(表)山崎家が購入した4件の家

派遣社員がマイホームを手に入れるのは難しい? だが、少し視野を広げてみると住宅ローンを組まなくても手に入る“良い家”がある。家はマンションや一戸建てだけではない。

20代・派遣社員で家を買った山崎純二氏が説く、知られざる「団地の魅力」とは?

―山崎さんがご自身のマイホームを購入されたのは派遣社員だった20代後半(表③)。よく買えましたね?

山崎 300万円の団地でしたが、父と兄から100万円ずつ融通してもらって全額現金払いで買いました。“家は家族で協力して買う”のが山崎家流。ボクも父が家を購入する際(表①)、100万円ほど出しています。

―それにしても全額一括払いというのはすごいですね。

山崎 ローン返済のために35年も働き続ける人生は重荷だと思っていましたから。そして、安さを最優先するなら団地は狙い目です。世間的にも見栄えやイメージの悪さから敬遠されがちで、売りに出してもなかなか買い手がつかないから価格は下がり、値下げ交渉も成立しやすい。

ちなみに3軒目の物件はもともと350万円で売られていましたが、「現金で決済する」ことを材料に交渉したら50万円も負けてくれました。

―格安団地はどうやって見つけるのですか?

山崎 ボクはいつも住宅情報サイトの『Yahoo!不動産』を使います。居住エリアや予算、間取りなど細かく条件を決めて検索するのが一般的ですが、僕は、条件設定を「神奈川県内」くらいにして全件検索しました。

この方法で毎日、情報収集を行ない、業者も含めて誰よりも早く格安団地を発見。格安だけにかなりボロい団地でしたが…。

リフォームも自前でやれば材料費だけ

―リフォームにかなり手間取ったのでは?

山崎 そうですね。でも、汚れは掃除で落ちますし、古びた内装は部屋中をペンキで白く塗り、畳をフローリングに張り替えればおしゃれな洋間に様変わり。リフォームを業者に頼めば100万円はかかるでしょうが、自前でやれば材料費だけで済む。工夫さえすれば安く快適に暮らせます。安さの理由が“ボロくて汚いだけの団地”は本当にお宝ですよ。

―お宝といいますと?

山崎 実はこの家(表③)、リフォームを終えた後に大手不動産会社に査定してもらったんです。査定額は近隣の取引事例から判断されますが、査定結果にはこうありました。

「販売活動を始めて1~2ヵ月前後で売却を希望する場合、300万~350万円。6~8ヵ月後の場合は700万~800万円」

つまり、元の所有者が売り急いでいるケースでは、物件価格が安くなる、ということ。団地は買い手がつきにくいので、すぐ売るためには価格を300万ぐらいまで下げるしかない。僕と売買交渉をした、この家の元所有者には「転勤で1ヵ月以内に引っ越さなければいけない」といった事情があったのでしょう。

ボクは幸運なことに、実際に数年住んだ後、この物件を600万円程度で売却することができました。購入額は300万円なので、300万円のプラスになった計算になります。

―でも、やっぱり住むとなると団地は不便でしたよね?

山崎 ボクの部屋は2階だったのでよかったのですが、エレベーターがないので4、5階の住人は階段の上り下りが大変そうでしたね。あと、団地の管理組合の役員を任されると入居者から管理費や修繕費を回収したり、役員会議に出席しなければならなかったのは少し面倒でした(笑)。

少し不便だけど、住むには不自由しなくて、思わぬお宝が眠っていることもある。団地も視野に入れた「家選び」は、結構アリだ。

(取材・文/頓所直人 興山英雄)

●山崎純二氏1978年生まれ、神奈川県横浜市出身。東洋大学経済学部卒業。著書に『「20代、派遣社員、マイホーム4件買いました」』(ぱる出版)などがある