ナマステッテー! 「ここはどこ? 本当にインド?」 そう思ってしまうほど他の町と決定的に違うのは、まず“露出度の高さ”。
今までのインドの町では、ヒンドゥーの教えから“はしたない”と見られるためノースリーブで肩を出したり、ショートパンツで足を出したりすることはできなかった。特に女性は身の危険もあるというので、私もなるべく肌を隠し目立たないよう地味な格好を心がけていた。
しかし、ここ南インドのゴアはかつて“ヒッピーの聖地”と呼ばれた、アラビア海に面したビーチエリア。1960年代のヒッピームーブメント全盛期には世界中からヒッピーが集まってマリファナを吸い、音楽を聴きながら裸で踊っていたという。
そんな土地だけあって、ついにこれまでのインドの常識を無視した、ケツ出しスタイルの欧米人たちが現れた! 欧米レディースはお尻を太陽に向けて日焼けや読書を楽しんでいる。その一方、インド女性のビキニ姿はやはり全く見かけなかった。
私もついに今までの暑苦しい服を脱いでノースリーブに。溶けるような暑さのこの町で、やっと薄着で過ごせる開放感。カンカン照りの太陽が気持ちいいー! ここで旅の服を一挙、洗濯だー!
日々移動の旅人は、下着以外の服は毎日洗濯できない。だって大きな洗濯は絶対的な太陽パワーがないと、水道でゴシゴシやってギュっと絞って干したところで半乾きの悲しい結果が待っているから。
旅友にもらった洗剤「アタック」をいつ使おうかと楽しみにしていた私。ついにここで開封すると、洗濯物は魔法をかけたように“驚きの白さ”に! ていうか、洗った水が“驚きの黒さ”に(笑)! 私の洗濯物にはインド旅の汗と涙と砂埃が詰まってました(笑)。日本の洗剤、万歳!
ゴアにもあった“ドライデー”
これまで周ったインドと何もかもが違う“ハッピーインド”ゴア。お酒も簡単に手に入り、世界から集う外国人たちは昼間からビールを片手にゆる~く過ごしている。
町はの~んびりとした田舎で、点々と並ぶお土産屋からは「ジャパン~? カワイイノ服トッテモヤスイヨ~。・・・マリファナ? ハッパ?」と声がかかる。「私は毎日のカレーでスパイスハイなので結構です」と丁重にお断りした。
週一で行なわれている大きなマーケットでは、ハンモックや衣類にバッグにアクセサリー、雑貨、スパイス、アーユルヴェーダ的なドクターに相談して調合してもらう謎の薬品(?)まで、いろんなものが売っている。
焼きとうもろこし屋は、日本でバターや醤油を塗るように魔法のスパイスと砂糖をかけ最後にライムをこすりつけた。
「何、これ! モジャなんですけど!(おいしい!) こりゃー絶対、ビールがピッタリだ!」
ビーチを眺めながらおいしい屋台飯とビールはたまらんだろうな。急いでビールを手に入れよう。甘辛スパイスの効いたインド式の味付けに舌をしびれさせていると、なんとその日は偶然にも“ドライデー”といってお酒を販売してはいけない日。小売店もスーパーのお酒売り場もアルコール類は全部布や新聞紙で隠されていた。
「なんて日だ!」。なんでもOKそうなゴアだけど、国で決まってるなら仕方がないよね。けど、レストランによってはこっそり出してるところもあったよ(笑)。
強制的に休肝日ってことでチャイをすすっていたら、こんなお誘いを受けた。
「明日、近くのホテルのプールサイドでパーティーがあるからおいでよ」
おっ、これはヒッピーたちが集ってくる匂いがするね。是非ともそのパーティーとやら行かせていただきましょう。
年季の入った長老ヒッピーたち
翌日、ズンドコ重低音のする方へ向かうと、パーティーはすでに始まっていた。
プールの周りでは人々が激しく踊り狂い、紐の先に火のついたポイという遊具を振り回したり、怪しい煙をくゆらしながら、それぞれの世界に陶酔している。ゴアにこんなにいっぱい人がいたんだというくらい田舎町に潜んでいたヒッピーたちが集結。
ヒッピーといえば若者だけに許された文化だと思っていたけど、ここに来ている若者たちは普通の観光客が多く、現在ゴアにいるヒッピーと呼べる人はキャリアの長そうな40~50代が目立ち、中には60代くらいの人もいた。
ブーツにレザーなどのハード系サバイバルファッションでワイルドな人が多い。若い頃にはかなり鍛えあがった体だったであろう、今でも割れた筋肉を見せ付ける。
年季の入ったタトゥーは、日に焼け、歳をとった肌とともに少し歪(ゆが)んでいるようにも見えたけど、白髪が混ざろうが額にシワが増えようが、ヒッピー魂フォーエバー。
世界の至る所にヒッピーの聖地と呼ばれる場所はあるけど、ここゴアが一番の貫禄だった。しかし、やはりインド人のヒッピーは見かけず、ゴアの長老ヒッピーたちはここに骨を埋めることを選んだ外国人なのだ。
私は世界にさらなるハッピーライフを求めるため、洗濯物がカラカラに乾いたらこの町にさよならを告げよう。
「ゴアを愛したヒッピーたちよ、ありがとう。聞いてください。ボブ・マリーシャで”ONE LOVE”」
【This week’s BLUE】 アンジュナビーチのサンセットはまるでリゾートにいるかのような気分にさせられる。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】