ひとつ上を目指すビジネスマンにとって、疲れをため込まないのも大切だ。
しかし、週プレ読者にアンケートをとったところ、54・5%が「ほぼ毎日疲れている」という残念な結果に。そこで、「ビジネスマンの疲れ」のスペシャリストである、ふたりの医師にご登場いただこう。
『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』がベストセラー中で医師・MBAの裴英洙(はい・えいしゅ)先生と、ベンチャーから大企業まで約30社の産業医を務める大室正志(おおむろ・まさし)先生に疲れと眠気のコントロール術を教えてもらった。
■疲労には3種類あった!
裴 働く男性がまず知るべきは「自分は何に疲れているか」。疲労には3種類あります。ひとつ目は“肉体的疲労”。筋肉に疲労物質がたまったり、エネルギーが不足したりする状態です。ふたつ目は“精神的疲労”。人間関係のストレスによる心の疲れ。そして、3つ目は“神経的疲労”です。
―神経の疲れは初耳です。
裴 例えば、長時間のパソコン作業などで目の神経や脳が疲れた状態ですね。
大室 あと、ちょうどこの新年度が始まる季節に特に増えるんですが、新しい異動先や転勤先や研修などで緊張状態が続いて、やたらと眠くなったりすることも「神経の疲れ」といっていいでしょう。
裴 精神や神経が疲れている人がサプリをとっても疲労は改善しません。だから、まず自分の疲労の中身を知ることが第一歩です。
大室 女性には月経があり、毎月、イヤでも自分の体調と向き合う機会があるので、医師に対しても原因がわからない自分の疲れ―これを不定愁訴といいます―を説明するのが上手です。それに対して男性は基本的に自分の体調と向き合うことがものすごくヘタ。昨日まで動いていた体は明日も同じように動くと信じている人が多い。でも人間はロボットじゃないんですよ。
寝る前スマホが最悪の理由
―わかるなあ。
大室 うつ病にかかる率は男性より女性のほうが高いのに自殺率は男性のほうが高い。つまり、女性は本当に危ないところに行く前に自分で気づくけど、男性は自分の内なる体調の変化に耳を傾けず重症になるまで放っておく。
―危険ですね…。
大室 多くの場合、「達成感」が疲れを覆ってしまうんです。徹夜でゲームをしちゃう感覚にも近いけど、自分の疲労の深刻さに気づかず突然死することもあるわけです。
裴 そのためにも日頃から疲労をリセットしていかないといけない。そこで最も効果的なのが睡眠です。
―何時間寝たら疲れは取れるものなんですか?
裴 睡眠には質と量があります。「たくさん寝たのに疲れが取れない」「短時間睡眠だったのにスッキリした」みたいなことありますよね? 必要な睡眠時間はよく7時間といわれますが、これも個人差が大きい。まあ、平均5時間を割るとさすがに量が不足なので生活を改めるべきですが、軽視されがちなのが睡眠の「質」です。そして「質」は寝る前の行動に大きく左右されます。
―寝る前が大事と?
大室 人間が眠くなるのは興奮状態の時に活性化する「交感神経」が抑えられ、リラックス時に活性化する「副交感神経」が優位になるときです。なので、交感神経を寝る前に刺激しないのが質の高い睡眠を取る基本です。そこで非常によくないのは、“寝る前スマホ”。
―毎日やってますが…。
裴 特に暗い部屋ではライトの明るさが視覚に強い刺激を与えるし、小さい画面を見つめ、触って、自分から情報を探しにいくので交感神経が非常に活発になります。
スマホを見たらオナニーをしろ?
―じゃあ電子書籍もだめ?
大室 カラーの画面よりは視覚的な情報量が少ないから、まだマシですね。
―“寝る前スマホ”でエロ動画見てオ●ニーは?
大室 射精の後は副交感神経が優位になりますね。
―じゃあプラマイゼロになりますね。寝る前にスマホを見たらオ●ニーをしろ!と(笑)。…では、テレビはどうですか?
裴 情報が受動的に入ってくるし、離れて見るのでスマホよりはマシですね。
大室 ただし、朗らかな笑いが副交感神経を活性化させるのに対し、爆笑は交感神経を活性化させてしまう。
―理想は『笑点』ですか。
大室 夜中はやっていませんが、でもそういうことです。あと、蛍光灯の明るさもよくないです。できれば寝室は電球や間接照明にしたほうがいい。蛍光灯は職場や学校などの環境には適していますが。
裴 あと、忙しくて夜7時や8時とかに夕食を食べ損ね、寝る直前にドカ食いをしちゃうビジネスマンは多いですが、これはやめるべき。消化活動が続くために眠りは浅くなるし、食べ物が胃に停滞した状態で横になると、胃酸が食道に逆流してしまいます。寝起きに胃がムカムカするのは、このケースが多いです。それが悪化すると逆流性食道炎という病気になることもあります。
―ではお酒は? ぐっすり眠れる気がするんですが。
裴 お酒の酩酊(めいてい)効果はあまりオススメできません。寝つきがよくなるので、ぐっすり寝たように勘違いしてしまうのですが、実際は眠りが浅く、体の疲れは取れていないことが多いんです。
(取材・文/高篠友一 黄 孟志)
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