サウナを愛してやまない“トッププロサウナー”の3人。左からタナカカツキ、池田晶紀、濡れ頭巾ちゃん サウナを愛してやまない“トッププロサウナー”の3人。左からタナカカツキ、池田晶紀、濡れ頭巾ちゃん

オッサンたちの汗かきガマン大会」のイメージはもう古い! 近年、話題のロウリュサービスなどのおかげで、ジワジワとブームが到来しているサウナ。

そんな、サウナに取り憑かれ、年間400日(!?)は通うという、次の“トッププロサウナー”たち3人に“サウナ愛”を熱く語っていただいた!

タナカカツキ マンガ家。日本サウナ・スパ協会認定のサウナ大使に就き、報道官として激しく活躍中。著書の『サ道』は日本のサウナーたちのバイブルともいわれる。ちなみに、大ブレイク中の「コップのフチ子」の原案者でもある

池田晶紀 ドラマ『北の国から』の主人公・黒板五郎が好きすぎて、舞台となった上富良野のサウナでモノマネを披露したところ、後に「かみふらのPR大使」に任命される。株式会社ゆかいの代表で写真家。HP【yukaistudio.com

●濡れ頭巾ちゃん サウナシティ北海道・旭川出身。小1でサウナデビュー、小3で濡れタオルを頭からかぶる入浴スタイル(濡れ頭巾方式)を確立。好物は高温高湿、雪解け水。ブログ『湯守日記』【http://ameblo.jp/supasaunalove/】もぜひ!

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―今日はトッププロサウナーの皆さんにお集まりいただきましたが、そもそも「プロサウナー」って認定試験かなんかがあるんですか?

タナカカツキ(以下、タ) ないですね(笑)。これは暗黙の了解というのか、サウナ室に入ってきた瞬間、「この人、年季入ってんなぁ?」って人がいるんですよ。やけに肌ツヤがよくてオーラがあって。

濡れ頭巾ちゃん(以下、濡) 入ってきただけで室内にピリッとした緊張感が走る人っているよね。サウナ内の空気が締まるというか。プロサウナーはそういう存在ですね。

―その中でもトップの方々ということは、もうサウナ室内はビッシビシですね。

 ここにいるイケちゃんは今、日本で一番“回数”をこなしてるんじゃないかなぁ。“年季”ならキャリア40年の濡れ頭巾ちゃん。僕はサウナの広報担当です。

―昨今はじわじわサウナブームが広がっているようですが、なぜ今、サウナブームなんでしょうか?

 日本でサウナっていうと、これまで「オッサン」「汗」「ガマン大会」のイメージだったと思うんです。オッサンの皮膚が焼けるにおいが充満しているイメージ(笑)。

池田晶紀(以下、池) 昔のサウナって、今と違ってホントにバカみたいに暑かったですよね。中には120℃なんてところもあって、外国人からは「ジャパニーズは体をグリルするのか」ってバカにされてましたもんね(笑)。

 日本におけるサウナは、64年の東京五輪の時、フィンランドの選手団が選手村に持ち込んだのが最初。フィンランドでサウナっていうと、焼き石に水をかけてスチームする蒸気浴なんだけど、日本人はなぜかこれを曲解して「ドライサウナ」で「グリル」の方向にいってしまったんだよね。

“ととのう”サウナで仕事する人、増加中

 でも最近は、ロウリュをやってるところが全国的に増えてきたし、美容にもイイと女性客も増えてきた。

 ロウリュは店舗ごとに新しいサービスがどんどん出てきてますね。例えば、「ストレッチロウリュ」といって、女性講師がいきなりビキニ姿でサウナ室に入ってきて、すんごいポーズをとり始めたり(笑)。

 女性講師はそこそこかわいいし、こっちはほとんど全裸だからいろいろ大変で(笑)。

 ロウリュの最中にお店の人が音頭をとって全員で歌を合唱するところもある。この前は『森のくまさん』の大合唱でサウナ室がひとつになりました(笑)。最後の「ららら、ららららら~♪」で、フルチンのオッサンたちが一斉にタオルを振り回すという(笑)。

 とにかく今は、全国的に実験場というか、各施設同士が試行錯誤の営業努力をしていますよね。まさにサウナ新時代です。

■サウナで仕事をする人が増えている!?

 サウナの効能は血行改善とか疲労回復、美容とかいろいろありますけど、やっぱり一番は「ととのう」ってことですね。これに尽きます。

―ととのう、ですか!?

 我々がよく使う専門用語なんですけど、この名言を最初に使ったのは、ここにいる濡れ頭巾ちゃんなんです。

 ある時、サウナ←→水風呂を繰り返していて、その快感みたいなものが、ある一線を越えた時にふと口から出た言葉が「キモチいぃー」でも「よかったぁー」でも「清められたぁー」でもなく、「ととのったー!」だったんです(笑)。精神を調律するとか清めるとか、キモチが整理されるというイメージですね。

 血行が促進されて、脳にも酸素や血液が十分送られるから、バシッと覚醒して、でも精神は鎮(しず)まるので「ととのう」んだと思うんですよ。僕はちょっと前からサウナで仕事するようになったんです。ととのってるからか、いいアイデアが出るし効率がいいんです。最近、サウナで仕事している人をちらほら見かけるようになりましたよ。

いい仕事は「ちゃんと休んで、サウナ行け」

 よくダイエット目的の人いるけど、あれはどうかな?

 人によるんでしょうけど、たぶん太ると思います(笑)。だって、ととのった後って食事が尋常じゃなくうまいから。

 ですね。いつもの5倍くらいうまい(笑)。

 僕は睡眠の質が明らかに変わった。入眠が早いし、深くなった。まれにサウナに入れなかった日は、寝つきが相当悪いですから。

 僕は鼻炎が治りましたね。肩こりも治ったし。やっぱり長時間PCに向かってると呼吸が浅くなってきて、体も固まり、ひいては心も固まってくる。そういう意味ではサウナを欲する現代人が増えてきたのは当然かも。

 ちゃんと休まないと仕事の質も上がらないから、僕はいつも、ウチの会社の社員に「おまえ、なんでちゃんと休んでないんだ! サウナ行け!」って言ってるんです(笑)。

 会社にサウナがあればいいのに(笑)。

 ウチの会社はサウナ行かないと給料が上がらない(笑)。でも、そうすると「行きました!」ってウソつくヤツが出てくるんですよ(笑)。

 イケちゃんの会社、確か忘年会もサウナでやってるんでしょ?(笑)

 ええ、朝までサウナです。でも仕事をする上でも一回、“裸の付き合い”をする意義は大きいんですよ。フィンランドでは外交交渉をする前にまず一回、一緒にサウナに入るなんて話もあるみたいだし。

 それは確かにある。僕は普通の学校の友達なんてひとりもいなくて「サウナがともだち」だったんだけど、サウナを通じて友達ができていったからね。それは「ともだちの友達」だから(笑)。

水風呂に入るには「考えるな、感じろ!」

■水風呂こそサウナの醍醐味

―これを読んでいる多くのサウナー初心者に向けてアドバイスはありますか。

 まず、声を大にして言いたいのは、水風呂があってのサウナだってこと。プロサウナーに「サウナの爽快感」を聞いた時に「木箱の中で汗をかくこと」をイメージする人って少ないでしょ。ほとんどが「水風呂から出た瞬間のすがすがしさ」を思い浮かべると思うんですね。

 確かに、サウナだけじゃ絶対にととのわない。水風呂に入るためにサウナに入るようなもんだもんね。

 サウナで血管を開いて、水風呂で“シメ”る。この温冷交代浴の繰り返しが血流のポンプ運動になる。サウナだけだと開きっぱなしですからね。

 「どうやったら水風呂に入れるようになるか?」って聞かれるけど、冷たいと思うから冷たいわけで「考えるな、感じろ」という他ない(笑)。

 でも感じると結構、冷たい(笑)。

 確かに(笑)。僕のオススメは南の島のビーチに寝そべるイメージで、体を柔らかくして「あぁぁぁ?」って息を吐きながら入る。身構えて入ると本当に冷たいから。

 僕も最初は冷たくて入れなかったけど、今は18℃でも熱くてやけどしそうですから(笑)。初心者は足からでいいんですよ。徐々に慣れて入れるようになるから。

 僕はサウナ初心者が羨ましいなぁ。僕たちはもうガバガバじゃないですか(笑)。初めて味わった、あの感動はもう味わえない。

 聞きましたよ。最近、サウナ施設に行って館内着に着替えただけでととのっちゃって、サウナ入らないで帰ったらしいじゃないですか(笑)。

 ととのうにも程がある(笑)。でも僕も夏の猛暑の中、外を歩いてて、銀行に入ると超涼しいじゃないですか。で、また外歩いて銀行で涼んでを繰り返してると、ととのっちゃうんですよ(笑)。

 温冷交代浴だ(笑)。サウナいらないじゃん(笑)。

 それでいうと日本の四季もある意味、サウナですね。

 そう、人生はゆっくりと時間をかけてサウナに入ってるようなものなのかも(笑)。

(取材・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 撮影協力/スカイスパYOKOHAMA)

■週刊プレイボーイ12号(3月9日発売)「大特集 サウナは今、新時代へ!サウナのウワサ」より