元TVマンでマスコミへの売り込みに精通した高橋がなりの率いるSODが勢力を広げる一方。他業種からAV業界に参入した者たちが独自の"薄消しビデオ"を制作して大ブームとなった90年代後半ーー。(※この対談のバックナンバーはこちら!)
そんな時代のカン松さんやバク山さんの活躍は?
松尾 山ちゃんがちょうどフリーになった頃だっけ。
山下 正確には96年にV&Rを退社したんですけど...AV辞めたかったですねぇ。
松尾 正直に言ったね。
山下 女にフラれて。ガラスのハートなんで、めまいがしちゃって...。
松尾 そこかよ。めまいじゃねぇよ、仕事してくれよ(笑)。
山下 実は、フリーになってすぐ、『アメジャリチハラ』(テレビ朝日)っていうバラエティ番組のロケディレクターをやったりもしてまして。
―模索の時期にあったと?
山下 雨上がり決死隊、ジャリズム、千原兄弟の番組だったんですけど、AVみたいなムチャを求められてたのに、タレントには遠慮しちゃって強く出られなくて(笑)。
松尾 素人とAV女優に対しては厳しいのにねぇ(笑)。
山下 結局、すぐ降板ですよ。
松尾 でもフリーになった直後って、李博士っていう韓国人ディスコ歌手のPVを撮るために世界一周したり、松尾&山下コンビの変わった仕事って多かったよね?
山下 庵野(秀明)さんの映画『ラブ&ポップ』のメイキング撮ったりもしたよね。
―本業そっちのけで(笑)。
テレキャノ、爆誕!!
松尾 でも、俺が後に続く「テレキャノ」の第1弾(『テレクラキャノンボール 東京・仙台・青森 爆走1500キロ』)を撮ったのはこの頃だよ。
山下 とかいって、テレキャノは単なる思いつきでしょ?
松尾 いやいや、俺がV&R時代から培ってきた、テレクラ・プロジェクトの集大成がテレキャノだから。
山下 あっそう。俺も撮ってなかったわけじゃなくて、『たまごえっちナンパ』(97年)や『チョベリグ~!!』(98年)では、当時流行してたコギャルを取り上げましたね。
―ちなみに、90年代末の女のコの実態ってどういう?
松尾 女子高生のエンコーが爆発的なブームでしたね。呼称が「売春」から「援助交際」になった時期を経て、最終段階の「エンコー」に進んだのがこの頃です。
山下 相場は3万円とか?
松尾 もっと高い。今じゃ考えられないけどさ、テレクラで「5万円」とか平気で言ってくるコがいた時代ですよ。
山下 10代のコは強気な値だったね。20代になると急に値が崩れて(笑)。中心はやっぱ、渋谷と池袋だったよね?
松尾 だね。V&RにF林っていう飲尿マニアの社員がいて。そいつの話で、「とにかく今、渋谷がヤバい!」と。
山下 渋谷のファストフード店に女子高生がたまってて、そこ行って交渉してたよね。
松尾 話がまとまると、Lサイズのカップに5千円でオシッコ出してもらって。
山下 「オシッコした本人を眺めながら飲めるなんて、最高です!」ってね(笑)。
―地方の女子高生もエンコーしてたんですかね?
山下 地方の女子高生は、夏休みとか冬休みを利用して、東京へ出稼ぎエンコーに来てましたね。というのも、地方には条例が意外と早くからあって稼ぎづらかった。でも東京には条例がなかったから。
松尾 北関東とかのコ?
山下 いや、俺が話聞いたのは東北。池袋のテレクラ前の公衆電話に張りついてた姿が記憶に残ってますね。
潮吹きのルーツとは?
松尾 その後、ブルセラやエンコーを経験した女子高生がAVに流入してきたよね?
山下 そうだね。80年生まれぐらいかなぁ、95、96年頃にエンコーを経験した世代が90年代末にAVデビューするっていう流れは確実にあったと思いますね。騎乗位ブームの立役者、長瀬愛がオーロラプロジェクトからデビューしたのも99年とかでしょ。
松尾 彼女って単体女優と企画女優の中間に位置する"キカタン"のはしりでもあるからね。その後、うさみ恭香、堤さやか、朝河蘭、桃井望と、単体の人気を食う勢いのキカタンが次々に登場して。
山下 SODもセル初の専属女優、森下くるみをデビューさせてね。当時は異例の12本契約が話題になったり、女優のバリエーションに変化が出てきたのもこの頃でしょ。
―レンタルでは深田美穂や椎名舞などの巨乳系が人気でした。あと、小室友里の"潮の飛距離"も注目の的で。
松尾 潮といったら、男優の加藤鷹と吉田潤ですよね。俺、吉田さんに聞いたんですけど、「早漏だから尺をもたせる自信がない」ってとこが始まりなんだって。で、指マン一生懸命やってたら、突然なんか出てきたって(笑)。それが潮吹きのルーツらしいです。
山下 ホント!? 俺、いまだに潮はよくわかんないね。吹かせたこともないしね。
松尾 俺もないなぁ。浜崎りおが勝手に自分で吹き始めたってことはあったけど(笑)。
山下 男優が吹かせてるのを撮ってて思うのはさ、どう考えてもオシッコだよなと。だって「イク、イク~ッ!」からの「ジャ~」ですよ。「ピュッ」じゃなくて「ジャ?」。
松尾 それ、漏らしてるだけでしょって話だよね(笑)。
●この続きは『週刊プレイボーイNo.44』でお読みいただけます。さらなるAVトークが全開! こちらの連載は毎週本誌に掲載中です。
(構成/黒羽幸宏 撮影/髙橋定敬 取材協力/ハマジム h.m.p アリスJAPAN SOD)
●カンパニー松尾 1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット
●バクシーシ山下 1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など