「チケットあるよ! ホラ、とっても良い席だ。嘘じゃないさ!」
今、私はFCバルセロナのホームスタジアムであるカンプノウの前にいる。話しかけてくるのはチームのユニフォームを着たダフ屋だ。この感じ、リオのカーニバルを思い出す。
ここはバルセロナでサッカーファンが必ず訪れたい聖地。「カンプノウ」は「新しいスタジアム」という意味で、前スタジアムでは50年代に活躍したラディスラオ・クバラの人気に押し寄せるファンを収容しきれず、1957年、新スタジアム建設へとつながったんだとか。なんと現在の収容人数は約9万9千人で、欧州最大!
スペインリーグ(リーガエスパニョーラ)の時期に、聖地でFCバルセロナの試合が見れるチャンスなんてなかなかない! 試合へ向かう電車内はみんなユニフォームを着て大盛り上がり!
去年のブラジルW杯では私、週プレ本誌でも記事を載せてもらいましたが、その時を思い出しよみがえる高揚感!
しかし、まぬけな私はトマティーナや泡パに集中していたせいか、サッカー観戦への準備が甘かった。日本やペルー、オーストラリアの旅友もみんなチケットは事前に確保していたのに…。
そんなワケで何人かのダフ屋と交渉し値切った結果、74ユーロの席を50ユーロで交渉成立。しかし手渡されたのは、A4の白黒コピー。それらしきチケット番号や座席表は描かれているものの、ただの紙切れ…。
「このバーコードで大丈夫だからっ」
とダフ屋は言うけど、心配…。偽物だったらポリスに突き出してやろうと、念のため、記念写真を撮るフリをして顔のわかる証拠写真を撮っておいた。これも貧乏旅行の知恵のひとつ?
巨大スタジアムの熱気に圧倒される
チケットも手に入り、いよいよ会場に入ろうと列に並ぶと、私の前の客はチケットのバーコードが反応せず、入場できないでいた。私もドキドキしたけど、すんなり入れてチケットの端っこを少し破られた。ホッ。
そしてついにスタジアムの中心部、フィールドへのゲートを超えると、
「うわあああ! デ、デカイ!」
2階席の高い位置から見下ろすと、吸い込まれそうな巨大スタジアム。私の席はダフ屋の言う「良い席」とは若干異なっているようだったけど、そのくらいは想定内。
意外とガラガラなので、開始直前まで粘ればもっと値切れたかもとケチケチしたことを考えていると、試合開始には席が埋まった。さすがの収容人数。ビッシリと埋まった席から、あふれんばかりの熱気がスタジアムの真ん中に注がれる。
選手紹介が始まると、スター選手が呼ばれるたびに湧く大歓声。断トツ人気のメッシ! イケメン・ネイマール! 私もついに黄色い声を上げた。
「きゃあああ~! メッシー! ネイマール!」
ミーハーな私はネイマールとメッシしかわからなかったけど、スター選手の動く姿を必死に肉眼で追い、応援。1-0で勝ったものの、ホームなのにジャッジも厳しくブーイングの多い渋い試合だった。でも、このカンプノウで生メッシと生ネイマールを拝めたのはかなりの満足感。
実は、この偉大なる聖地カンプノウも老朽化が進んでいて、昨年全面改築が発表された。10万5千人(!)規模の屋根付きスタジアムに改築されるそうで、17年には建設が始まり、21年に完成予定。総工費は6億ユーロだって!
サグラダ・ファミリアは2026年に完成!
翌日は、かの有名なガウディのサグラダ・ファミリアへ向かう。
ここを訪れるのは2度目。08年に私がバックパッカーデビューし、ヨーロッパを周った時はユーロが170円と高騰していた時代。当時は旅資金が足りなくて外から眺めるだけという悔しい思いをしたけど、今回ついにリベンジ! 確か9ユーロだった入場料は15ユーロに値上がりしていたけどねっ。
7年ぶりのサグラダ・ファミリアは、世界遺産だけあって、やはり圧倒的存在感。工事が進み、一部ツルっとした新しい質感のパーツのせいか、以前より近代的にも感じる。
そして今回、ここでもうひとつの野望が。それは、『スラムダンク』の井上雄彦先生がサグラダ・ファミリアの彫刻家ブルーノ氏のオファーで「栄光のファサード」の扉に刻んだという文字を拝むこと。2011年、ガウディの足跡を追い、取材をしていた井上先生。日本で『ガウディ×井上雄彦の特別展』も見た大ファンの私としては是非とも見届けたかった。
でも、さすが未完の大聖堂サグラダ・ファミリア。先発組の旅友から「工事中で見れなかったよ~」との情報が入り、諦めるしかなく試合終了。
しかし、ここで朗報。1882年の着工から完成までには300年以上かかる見積もりだったこの大聖堂は、ガウディ没後100年の節目となる2026年に完成すると発表された!
その大きな理由は、3Dプリンター導入や高品質コンクリート開発、入場者増加による財源安定だとか。現在進行形の作業現場はかなりハイテク! こりゃあ2026年のサグラダさんも要チェックや!
サグラダより桜木の私は、ガウディより「井上雄彦の足跡」を追った気分で夜のバルセロナを歩いていた。
すると路上ではFCバルセロナのユニフォームを売っている。隣にはフェイクらしきブランドバッグが売っているし、こちらもレプリカだろう。敷物の上に商品を並べているが、紐をしっかり握っているところを見ると、警察が来た時、とっさに逃げるためかな。なかなか面白いのでカメラを向けると、
「貴様! カメラをよこせ! 何人たりとも俺の商売を妨げるヤツは許さん!」
とめっちゃキレられた。危ない危ない。2026年にまた、この世界遺産の完成を見届けなくてはならないのだから、旅での油断には気を付けよう。
【This week’s BLUE】 サグラダ・ファミリアの内部。ステンドグラスから差し込むブルーの光がキレイ
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背 負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/marysha/、Twitter【marysha98】もチェック