奇祭「トマティーナ」参戦でなんとか高台に避難! みんなトマトでグッチャグチャ! 奇祭「トマティーナ」参戦でなんとか高台に避難! みんなトマトでグッチャグチャ!

「どのくらい滞在するの? 連絡先教えてよ。What’s Appやってる?」

バルセロナ空港のイミグレで、褐色の肌をした入国審査官は私の目をジっと見つめ、こう言ってきた。What’s AppとはLINEみたいなアプリのことで、厳格なる入国審査でナンパとは、さすが情熱の国スペイン

いや、からかわれてるだけ?とも思ったけれど、なかなかスタンプを押す気配がない。スッピンボサボサ頭でもナンパされるなんて、私もまだまだ捨てたもんじゃない…なんて悦に入ってる場合でもなく、もう夜中だし、急いて終バスに乗り安宿を目指さなくちゃ。ここは提出書類と思うことにして、私はメールアドレスを書いてこの国へ入ることとなった。

時計は0時を過ぎていたが、到着したカタルーニャ広場は中米に比べてなんて安全な雰囲気。「中米・危険旅」から一転「欧州・オシャレ旅」のスタートに気分が高まった私は、安宿に持ち込んだ白ワインを舐(な)めて眠りについた。

 まずはバルセロナに到着。美しい街並みに気分上々~♪ まずはバルセロナに到着。美しい街並みに気分上々~♪

ヨーロッパで最初にスペインにやってきた目的は、「トマティーナ」。大勢の人々が熟したトマトを投げ合う、なんともクレイジーなお祭りで、いつか絶対行きたいと思っていた。始まりは1945年、もみ合いのケンカとなった若者のひとりが、たまたま近くにあった八百屋のトマトを相手に投げつけたこととか。そんなのが祭りになっちゃうの(笑)? でもニンニクとかタマネギじゃなくって良かったよ。

 町中がトマトまみれになります 町中がトマトまみれになります

 生ハムで殴り合いでもなくて良かった~ 生ハムで殴り合いでもなくて良かった~

毎年トマティーナの日は、ブニョールという人口9千人の小さな町に世界から4万人以上の観光客が集まる。しかし、人気とは裏腹に経験者は「二度と行きたくない」「祭りの後、体調不良に襲われた」と口をそろえるハードっぷり。体力の不安を感じながらも、お祭り前日にはバルセロナから長距離列車でバレンシアに移り、そこから最終電車で「前夜祭」に向かう。

 トマティーナの行われるブニョールへの拠点となるバレンシアの街 トマティーナの行われるブニョールへの拠点となるバレンシアの街

終電はトマトで真っ赤に染まろうと意気込んで白い服を着た人たちでいっぱい…って、ん? まさか、みんな日本人なんだけどっ! 大げさではなく「マジで9割、日本人」。仲間意識が芽生える反面、若干、気持は萎(な)えてしまった。後ろの女のコが「こんなに日本人だらけなら日本でやればいいのにね(笑)」に思わず納得。なんか、タイのコムローイ祭りを思い出すなぁ…。

ちなみに、2012年には多摩川河川敷で日本版トマティーナが100人限定で予定されていたけど急遽中止になったそうな。

 日本人参加者は体育祭のようにトマトの絵を描いた白Tを着ていた 日本人参加者は体育祭のようにトマトの絵を描いた白Tを着ていた

幕開けイベントでケガ人続出

 前夜祭で盛り上がってるのはどうやら地元民 前夜祭で盛り上がってるのはどうやら地元民

ブニョールに着くと、トマト祭りの通りはライトアップされ、たくさんの地元民がテーブルを囲んでワインを飲んだり歌ったりしていた。私も混ざってサングリアを飲むと移動の疲れがドっと押し寄せ、朝まで騒ぐ体力はもう残っていない。猫が死に場所を探すようにフラフラと公園の影に身を潜めようとすると、そこはカオスだった。

ダンボールや毛布の上で仮眠をとる先客たちは、どうやら前夜祭にいそしんだ日本人や韓国人。過去に何度も空港泊を重ねてきた私でも一瞬ひるむ光景だったけど、サングリアを思う存分飲んだ体は冷えきっていて、雪山で凍えるように眠気が襲ってきた。

目が覚めると、隣には空ッポのテキーラ瓶を抱いて眠る人々が。その姿は、すでに戦いを終えた後のよう。肌寒い朝にブルっと身震いをしながら、トマティーナへ備える。「このコンディションで臨むのか…」

 公園で「みんなで寝れば怖くない」状態。貴重品も持ってないしね! ATMで暖を取る人も 公園で「みんなで寝れば怖くない」状態。貴重品も持ってないしね! ATMで暖を取る人も

 冷え切った体は寒く、体ダル重~ 冷え切った体は寒く、体ダル重~

午前9時。トマティーナの幕開け「パロ・ハボン(石鹸の棒)」が始まる。石鹸が塗りたくられてヌルヌルになった木の棒に、生ハムが丸ごとぶら下がる。あの生ハムが取られたらトマト合戦スタートだ! 

観衆が熱狂する中、強靭な男たちが突進しては人間を足場に生ハムを目指す。肩や顔や頭を踏み潰され、首が折れそうになりながらも天を目指しては地面に落ちる。すでにケガ人続出。

 生ハムは遥か高くにぶら下がり、近所の家からは無残にもバケツやホースで放水される 生ハムは遥か高くにぶら下がり、近所の家からは無残にもバケツやホースで放水される

何度も果敢に攻める者もいれば、顔面血だらけで退散する大男も。「英雄になりたいけど、こりゃ絶対ムリや~!」と、ギュウギュウの人混みで背伸びをしながらその戦いを見守った。

そこには日本人の勇者も! 西洋人に比べ、その腕は半分くらいの細さだが、そこは侍魂で意地を見せる! 女子だっている。見ているこっちはハラハラしたが、なかなか戦闘系女子が多い。中には、ズボンをペロンとめくられて大衆におしり公開するハメになった美人も。彼女は登ったことを後悔したに違いない。

壮絶なトマト合戦で顔面直撃!

結局、今年も生ハムが取られることはなく、11時になると大量のトマトを乗せたトラックがやってきた!

「トマテ~! ト・マ・テ~!」

待ってましたと歓声を上げる群衆たち。そしてトラックの荷台からトマトが雪崩落ちてくるのと同時に、一気にトマト戦争が始まった!!

 世界のトマト収穫量8位のスペイン。トマティーナでは120トンものトマトが投げられる。今年は70周年でもっと多かったとの噂 世界のトマト収穫量8位のスペイン。トマティーナでは120トンものトマトが投げられる。今年は70周年でもっと多かったとの噂

「ちょ。ちょっト、マッテ! トラック止マッテ! トマテ止メテ~!」

チビな私は水中眼鏡の曇りで前が見えず、一緒にいたはずの旅友たちともはぐれ、人に足を踏まれながらアワアワ。すると、

「ゴッチーン!!!」

まさかの顔面頬骨にトマトがクリティカルヒーット! 一瞬、何事か理解できず。もしかしてコレ、硬式トマトなんですか? 想像よりもイタ~イ(泣)。トマトは少し握りつぶしてから投げるのが暗黙のルールだけど、興奮状態の人々はトマトをつかんで即座にフルスイング。

 おそらくこのトマトが顔に当たったかと おそらくこのトマトが顔に当たったかと

「コンニャロー! 嫁に行けなくなったらどうしてくれる!」

崩れたトマトを地面から拾い、手当たり次第投げてみた。辺りには甘酸っぱいトマトの匂いが漂い、太陽の光が降り注ぐ。ぐちゃぐちゃの服が気持ち悪いけど、確かに今、私は念願のトマト祭りに参加してる! 興奮でブルっと身震いし、アドレナリン全開!

気付くと1時間が経ち、トマト戦争はあっという間に終焉を迎えた。参加者も皆、これ以上やったらヤバイと感じてるんでしょうね。撤収は鮮やかだった。

 ぐっちゃぐちゃの足元。足首まで埋まってます ぐっちゃぐちゃの足元。足首まで埋まってます

トマティーナ参加の目的は達成したが、数日間は髪の毛から甘酸っぱい匂いがとれず、耳からはトマト汁、目ヤニも止まらない。そして遅れてきた筋肉痛のように、数日後には発熱し、顔をトマトのように赤らめて寝込んでいた。誰か…助けて。

グッタリとした体でパソコンを開くと、そこにはイミグレの彼から情熱的なメールが…。「クールな場所に連れて行くよ。タパスパーティー行かない?」。おっと……。でも、私もうトマトでお腹いっぱいです。バタンッ。

それにしても「オシャレな旅」はどこへ? ヨーロッパ編もまた、穏やかではなさそうな予感です。

 トマトの海で屍(しかばね)と化す私。しばらくトマト見たくないです…… トマトの海で屍(しかばね)と化す私。しばらくトマト見たくないです……

【This week’s BLUE】 拠点となったバレンシアにはビーチも。お気づきでしょうが、当たり前のようにトップレスです。スタイルが良いのでカッコイイ。

●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背 負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/marysha/、Twitter【marysha98】もチェック