恐ろしいことに“男の劣化”は30代からもう始まっているという。
あんなに好きだったトンカツ、特盛り牛丼、ドカ盛りラーメンを完食できず残してしまった…。ガツガツ食っていたあの頃のオレはどこに行ったのか?
そんな“内臓の劣化”を食い止める方法を、高野医院院長である高野英昭医師に聞いた。
■内臓の劣化は体の悲鳴だった
読者の皆さんも心当たりがあるでしょう。30代というと、まだまだ自分の健康に自信があって定期健康診断を受けない人が一番多い年代です。
また、健診を受けたとしても「再検査」や「治療の必要あり」と指摘されているにもかかわらず「誤差の範囲でしょ」「医者は儲けようとして大げさに言っているだけ」…などと自分に言い聞かせ、放置してしまう人がほとんど。
多くの人は体がヤバイとわかった時、「つい最近、検査の直前に悪くなったのだろう」と勝手に思いがちですが、実際はその時点ですでに病歴数年、中には十数年という場合もあります。
最近は10代でも約2割の人の悪玉コレステロール値が大人の基準を超えていることを考えると、30代で病歴20年という人もいるでしょう。そして重い病気になる人も珍しくありません。
二日酔いするようになったり、こってりした脂っこい食事を受けつけなくなったりするのは体が悲鳴を上げているから。内臓の劣化が始まっているサインを見逃さず、すぐに検査を受けてください。
加齢によって劣化するのは腎臓、血管です。肝臓は再生能力があるので加齢だけで劣化することはありませんが、胃とともに長年の暴飲暴食、中でも高脂肪食に耐えられなくなってきます。
さらに、30代になると誰でも基礎代謝が落ち、10代、20代と同じような食べ方をしていたら当然太ります。太ると病気になるのではなく、太っていること自体が病気なのです。
かつての豪快な“男メシ”を目指せ!
それを防ぐ兆候を無視し、そのまま若い頃と同じ食事を続ければ、肥大化した脂肪細胞が悪さをして心筋梗塞(こうそく)、脳出血、脳梗塞、糖尿病、がん、認知症へと一直線です。
考えてもみてください。外敵がいない環境で他の種を食べまくる、それが今の私たち人間です。生きていくために必要な量を超え、欲望を満たすために動物を殺し、食べ尽くしていたら長生きはさせてくれません。ムダに太った人間は自滅していく。それが自然の摂理では。
変えるなら、内臓劣化のサインが出た今。動物性脂肪のおかずを減らし、ご飯など主食の炭水化物でおなかを満たしましょう。最近流行っている炭水化物抜きダイエットは、炭水化物の代わりに備蓄していた脂肪を燃やすため、確かに一時的にはダイエットになります。
しかし、脳は同時に「飢餓状態で危ないから動くな!」と体に指令を出し基礎代謝を落とします。そのため当然、リバウンドします。
脂っこい食事が苦手になった“内臓の劣化”をマイナスではなくプラスと考えて、30代からは丼に大盛りのご飯が定番だった、かつての豪快な“男メシ”を目指しましょう。
●高野英昭(たかの・ひであき) 高野医院院長。東北大学医学部卒。内科学会認定医。消化器病学会専門医。がんや生活習慣病予防対策、子供の食育などをテーマに各地で講演会、シンポジウムなどを行なっている