午後は梅雨の合間の晴れ空に。雨天中止で釣りに水を差すわけにはいかない

「活きエビの泳がせ釣り」「一つテンヤ釣り」という伝統釣法vs最新釣法でマゴチ釣りに挑む、週プレ釣り部。古くからの知恵か、培った知識の集大成か…。果たして、釣れるのはどっちだ!

***千葉県の富津港。この日の海況は朝方北西の風4m前後、波高は0.5m前後、午後からは穏やかになる予報。潮は大潮、午前の満潮が3:54、干潮が11:22。空模様は曇りで沖釣りには何も問題なし。午前6時、予定通り川崎丸1号船(マゴチ)は港を岸払した。

ほとんど波のない海上をゆっくり進む、この辺りの海は浅瀬が続くので、澪筋(みおすじ・船の航路)には沖に向かって目印の竹が刺さっている。沖に出ると第2海保を左手に見ながら20分くらい走り、ポイントに到着。少し離れた所には貨物船やタンカーがゆっくり動いている。

水深15m。今日の潮は若干濁っている。第1投を投げると、オモリが底に着いた瞬間、ゴツっゴツっと魚信(アタリ)がでた。この時は合わせてはいけない。まだ口に咥えただけだ。

息を飲み次のアタリを待つ。この瞬間がたまらなく面白い。竿先を少し送り気味に下げ、食い込みを誘う。そして、またゴツっゴツっ! さらに竿先を下げる。もう船べりに穂先が着いてしまいそうだ。

どうしよう? そろそろか? 次の魚信で合わせよう。…そりゃーぁぁぁあ! 力いっぱいの鬼アワセで大きく竿をしゃくったが…すぽっっ。あっ! あぁ~あ、抜けちゃったぁ~! 「もう少しでしたね~抜けちゃいましたか(笑)」と安心した様子で励ましてくるK氏が憎らしい。

マゴチに持っていかれた活きエビ

“伝家の宝刀”登場!

マゴチはヒラメと同様に、最初にエサを咥えて少しずつ飲み込む。ヒラメ40、マゴチ20などと言われ、じっくり食わせてから合わせるのがセオリーだ。1投目から痛恨のバラシ!あと5秒待てば良かったのだろうか。巻き上げると当然のごとくエサがかじられて、半分にちぎられている。「これだから面白いのだ」などと、自責と快感が混じった複雑な思いがこみ上げた。

コクピットから見ていた船長も「スッポ抜けた? 今のマゴチは魚信が少ないからアワセはじっくり大事にね! 早アワセは厳禁だけど、待ち過ぎてもエサだけ取られるしなっ! この加減が難しいんだよ」と、周りにも聞こえるようにアドバイスしてくれた。

しかし結局、この最初の流しでは誰も釣れず、再度ポイントに。再開すると、左舷艫の人の竿が曲がり、本命が掛かったようだ。船長が素早く玉網ですくうと、まぁまぁサイズのマゴチだ。ここからは見えないが右舷艫の人も釣れた様子。艫の席が当たっているようだ。それでも全体的に魚信が少ないのか、何回か移動。船上はフィーバーまではいかない。

さらに、海面には浮遊物がたくさん流れて来た。海藻、クラゲ、レジ袋などのゴミを海面に出ているラインを動かしてかわそうとすると魚信が取れない。エサが不自然に動いてしまい食わない。そんなのが次から次に帯状になって流れてくるのだから、釣りづらいこと極まりない。

この日、K氏はローライトの朝方はアピール度の高い、金色やピンク色のテンヤを釣っていたが、なかなか魚信が出ていなかった。魚信があってもフッキングしない。そんな中、K氏が満を持して取り出したのは最も縁起の良い、黒いオーバルテンヤ。

そう、以前のタイ釣りで悪環境の中、見事タイを釣り上げた“伝家の宝刀”だ。おっ! ついに出したなっ! この黒のオーバルテンヤの特徴は、黒色といっても艶(つや)のあるマットブラックという色だ。つまり光らない黒だから、エビのシルエットだけが浮き出る。

その実力は確実なのか!?

早速投げ入れるK氏の様子を見ていると、船体近くのゴミを避けて、遠くへキャストしている。これならゴミをかわし広範囲に探れる。

そして、な、なんと1投目にアタったようだ。恐ろしや“ブラックオーバル”! 竿は満月状態でリールが巻けてない。でかそうだ。すぐに船長がコックピットから下りてきて、玉網を構えた。見えた、マゴチだ、でかい! 何度もバシャバシャ抵抗し暴れたが、無事ネットイン! ついに出ました! 60cmオーバーの本命・大型マゴチだ。

静寂を破ったそれはアンコウを彷彿(ほうふつ)とさせる大きな頭部、筋肉質の胴体、まさに海のプレデターだ。今まで見たことのない大きさで、やるなぁー! その数分後、またまたK氏の竿が曲がっている。マゴチ特有のゴンゴン引く魚信だ。やがて、2尾目を釣りあげた。

…なぜテンヤ(ルアー)が活きエサに勝ったのだろうか。おそらく、この日のK氏の機転とルアーアクション、黒のシルエット、テンヤのウエイト、水温、潮流、リトリーブコース(ルアーの動き)が、ターゲットのマゴチと見事にマッチングしたのだ。

一方、同じ流しで私の竿にはなんかモゾモゾした魚信が。しかし、重くなったり軽くなったり、何かおかしい。マゴチではない。

ゆっくりリールを巻いてくると、見えてきた! あっ、イカだ、スミイカだ! 隣のK氏に玉網を任せるとイカのお尻から網を入れて、うまくすくってくれた。コクピットから「すぐに船の中に入れないでね。墨吐くからね」と船長の指示があったので、頃合いを見て船に入れたのだが、途端にシューーっと墨を吐かれて、足元が真っ黒になってしまった。

その後、ポツリポツリとマゴチは出たが、船長はシビレをきらしたよう。「ダメですね、ゴミが多すぎます。しばらく走りまぁ~す!」と何度目かわからないポイント変更へ。次こそは私も本命を…。

K氏の釣り上げたマゴチ。どちらも十分なサイズなのも悔しさを増す

(7月26日配信予定の第3回に続く)