今年に入り、新しい音楽配信サービスが続々と登場し、新たな音楽の聴き方として広がりを見せている。
そんな中、レストランやスーパーのBGMなどで馴染みの深いUSENが提供する定額制音楽配信サービスがじわじわと人気を集めているというーー。
定額制音楽配信サービスといえば、今年5月にavex&サイバーエージェントが「AWA」を、6月にLINEが「LINE MUSIC」を、7月にはAppleが「Apple Music」のサービスを開始、にわかに熱いバトルを展開。
これら新興系の音楽配信サービスに先駆け、2013年12月にサービスを開始したのがUSENが運営するアプリ「スマホでUSEN」だ。コンテンツの幅の広さと、価格面でのお得感がウケてじわじわとユーザー数を獲得している。
「スマホでUSEN」は「ラジオ型」の音楽配信サービスといわれ、数あるチャンネルの中から好みのものを選べば、好きなジャンルの曲がノンストップで自動的に流れるタイプ。一方、「Apple Music」などの新興系サービスは「オンデマンド型」といわれ、自分で曲を選んでプレイリストを作成して再生するのが違いだ。
「オンデマンド型」を自分の好きな音楽ジャンルを深く掘り下げるようなヘビーユーザー向けとすれば、「ラジオ型」は自分好みのジャンルを手軽に聴きたいライトユーザー、さらにはいつもの曲に飽き気味で新しい音楽との出会いが欲しいという人向けと言えそう。
元々、従来のUSEN放送で最新ヒットソングから年代別のヒットソング、アニメに民謡、英会話、さらには羊の数を数えるというようなものまで、ジャンルを問わず、メジャーからニッチまで500以上のチャンネルでユーザーの「何か聴きたい」という欲求をハイレベルに満たしてきたのがUSEN。
その特色を存分に活かしスマホで聴くことができるのが、「スマホでUSEN」というわけだ。しかも、スマホアプリとなったことでよりパワフルになっており、チャンネル数も1000超え!
ここまで充実したサービス内容で、価格は月額490円(税別)。「オンデマンド型」の多くが月額1000円前後であることを考えると安さが際立つ。
それにしても、1000ものチャンネルをどのようにして作っているのだろうか。株式会社USENのデジタル配信サービス部・大久保哲也課長に裏側をちょっと聞いてみた。
アイドルの寝息ひと晩分が聴ける企画も!?
「どんどん増え続ける音楽を整理するメディアは必要です。我々はそれをチャンネルという形で整理して、ユーザーに提供したいと考えています。ですから、今でも人力で1000チャンネルを編成しています。これは相当、珍しいと思いますよ」
編成とは、そのチャンネルで流す曲選びから順番までもすべて作り込む、いわばそのジャンルに特化したスペシャルなプレイリストを作り上げることだ。それが1000チャンネルもあるというのだからすごい。
「基本的に網羅しないジャンルはありません。ジャズ、クラシック、J‐POP、洋楽といった中で専門のディレクター、プロデューサーがこれまでUSEN放送50年の歴史で積み上げたノウハウと専門知識を駆使して作っています」
さらに、音楽以外にも人気のコンテンツがある。
「最近では落語や語学、あとはラジオ的なアイドルのトーク番組も人気ですね。基本は音楽メインですが、“聴く”ということに関しては幅広くフォローしていきたいと思っています」
そう説明する「幅広く」とは、本当に幅が広く、“関西地方の川の流れ”の音とか、“琵琶湖の花火大会”の音、“東大寺の鐘の音や“街の雑踏”の音まで…、もはやマニアックなどというレベルですらない幅の広さなのだ!
「企画レベルでは自由過ぎる意見がどんどん上がってきます(笑)。例えば、マニアックな世界を追求している雑誌とのコラボや、アイドルの寝息ひと晩分なんていう企画もありました。
音楽ではアクロバティックなことをやるのは難しいので、ユニークでマニアックなものを増やしていくのもいいかと考えています。そのための1000チャンネルでもあります。これが100チャンネルしかなかったら、“一般受け”チャンネルしか作れませんからね」
しかも、これだけ多チャンネルでありながら、実際にスマホでアプリを動かしてみるとチャンネル名は明確でわかりやすい。好みのチャンネルを見つけやすく、操作で迷うことがないシンプルな設計となっている。
今、「スマホでUSEN」では3日間の無料体験を開催中のことで、大久保氏が言うには「興味を持って無料体験されたユーザーが、その後有料ユーザーとなってくれる確率は我々の予想より良すぎるほどに高い」ということだ。
あのUSENをスマホで持ち運ぶことの幸せを、実際に耳で確かめることをオススメしたい。
(取材・文/頓所直人 撮影/榊智朗)