いが、ハッキリ言うとリーフだって無遠慮に遠出できるレベルにない。

最初から決められたエリアで計画的に走るシティコミューターに徹するなら、リーフより軽のi-MiEVのほうがはるかに実用的で将来性のあるEV…と言えなくもない。

ジムニーは小さなボディで、山奥の狭い林道の走破性では世界一。ドロンコ競技で遊ぶのも、大きな四駆よりずっと安くて楽しい。「生活」と「遊び」の両極にフィットするジムニーもまた、孤高にして無双の存在だ。

スズキ ジムニー

今の軽は昔のように「税金を安くするから不便はガマンしろ」ではなく、「何ひとつ困ることがないのに、税金だけが安い」というクルマである。そんな最新の軽が右肩上がりで売れるのは当然だ。こんなに豊かな軽の世界にカンパイ!

(取材/佐野弘宗 友清 哲 取材協力/森 慶一)