ホウレンソウ、チャーシュー、ノリが基本トッピングの“三種の神器”。大半の店で客の要望に応じて「味の濃さ」「脂の量」「麺の硬さ」を調整するサービスや濃厚なスープに合うライスの提供を行なっている ホウレンソウ、チャーシュー、ノリが基本トッピングの“三種の神器”。大半の店で客の要望に応じて「味の濃さ」「脂の量」「麺の硬さ」を調整するサービスや濃厚なスープに合うライスの提供を行なっている

■味にこだわるからこそ冷凍スープを利用!?

濃厚な豚骨醤油ベースのスープが特徴の「横浜家系ラーメン(家系ラーメン)」。

以前からラーメン業界では人気ジャンルのひとつだったが、ここ2、3年、「家系ラーメン」の看板を掲げる店が首都圏をはじめ全国各地で爆発的に増えている。

その大半はフランチャイズチェーン店(以下、FC店)。なぜか地名の入った店名や「××家」という店名が多く、独特の毛筆風フォントの看板やメニューが目を引く。かつて、どこもかしこも「大勝軒」インスパイア系のつけ麺店だらけだったように、今は家系ラーメン店が街を埋め尽くす勢いなのだ。

では、なぜ今、家系ブームが到来しているのか? ラーメン業界に精通するフードジャーナリストの、はんつ遠藤さん、その理由を教えてください!

「まず、家系の総本山である『吉村家』(横浜市西区)以外にも人気店が増え、家系ラーメンの認知度が高くなり、フォロワーが増えたことが理由のひとつでしょう。そしてもうひとつ大きいのは、専門業者が工場で一括大量製造した冷凍スープを購入し、店内で解凍して提供するお店が増えたこと。それは技術の進歩によるもので、今や大半のFC店で採用されていますが、光熱費と人件費が一番かかるスープ作りに手をかけずに済み、また、使う分だけ解凍するので廃棄も少なくて済むのです。

例えば、店舗でイチから魚介豚骨スープを作って提供しているラーメン店の場合、1杯の原価率は35%程度。対して冷凍スープを利用した家系ラーメンは原価率30%未満で提供可能。これは大きなメリットです」

なんと、スープ専門業者が存在するとは! 従来のラーメン店は、お店独自のこだわりの麺やスープを開発することが繁盛のカギだったと思うのですが…。

「実は最近のラーメン業界では、麺のみならずスープも専門業者から購入するというのが全国的に主流になってきています。特に豚骨を使う家系ラーメンの場合、ある程度時間がたつとスープが酸化して臭みが出てしまうのですが、冷凍スープは製造後に急速冷凍されたフレッシュなもので、今では高いクオリティのスープを安定して供給できるようになっているというわけです」(遠藤氏)

原価率を抑えるため残念な店も…

冷凍スープって、なんだか味気ない感じがしますが。

「確かに、冷凍というと聞こえはよくないかもしれませんが、単にコストダウンのために使っているというわけではなく、細かい味の調整もできますし、安定した味にこだわるからこそ冷凍スープを選択する、という店主もいるのが実情なんですよ」(遠藤氏)

なるほど。でも正直、最近できたFC店には、どうもビミョーな味のお店が多い印象が…。

「冷凍のスープを解凍してそのまま使うのではなく、水で薄めることでさらに原価率を抑えていることが原因でしょう。スープの濃厚さが売りの家系でそんなことをしていれば、まずく感じられるのは当たり前なのですが…中にはそうした残念な店もあるようです」(遠藤氏)

う~ん、いくら舌バカでも(苦笑)、そんなセコい店には行きたくないぞ!

発売中の『週刊プレイボーイ』32号では、そんなビミョーなまずい店、うまい店の見分け方も伝授しているのでご覧いただきたい!

(取材・文/牛嶋健、昌谷大介[A4studio])

■週刊プレイボーイ32号(7月27日発売)「『家系ラーメン』うまい店・まずい店の見分け方!」より