「スマホに頼ってばかりいると、いざという時に自分のアタマで解決策がなくなってしまう」と加藤医師

本来の品質や性能が悪くなることを「劣化」というが、恐ろしいことに“男の劣化”は30代からもう始まっているという。

方向音痴じゃなかったはずなのに、近頃よく道を間違える。人の名前が覚えられず、仲間と話をしていても人名がすぐに出てこない。社内では誤発注をやらかし、大損害…。まさかの大ボケ連発! もしかして、脳が劣化している!?

株式会社「脳の学校」代表取締役で医師・医学博士の加藤俊徳(としのり)氏に聞いた。

■脳を使わないから劣化が進む

30代で脳が劣化したと感じている人は、その考え方自体にボケの原因があります。そもそも、「20歳になったら成人する」なんていう発想が間違い。脳が成人式を迎えるのは30歳くらいです。

本来、20代の10年間が人生で生きていくための勉強を一番するべき時期。そんな時に「週プレ」を見ながら酒をかっくらって、頭の中をぷわ~っとさせている人たちは、一刻も早く「それじゃまずい」と気づいてください。

そもそも、ボケるほど脳みそを使っていないでしょ? 脳を育てていないことが劣化の最大の原因なんです。

「どうせオレは、三流大学しか出ていないし…」

そう思う人は、そうした考え方から改めないと。わずか10年ほどの学習で自分の脳みそを評価するなんて早すぎです。まだ自分の脳に何もなしてないのに自分を低く見積もっていると、先にはボケだけが待っています。

脳を育てないと危険なのは、欲求が劣化していくからです。20、30代で「週プレ」のグラビアを見て「ウォォォ」と思っていた欲求が、40代になった男性はなんで消えてしまうのでしょうか?

それは、男の欲求は劣化していくからです。欲求の劣化は将来、自分の脳を萎縮させ、うつを引き起こし、それが引きこもりにつながり、先細りの人生をつくっていく。脳を育てていかないと恐ろしいことが起こるんです。

必要な情報は自分で取りに行け

■スマホ依存症が劣化を招く!?

脳は、自分の目指す方向に適応しようとする能力が非常に高いものです。例えば、難しい問題を解決するためには自分の脳を成長させて形を変えていきます。

ところが「オレって、こんなもんだな」と諦めた瞬間、脳を成長させる必要がなくなる。脳みそを使わなくなった途端、自分で自分の劣化を始めさせてしまいます。

なんでもスマホで調べるのもやめたほうがいい。情報を早くつかめる一方、脳を使わない行為だと自覚してください。ネットで調べたら、その間のプロセスは全部なくなってしまうわけですから。

スマホで調べてすぐに答えを得る習慣が染みつくと、30代からアイデアが枯渇し、壁にぶつかると思います。自分で動いて調べるクセがないから物事を深く見られず、先読みできないで空気も読めなくなる。20、30代の読者がやるべきは、自分の脳の“強化書”をつくること。要は、自分に必要な情報は自分で取りに行けということです。

大事なのはリアル体験。リアル体験が少ないと直感的に行動できなくなり、危機管理に弱い男になります。そうして、うつになりやすくなる。

読者の皆さんは安易にスマホに頼らず、なんでも自分の目で確認する「肉体派」になってください。

(取材・文/宮崎俊哉 中島大輔 名須川ミサコ 大竹良 撮影/宮崎俊哉)

●加藤俊徳(かとう・としのり)株式会社脳の学校代表取締役、医師・医学博士。脳画像解析の第一人者で、胎児から100歳を超える高齢者まで1万人以上を解析。『脳の強化書』(あさ出版)、『脳科学的に正しい英語学習法』(KADOKAWA)など著書多数