愛知県発祥のコメダ珈琲店が国内でも606店舗まで展開し首都圏進出後も大ヒット。
それに負けじとドトールコーヒーは「星乃珈琲店」、ルノアールは「ミヤマ珈琲」と新ブランドを郊外の住宅街で新規参入させ、さらに今年3月にはすかいらーくが「むさしの森珈琲」を横浜市南区の超マイナーな住宅地のど真ん中にオープン。
どの店舗も大型で駐車場完備、開店時間は早朝でモーニングサービス付き、単価高めで長居大歓迎というコンセプトで競い、大バトルの様相を呈してきた。
そもそも、こんなに急増するほどニーズがあるのか? 「カフェと日本人」(講談社現代新書)の著者で喫茶店の歴史に詳しいジャーナリスト、高井尚之さんに人気の背景を聞いてみた。
「やはり大きな理由は自宅のリビングとは別の“くつろぎの空間がほしい”と願う消費者心理にマッチングしたことが大きい。郊外に自宅を構えるシニア世代の男女や主婦層、おひとり様のノマド族や週末のファミリー層など様々な客層のニーズに合っていると言えます」
でも、くつろぐだけだったらファミレスでも良いはず。大型珈琲店が選ばれるメリットはなんなのか?
「ファミレスは食事をしに行くところですが、大型珈琲店を選ぶ多くの消費者の心理は“会って話をするところ”なのです。80年代にカウンターでコーヒーを受け取る“セルフ型”のドトールコーヒーが、90年代に同じくセルフ型のスタバが登場以降、店員が注文を取る“フルサービス型”の喫茶店が駆逐(くちく)されましたが、近年はそれが復活してきました」
では今、競争が激化しつつある人気店のサービスの特徴はというと?
「人気の原型を作ったのは1968年に開業したコメダ珈琲店。近年参入したミヤマも星乃もコメダを真似ています。くつろぎを重視した店内の雰囲気にソファ席などの座席の設置、パンものを中心に豊富に揃えたフードメニュー、自由に読める雑誌や新聞が店内に用意されているなど…珈琲そのものの味を楽しむよりも、思い思いにくつろげる昭和の喫茶店に近い雰囲気です」
忙しすぎてマスコミもシャットアウト!
そこで実際に、コメダ珈琲店を利用するお客さんに話を聞いてみると…。
「今日は仕事だからスーツだけど、普段、コメダは家族で行く時も友達と行く時もスッピン&スウェット。このユルさがいいんだよね。オシャレなカフェはスッピンじゃ行けないし」(平日昼に仕事の合間に来ていた風の20代OL)
その他、「基本、店内は騒々しいからママ友とお金のやり繰りの話はもちろん下ネタまで大声で喋れるのがいい」(30代ママ)、「コメダのソファはフカフカで落ち着く。いろんな週刊誌が読めるのもいい」(30代会社員)など、やはりコメダのくつろぎのサービスに満足のようだ。
実は記者も自宅近くにできた「むさしの森珈琲」をノマド使いはもちろん、家族連れでも週2、3回は利用するヘビーユーザー。新規参入で大注目なワケで、これはぜひ取材を!と、すかいらーくグループ「ニラックス」に連絡したところ、
「現在、多数の取材依頼を頂戴致しておりまして順次対応させていただいているのですが時間がかなり掛かる見込みでございます」とのことで丁重にお断りされてしまった…。それならばということで、星乃珈琲店にも取材申し込みをすると、こちらも「現在、かなり忙しい時期なので対応不可」とのお返事が!
マスコミ対応もやっていられないほど大忙しなのか? そんな中、コメダ珈琲店とミヤマ珈琲は取材に応じ、店の特徴を語ってくれた。まずは、コメダ珈琲店の広報ご担当さん、お願いします!
「私たちが大事にしていることに“くつろぐ、一番いいところ”を提供するということがあります。出入りしやすい駐車場、木とレンガを基調とした温かみのある店内、ゆったりとしたソファー、数多くの新聞や雑誌類など、お客さまにゆっくりとくつろいでお過ごしいただけるお店づくりを心掛けています。
現在、北は宮城、南は熊本まで出店しており、既存店舗のサービスレベルの維持・向上をしつつ、当面は国内1千店舗を視野に展開して参ります。また、変えてはいけない伝統は守りつつ、進化の必要があるサービスについては年末年始に展開していたシロノワールの新しいフレーバーのように随時、提供して参ります」
全国各地で注目すべき珈琲店が!
次に、都内と埼玉県に直営店4店舗とビルイン型の店舗1店を開店したミヤマ珈琲の広報さんはどうでしょう!
「当店では喫茶店のマスターが丁寧に抽出するハンドドリップ手法を忠実に再現したオリジナルネルドリップ専用コーヒーマシンを使用し、コーヒー本来の味を十二分に引き出しています。また、講師を外部よりお呼びし、週に3~4回ほどコミュニティサークルを開催して地域の交流の場にご活用いただいています。
例えば、アクセサリー教室やiPad教室など。ペット同伴可能なテラス席もご用意するなど幅広いお客様に愛されるお店を目指し、2020年までに国内で100店舗展開を目指しております」
どこも攻めてる感じで勢いを感じます! 最後に前出の高井氏に今後注目すべき珈琲店について聞くと…。
「愛知県と並ぶ喫茶好き・岐阜県発祥の『元町珈琲』は、2004年創業ですが店舗を増やしています。また札幌発祥の『宮越屋珈琲』も銀座や目白に進出していますね。山陰地方では島根県と鳥取県に『服部珈琲工房』という店舗があり、各店で違う産地の珈琲をオススメとして出し根強い人気です」
この他、千葉発祥の「ピースコーヒー」に大阪の「ヒロコーヒー」と各地域に根付く珈琲チェーン店の存在も見逃せないとか。暮らしに“くつろぎ”を与えてくれる、特色ある店が増殖し、ますます楽しめそうだ!
(取材・文/河合桃子)