蛍光ピンクをぬりたくられたマリーシャ。「アノ人、頭から粉ふいてるし! 」なんて言ってる直後に私の頭も粉ふいた! 爆発コントか(笑)

「顔はやめてー!!」

と叫んだ時にはもう遅かった。目の前は蛍光ピンク色の世界。私はゴホゴホとむせこみ、口から色煙を吐き出した…。

ここはインド北部の町・リシケシ。落ち着いた田舎でガンジス河が美しい。インド屈指のヨガの聖地であり、アシュラム(道場)には世界中から人が集まる。あのビートルズも修行しに来てたんだって!

聖地という土地柄、お肉の扱いがなくレストランやホテルのご飯はすべてベジタリアン。ヒンドゥー教では好まれないアルコール類も一切ない。

:国内外からの観光客ももちろんバックパッカーもいっぱい! 数々のアシュラムやおみやげ屋、マッサージ屋もあるのんびりした観光地

「禁欲の町か…」

と思いきや、コーラやマサラスパイスの効いた濃い味ポテチ、チョコレートにアイスもあるので、禁欲のリバウンドか余計にガマンできず、思わずお菓子食べまくり。やっぱ、ダメって言われるとしたくなっちゃう。だって、人間だもの。カリギュラ効果てきめんです。

こりゃいかん。「私も心穏やかにヨガ&ベジの生活して身体と精神の健康を手に入れようっと」そう思った矢先のことだった。

ヒンドゥー教伝統の春を祝うお祭り“ホーリー”にぶち当たってしまったのだ!

「ハッピーホリー!」言いながら、カラフルな色粉や色水を掛け合うこのお祭りは、日本のお花見のような穏やかなものではなく、かなり攻撃的かつ防衛方法のないイベントなのだ。

数日前から販売される毒々しい色粉。奥のポスターのヒゲモジャのおじさんに目がいってしまう

ひとたび町に出れば、誰もが容赦なく色粉や色水を塗りつけてくる。顔だけでなく全身どこもかしこも。その激しさは地域によっても異なり、バラナシではセクハラまがいのことも多いとかで、特に外国人客はターゲットにされ危険なので、宿でピークの時間帯は外出禁止令が出されるほど。

子供たちは結構控えめで、狙うフリはするものの「いい? 色粉付けてもいい? 水風船投げてもいい?」と一応お伺いをたててくれる

隙をみせたらやられる! カラフル戦争

カースト制度の残るインドでもこの日は無礼講のため、日頃のストレスをイッキにぶちまけることができる。人々はそれはもう嬉しそうに楽しそうに音楽に乗って、コミカルでクネクネしたインドっぽい動きで踊り狂う。

普段、抑えこんでるものがカラフルな爆弾となり爆発! 色粉を空にまき大騒ぎ! でもこれまた地上の現場は男だらけの戦場。現地女子は建物の屋上から高みの空中戦だ。

屋上から水鉄砲で参戦する現地女性。勇気ある地上戦の女性参加者は欧米人、西洋人、そして私・日本人

子供よりタチの悪い(?)のは大人。人に色粉を付ける時は指でチョンチョンなんてかわいいもんではなく、私は両手で顔面を包まれ、ベロ~ンと顔面全部に塗りたくられた。

「あ、そんなにイッキにやっちゃう…?」

でも撫でられ系はマシなほう。ヒートアップしてくるとビンタの弱いバージョンくらいの勢いでかかってくるヤツもいる(笑)。

それに私がチビだからって、まるで塩コショウを振るように頭からパウダーをかけられたり、バケツの水が降ってきたり、容赦ない攻撃でとにかくもうグッチャグチャ!! あっというまにカラフル戦争はピークを迎えた。

「ハッピーホリー!」と言いながら、色粉を顔に塗りつけてくる人々。子供の方が塗り方が丁寧。大人は容赦ない(笑)

ちょっとでも隙を見せたらホラ、ベロン。写真もろくに取れません(笑)

しかし根は優しいインド人。目や口や鼻や耳など穴という穴にカラーパウダーが入りまくってむせる私に、洗う水を持ってきてくれたり、「大丈夫?」と声をかけてくれる。

かなりハードなお祭りだけど、どんなに汚されても怒る人はもちろんいないし、みんな笑顔で写メ撮って、携帯が濡れても気にせずはしゃぎまくり(笑)。町中の犬も、祭りを警備する警官も、バクシーシを求める物乞いも、ヒンドゥー教徒で聖なる存在の牛も、みんな仲良く色粉まみれ!

神聖と崇められている牛もやられてる。いつも堂々としているのにホーリー後は人間から逃げるようにみんな頭を隠していた。イヤだったんだね(笑)

普段、敬遠されがちのお酒もホーリーでは飲む地域も多いらしい。でもここはリシケシ。もちろんお酒は手に入りません。よくシラフでここまでテンション高くはしゃげるなと思ったけど、いや、お酒があったら危ないか(笑)。

言うまでもありませんが、私の少ない旅服は再起不能。体や髪についた色粉はシャワーを浴びてもなかなか取れませんでした。いつまでも耳の中は赤かった。

カラフル戦場で負傷し血だらけに? 生存者確認! いました! 勇気ある現地の女性参加者

ヨガで身長が2cm伸びた?

洗っても洗っても落ちない色粉を体につけたまま、祭りの後ですっかり落ち着いたリシケシの町でやっとヨガ体験。バックパックと毎日の長距離バスで縮みきった体を久々のストレッチでしっかり伸ばします。

「身長が2cm伸びますよ」とチビの私を慰めるティーチャー。目を閉じて「オー…、シャンティー、シャンティー、シャンティ~イ~…」と、インド感たっぷりのオシャンティーなマントラを唱え、精神がだいぶ落ち着きました…。と言いたいところだけど、所変わってもここはインド。

旅中の私は常に警戒態勢で、目を閉じている内に貴重品が持っていかれないかと神経を尖らせていたため瞑想にも集中できず。さすらいの旅人がヨガの真髄に触れるには修行日数が足りなすぎた。

ガンジス河沿いでリシケシの町の音を聞きながらのヨガは、リラックスして気持ち良い。もっと長期でアシュラム滞在してみたかった

ビギナークラスじゃ物足りない私は、アシュタンガヨガという激しいヨガにも挑戦。筋トレ、有酸素運動、軟体技術が織り交ざり「イテテテ! 先生! 体が事件です!」

さて、そろそろ肉に飢えてきた私ですが、当時20代だった若きビートルズだって禁欲生活には退屈してたみたい。結果、音楽とドラッグにはまりながら歴史に残る曲が生まれたってワケ。

リシケシという町は本当にリラックスできるインドでも最高の町だった。今日もベジタリアンカレーを食べ、ビートルズの曲を口ずさみ、ガンジス河に沈む美しいサンセットを見つめながら思った。

「あ~、ビール飲みたい」

インドの旗がたなびくガンジス河のサンセットは絶景

【This week’s BLUE】特徴ある青い肌のシヴァ神と。なぜかおちゃらけポーズ。顔の向きミスった~!

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】