みなさま、ナマステ。ついに呼ばれてしまいました。だいぶ、焦(じ)らされました。カレーの国、インドです。
「世の中には2種類の人間がいる。インドに行ける人間とインドに行けない人間である。さらにその時期は運命的なカルマが決定する」と三島由紀夫が言ったそうな。
インドへ向かう旅人でこの言葉を知らない人はいない(はず)。
その言葉の解釈は人それぞれ違うけれども、私の場合はインドに行くぞと決めてからは、ビザがすんなり取れなかったり、体調を崩したり、そのくせ占いでは住むのにピッタリな国がインドって出たり……。完全にインドにツンデレくらって弄(もてあそ)ばれておりました。
今年に入るなり立て続けにインドで日本人女性が被害に遭う、痛ましい事件がありました。衝撃でした。何もこんな時期に呼ばなくても…。
私は南米出発の時もエクアドルのタクシー事件(日本人夫婦殺傷事件)があった直後だったり、いつもこんなタイミング。
旅をするほど世界の怖い部分も実感し、より恐怖が募る。しかし、長らく突き放されていたインドからついにお呼びがかかったのだ。この挑戦、受けて立とうではないか。
最初に足を踏み入れたのは、インド第3の都市カルカッタことコルカタ。「喜びの都市」「宮殿都市」との愛称もあるが、200~300万とも言われる路上生活者が暮らし、19世紀にはイギリス人に「この宇宙で最悪の場所」と言わしめた街でもある。随分な言われよう…(苦笑)。
早朝、到着した私がタクシーからまず目にしたのは、路上の井戸水ポンプの水を浴び、泡だらけになって体や髪を洗うパンツ一丁の男たち。その姿は、まるで朝シャン女子。なかなかキレイ好きなようだ。と思いきや、お尻丸出しで用を足す子供。そして時に大人も…。ギョギョギョ。でもまあ想定内、かな。
警戒モード全開で街に出たものの…
バックパッカーの集まる安宿街・サダルストリートは、日本人を騙(だま)す詐欺が横行する危ない通り。路上で寝る人やバクシーシ(喜捨)を求める子供、チャイをすするおじさんや美しいサリーをまとった女性。
今まで周ったアジアとは人の顔立ちも違うせいか、これぞインドといった独特な雰囲気が漂う。
ひとたび路上に出れば日本人は注目の的。どんなグイグイの押し売りや詐欺が待っているかと警戒しながら歩いたけど、リキシャ(人力車)のおじちゃんが、「リキシャ乗る…?」と声をかけてくる程度。
あれ? 思ってたより控えめ…。
また、今回は目立たないよう地味めかつ露出を控えた装いにしてたけど、やっぱり現地の派手な服も気になって路上の洋服売りで物色。
強烈なセールスにボラれないようにと強い気持ちで臨んだものの、全く声もかけられず、試着までさせてもらった後、「ちょっと考えます」と言ったら、あっさり「OK~。またね!」
え? ここインドですか? サッパリしすぎてて逆に怖いわ!
ローカルバスに至っては「インド人は列に並ばずに人を押し退けてバスに乗るから、負けないようにしなきゃ!」と鼻息荒く挑んだら、老人優先で乗車を手伝う人々の姿が…。車内にはうるさいおしゃべりをする人もなく、皆静かに座っていた。
ここまでくるとイメージが違いすぎて、インドに裏切られた気分にさえなった。
それなら、これはどうだ! インドといえば誰しもが受ける洗礼。“ザ・腹痛”。
屋台ではカレー30ルピー(約60円)を現地人と一緒になって右手で食べる。飲み物だってヨーグルトを水で割った15ルピー(約30円)のラッシーを飲む。水割りだよ、水が悪いからお腹壊すってよく言うよね。しかし翌日も、その次の日も、私のお腹は至って元気だった。どーなってるの、インド???
「深夜特急」に乗らずしてインドの旅は語れない
そしてインドと言えば、列車。旅人の誰しもが読んだことのあるだろう、沢木耕太郎の『深夜特急』。その世界がここにある。痴漢や睡眠薬強盗のウワサが飛び交っても、これに乗らずしてインドの旅は語れません。
インド列車の座席は9種類ほどのクラスに分かれている。まるでインドのカースト制度(身分制度)に比例するように、そのクラスに合わせて乗客のタイプが違うようだ。
700キロ10時間(実際は14時間かかった)の距離を、運賃は300円弱からクラスが上がるごとに約倍額ずつ上がっていく。旅友が購入した最低クラスの席は、いざ乗ろうとすると警察から「外国人がそのクラスに乗るのは危ない」と言われ、乗らせてもらえないほど。
街中を安全に切り抜けたとはいえ、念には念を。ちょっと出費だけど、この旅“安全はお金で買おう”。私は少なくとも上から3番目までのクラスの乗車券を買おうと、コルカタの東京駅に匹敵するハウラー駅に向かった。
そこにはやっとインドらしい光景が。券売窓口の大行列は、少しでも隙間をあけるとスルっと何気ない感じで横入り。ちょっと年配者だし「譲るか……」とやってしまったのが間違い。次々と入られてしまい、「ヤバイ!」と思った私は前の背中にピタリと張り付くことにした。
隣の列では、横入り問題が原因か、ヒステリックにわめき合うおじさんたち。すぐに落ち着くが、また5分後には同じ光景。その火のつき方と鎮火の早さが面白く、ショートコントを見ているみたい(笑)。
私は自分のチケットを買うのに、何度もダメ出しをくらって4回も並び直し、2時間かけてやっと購入できた。
良い席だったおかげか、1車両30人くらいの客層は家族連れや身なりの良い人が多く、特に私の周りはお金持ちのおばちゃんや英語のできる女学生だったので、ホッ。
インドっぽかったのは、電気を付けたり消したり、声が大きかったりと、ちょっと図々しい日本のおばちゃんと変わらないくらいで、ひとまず安心の旅のスタートとなった。
もっと危ないインドを期待していたみなさん、すみません(笑)。でもきっと、まだまだ序の口。今までもインドにはツンデレされてるし、この先やってくる洗礼が恐ろしくもあり楽しみでもある。
あれ? 早速ちょっとお腹がゴロゴロいってるかも……?
【This week's BLUE】 これがインドの深夜特急! クラスによって乗客の雰囲気が変わるのが窓から垣間見られる。すごく長ーい電車なので、乗り遅れないように自分の席までホームを猛ダッシュした!(笑)
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】