「なんじゃ、こりゃあ~!」
と昭和の名優、松田優作ばりに叫びたくなる幾何学(きかがく)模様は、絵画でもだまし絵でもCGでもなく、なんと井戸。井戸ってあの薄暗くて底の見えない落ちたら終わりのアレじゃないの…?
でも、インドにはこんなに芸術的な井戸があったんです。貞子もビックリの階段タイプ。これなら登りやすいね! まだ観光客に侵されていない世界の絶景ここにあり。
インド北西の街・ジャイプルはデリー、アーグラと三角形に結ばれた“ゴールデントライアングル”のひとつ。ローカルバスとオートリキシャを乗り継ぎ、階段井戸「チャンドバオリ」のあるアブハネリー村を目指しました。
途中の高速料金所ではリキシャの兄ちゃんに「高速代50ルピーね。早く!」とヒンドゥー語でまくしたてられる。一瞬、躊躇(ちゅうちょ)するも、高速の料金所だしサッとお金を差し出すと、兄ちゃんはその50ルピーをスッと自分のポケットに入れた。
「なんでやねん!」
全力でツッコミたいボラれ方をしながら到着。
深さ約30m、13階層、3500階段のチャンドバオリ。鳥の鳴き声しかしない静寂な田舎村にド迫力の存在感。井戸とは思えぬスケールと幾何学的な造りを、角度を変えて眺めては感動。こんなに見応えがあるのに入場無料! インド人もビックリ!
帰り際、村の少女が手を出し大えばりでこう言った。「チョコレートちょうだい! チョコないならマネーちょうだいよ!」
そういえばバラナシでバクシーシを求めてきた子供たちに飴をあげたら満足そうにその場から離れていったっけ。むしろ、お金より嬉しそうな顔。こんな時のために、ポッケにはいつもお菓子を入れておこう。しかしポッケに入れると、ついつい自分で食べてしまうマリーシャでした。
“ピンク・シティ”と呼ばれる意味は…?
ジャイプルのシンボルは「風の宮殿」。1799年に当時のマハラジャが宮中の女性たちのために造らせたもので、旧市街にドドーンと現れたその宮殿は、正面の迫力からは想像もつかないほど奥行きがなく薄い、まさに風に倒されそうな建物。
さては正面だけ豪華にしてハリボテ的な造りなのか…と思えばそうではなく、小窓が953あって風通しの良い構造。その小窓から宮中の女性たちが姿を見られないように街を眺めていたそう。インドの街中は圧倒的に女性の姿が少ないけど、みんな窓越しに外を見てるのかな。
風の宮殿も含め、城壁に囲まれたジャイプルの旧市街は“ピンク・シティ”と呼ばれ、建物はピンク一色に統一されている。オレンジがかったピンクと青空のコントラストが美しい街に見とれていると…、ん? 男性同士、手をつないでいる姿が!
しかも、おじさん! よく見るとカップルは一組ではなく他にもいらっしゃる! ここってそういう街なの? まさかピンク・シティってそういうこと?
要らぬ腐女子的発想をしてしまいましたが、インド人の友達に確認すると、それは“友情の証”らしい。
暑くて汗ビッショリなのに男同士で手をつなぐなんてビックリ。でも“仲良し”って思ったら、なんか微笑ましい。街中では男同士でジャレあってる姿もよく見かけるけど、少年のままみたくてかわいいかも。
インドの列車のナゾ
見所いっぱいのジャイプルは世界遺産だってある。その名も「ジャンタル・マンタル」! カッコいい!
1728~1734年に建設されたそれは、インドで最大の石造りの天文台。広い敷地のあちこちにすべり台のようなものがあるけど、遊具ではなく、日時計から占星術の観測儀まで、まさに天体観測の道具の数々。今でも現役で使われてるんだって。
さてジャンタルマンタルよ、おとめ座マリーシャの運勢はいかに。
満足の観光を終え、すっかり慣れたインドの列車で移動しようと駅に向かうと今日も明日も満席。
ガーン。しかし、ここからがインドの不思議。インドの列車は満席でも乗車券を販売している。それはWL(ウェイティングリスト)と呼ばれ、要はキャンセル待ちのこと。人気路線ではインド人が何日も前から乗車券を押さえ、必要なければ土壇場でキャンセルするんだとか。
「はい! キミはあと300人待ちだよ!」
えええ? 笑えるくらい絶望的な数。発車数時間前まで結果を待つ気分は、まるで受験の合格発表みたいにドキドキ。しかし、またしてもインドの不思議。次々とキャンセルが出て、私も候補圏内に入ってきたかと思うと、合い席という形で列車に乗せてもらうことができました!
さすが乗車率200%という数字をたたき出すインドの列車。券は売るだけ売って、最後まで本気で乗りたいヤツは乗せてやる的な発想、お見事!
【This week’s BLUE】 気になる屋台飯。こちらはポハと呼ばれるライスフレーク。刻んだ野菜とスナックをのせて召し上がれ。味はというと、これがオイシイんです。言うならば、タコライスって感じのインドの軽食
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】