「アスパルテームやスクラロースといった合成成分の人工甘味料入りの飲料を摂るのはおすすめしません」と言う小杉中央クリニックの布施純郎院長 「アスパルテームやスクラロースといった合成成分の人工甘味料入りの飲料を摂るのはおすすめしません」と言う小杉中央クリニックの布施純郎院長

■アメリカでは既に始まっている?“脱・人工甘味料ムーブメント”

健康志向の高まりによって、砂糖の代わりに人工甘味料を使うことでカロリーを抑えた炭酸飲料やアルコール飲料の新製品が次々に登場している。

一方、健康ブームの最先端を行くアメリカでは、人工甘味料の健康への影響を指摘する声が高まり、既に“脱・人工甘味料”の動きも出ているようだ。結果、ゼロカロリーのダイエット炭酸飲料の売上げ低迷が始まっているという。

調査会社ユーロモニター・インターナショナルの調べによると、低カロリーをうたったコーラ飲料市場は2013年に対前年比で約5%縮小しているという。逆に、通常よりもサイズの小さい「ミニ缶」(容量が約6割)の炭酸飲料は、砂糖を使ったフルカロリーながら売れ行きを伸ばしているというのだ。

つまりアメリカでは、人工甘味料で甘さを感じるよりも、量は少なくても自然の甘さを選ぶ、という傾向が徐々に育ってきているといえる。

日本でも人工甘味料の健康への影響について言及されることはあるが、まだまだ大きな流れにはなっていない。

改めて、人工甘味料が人体にどのような影響を及ぼすのかを見ていきたい。一般診療から糖尿病、高脂血症などの専門分野の診療も行なっている神奈川県川崎市にある小杉中央クリニックの布施純郎院長に解説してもらった。

「天然にはない成分を合成して作られたのがアスパルテームやスクラロース、サッカリンなどに代表される人工甘味料です。この人工甘味料の過剰摂取によって、健康への影響があるという報告が国内外の研究機関から発表されているのです」

糖尿病どころか、精子も減ってしまう?

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具体的には、どのような健康リスクがあるのだろうか。

「イスラエルの研究チームが昨年9月に発表したところによると、人工甘味料によって糖尿病になるリスクが高まるというのです」

糖尿病は、糖分の過剰摂取によって血糖が下がらなくなる病気だ。そもそも人工甘味料は、糖尿病の原因ともなる糖分の摂取を抑えるのが目的であるはずなのに、逆に糖尿病を引き起こすとは一体どういうことか。

「人工甘味料が腸内細菌のバランスを崩してしまい、血糖値を下げにくい状態にする作用があるようです。これはイギリスの科学誌ネイチャーの電子版で発表されました。また、この研究チームの追加研究では、約400人の人に対して人工甘味料がどう影響を及ぼすかも調べています。

それによると、人工甘味料を多く摂取している人は、少ない人に比べて体重が重い、または血糖値が高いという傾向も見られたようです」

事実だとすれば、健康増進どころの話ではない。布施院長によると、人工甘味料摂取による、さらに衝撃的な報告もあるという。

「多くの飲料や食品にも使われている人工甘味料のアスパルテームの摂取によって“元気な精子”が減るという報告が日本薬学会で報告されました」

糖尿病どころか、精子も減ってしまう可能性が…!?

「マウスによる実験で、毎日1回アスパルテームを投与したマウスと、水だけを与えたマウスを比較すると“元気な精子”、つまり形が正常でまっすぐ進む精子の数が、水だけのマウスでは全体の25%だったのに対してアスパルテームを投与したマウスでは16%ほどだったそうです」

人工甘味料は少子化も加速させてしまうということか。

他にも副作用の影響が!

次のページ... 「影響はそれだけではありません。ポリープの発生や目の奇形、体重の減少、骨格異常、肝臓や心臓、胃や副腎などが肥大する内臓異常、さらには脳内伝達物質に変化が起きて『うつ』を引き起こすといった副作用も発表されています。過剰摂取をすれば、どんな食品でも体に影響があります。

ただ、人工甘味料で注意すべきは習慣性があるということです。アスパルテームやスクラロースといった合成成分の人工甘味料入りの飲料を摂るのはおすすめしません」

こうした中、国内でも人工甘味料に対する新たな動きが出始めている。

今年100周年を迎えたコカ・コーラ社では、天然甘味料であるステビアを使った緑色のコーラ『コカ・コーラ ライフ』が発売され、話題を呼んでいる。またアルコール飲料のゼロ系で売れ行き好調の発泡酒『極ZERO』(サッポロビール)は、プリン体ゼロ&糖質ゼロ、加えて人工甘味料もゼロにしてリニューアル発売した。これも“脱・人工甘味料”という消費者の無意識の選択の表れなのかもしれない。

今後、ダイエット飲料はどのような進化を遂げていくのか。各社の展開から目が離せない。

(取材・文・撮影/頓所直人)