今後16年かかるが、アメリカ産の牛肉はどんどん安くなるのは間違いない?

TPPで本当に安くなる輸入品は何か? 10月20日に政府が発表した関税引き下げリストにはそのヒントがある。

発売中の『週刊プレイボーイ』47号では、このリストを精読。さらに輸入品を扱う業者を徹底調査した。

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TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の「大筋合意」を受け、農林水産省、経済産業省は10月20日、関税撤廃品目のリストを公表。そのリストを眺めてまず驚くのは、関税がなくなる品目の多さ。例えば、経産省のリストは全167ページ。その項目も繊維各種から歯ブラシ、サングラス、王冠、果ては戦車やミサイルなど、身近なものから日常生活とは縁遠いレア品目まで本当に多種多様である。

今回の大筋合意で、全輸入品9018品目のうち、95・1%の関税が撤廃されることになる。これは日本が過去に結んだ自由貿易協定の中で、最も撤廃率が高いオーストラリアとのEPA(経済連携協定)の水準(89%)を大きく上回る。ここまで大規模な関税撤廃は日本にとって初めてのことなのだ。

そこで今回、週プレは政府が発表したリストを精読。具体的にどの品目がどれくらい安くなるかを計算した。例えば、牛肉の関税率38.5%は、TPP発効時に27.5%、16年目に9%に。

アメリカ産牛バラ肉を使う吉野家の牛丼(並・380円)の価格は、「吉野家の牛丼1杯の牛肉の原材料費は約90g・155円。今はココに43円の関税がかかっていますが、TPP発効1年目に31円、16年目に10円になります。外食業界は値下げ効果で売り上げが伸びる“価格弾力性”を想定して値決めするので(原材料費の値下がり分の1.5倍が妥当とのこと)、これを加味すると1年目は約20円安の360円、16年目には約50円安の330円になる可能性があります」(百年コンサルティング代表・鈴木貴博氏)

松屋の牛めし(並・290円)もアメリカ産バラ肉を使用。肉の量は1杯64gで、TPP後の価格を試算すると、1年目に12円安の278円、16年目に35円安の255円に。“原価率70%超”をうたう「いきなり!ステーキ」のリブロースステーキ(500g・3000円)は16年目に2370円(630円安)まで安くなる。

もっとも、水を差すようだが、この関税引き下げがすべて実現するとは言い切れないようだ。TPP交渉に詳しいアジア太平洋資料センターの内田聖子(しょうこ)氏はこう話す。

「日本政府はTPP参加国の中で、最も詳細な国内の関税撤廃のリストを出しました。しかし、今は大筋合意といっても、各国の合意を記した共通テキストも発表されていない段階です。なので、日本が公表した通りに関税の撤廃がされるかどうかは、まだ不透明だと言わざるを得ません」

とりあえず“過度な期待”は禁物だが、この牛肉の他、カレーにチョコレート菓子、ワインに革靴、衣類まで…TPPでお買い得になるはずの検証リストを一挙紹介している本誌最新号を是非お読みいただきたい!

『週刊プレイボーイ』47号(11月9日発売)「『TPPでお買い得』最終リスト!」より