マダイ釣りの外道で釣れたホウボウ。海底に巣くうホウボウが釣れてしまったのにはワケが… マダイ釣りの外道で釣れたホウボウ。海底に巣くうホウボウが釣れてしまったのにはワケが…

天候にも恵まれ、久々に釣りへと意気込む週プレ釣り部。今回は「一つテンヤ釣り」でマダイを釣ろうと、エンジン付きの小型ボートを予約し、何日も前から気合十分だ! しかし何やら不穏な電話が…。

*** 「今日は強風で船出せないよ、外はゴーゴー風が唸(うな)っているよ」

当日朝4時、港へ向かっている途中で来たボート屋ご主人からの電話だ。しかし、本日の天気はまったく問題ないはず。我々は諦めきれず、釣り友K氏と緊急電話相談。急遽、船宿を探しだし午後釣りへと予定変更した。

しかし、思いがけないことは繰り返す。予約した船宿も行ってみればTV番組の収録があるとのこと。ほとんど船は撮影クルーで占領されているし、非常にやりにくい。そこで少し離れた「清勝丸」に交渉し、なんとかOKが! 釣り前からテンション下がりっぱなし、何より待ちくたびれてしまった。

午後一時ようやく出船。目指すは飯岡港の真沖。狙いは、一つテンヤ釣法で大型のマダイだ!

実は、一つテンヤ釣りは今回が2回目になる。1回目はこの釣り発祥の地の大原で教わった。初めてにもかかわらず、あれよあれよという間に小鯛を5枚あげることができた。意外と簡単だと思っていたが、一度だけ大型の何かが掛り悪戦苦闘の末にバレてしまった。たぶん大きなタイだったはず。その時のことが脳裏からなかなか離れず、近いうちにリベンジしようと決めていたのだ。

港を出てから1時間くらいでポイントに到着。この一つテンヤ釣りは、広くて根の変化の少ないポイントを静かに、長く釣る方法。魚群探知機で魚の群れを追いかけたり、撒きエサで魚を集めるわけではない。自分のテンヤを獲物に気づかせて攻める。言い換えれば、のんびり自然と戯(たわむ)れ、シンプルな道具で魚と対峙する奥の深い釣りなのだ。

海底はホウボウに分があり?

 視線は竿先に、手の感触でもマダイの食いつきを感じ取れるようしっかり握る 視線は竿先に、手の感触でもマダイの食いつきを感じ取れるようしっかり握る

K氏が右舷の艫(とも)で、私がその左側5m離れた胴の間に釣り座を構えた。水深は35m、潮はあまり流れていない。最初はタングステンの8号で赤金色のテンヤを使用。1投目はPEラインがまだ乾いているので落ちる速度が遅い。4色目が半分くらい出たところでラインが止まった。竿先になんの抵抗も感じない。着底だ。ベールを戻し、巻きながら余分な糸ふけをゆっくり取った。もう一度、ベールを倒し、落下させ再度底を取る。底取りができた瞬間だ。

PEラインは4色目が少し出たところで止まっている。従って、3mリーダー+4色チョイだから、ライン全体はちょうど43m出ている。水深が35mなので8mの余分な糸ふけが出ていることになる。この位置をしっかり記憶しておくことが大事なのだ。

船の上下の揺れと若干の根の高さを脳裏に感じながらゆっくり竿をシャクった。自分の視線の先は穂先と細いライン。ふたりとも黙ったまま手感度・目感度がフルパワーで働いている。

最初の魚信(アタリ)は艫のK氏にきた。ちらちら横目で見ながらも私の手はゆっくり上下に動いている。上がってきた獲物はホウボウだ。まぁまぁサイズ。

 色鮮やかなホウボウの胸ビレは、海底から離れて泳ぐ際にはこのヒレを広げて滑空するように泳ぐ。また危険が迫ったときの威嚇(いかく)としても活躍する 色鮮やかなホウボウの胸ビレは、海底から離れて泳ぐ際にはこのヒレを広げて滑空するように泳ぐ。また危険が迫ったときの威嚇(いかく)としても活躍する

私は相変わらず。エサのチェックは既に何回かしている。もうすでにエサは3度付け替えたものだ。エビの頭は無くなっているのだが、なかなか魚信がわからない。

今度は手が上に伸びきった時に10秒くらい止めてから一気にふわっと落とした。すると底に着いたと同時にググッと小さな魚信だ! すぐに竿を立てると小刻みなレスポンスがあり何かが掛かった。時折、魚が鋭角に突っ込むが大きくはない。ほどなく水中に赤い色が見え、上がったのは予想した通りの小鯛だった。

アタリを拾うポイントは?

しかし、そのあと魚信が無い、少ない、小さい。それとも当たっているのがわからないのだろうか? 明確な魚信がないと一気に合わせづらいのだ。極小の違和感があっても手が即応してくれない。

底が取れれば、後はどのようにして魚を誘うかだが、この魚は季節や場所によって誘い方も道具も変わってくる。一度底どりができたと安心して、海底付近をコツコツとテンヤを跳ね上げながら釣ってはいけない。底にタイが張り付いて食うこともあるが、先ほどK氏が釣り上げた底物のホウボウや根魚などが先にアタックしてエサのエビを奪われてしまうのだ。

底からだんだん離れていくと、魚信は減るがタイが追いかけてくるかもしれない。この動きの間にちょっとだけコツコツッと前触れがあり、その僅かな瞬間、手を止めて食わせの間を与える。そして、針を咥えこんだタイミングで電光石火のアワセをくれてやる。春のタイは上層までの誘いが重要なのだ。

また、基本的にエビを躍らせてアピールしたり、エビが海中を逃げまどう姿をイメージして誘うのが一つテンヤ釣りの醍醐味なのだ。ただタナで待っている人と、エビになったつもりで手を動かしている人では釣果に差が出ることは言うまでもない。

ともかく、魚信がなければ釣れないのだ。その感覚をしっかり捉えなければエサだけ奪われてしまう。基本に立ち返り、焦りも落ち着かせて再び釣りに戻った。

(4月12日配信予定の第3回に続く)