グーテンターク(ドイツ語でこんにちわ)!
日本のハロウィンは相変わらず大盛り上がりでしたね。渋谷がごった返して大変だったというニュースは世界にも届いてますよ。
コスプレ大国の日本は海外の収穫祭ハロウィンまでもジャパニーズカルチャーにしてしまいそうな勢い!?
さて、ドイツの東に位置する首都ベルリン。ここは都会的な人間が集まる“クール”な街。お祭りウィークの時も、街中はシュッっとした雰囲気でお祭り騒ぎの前兆を微塵(みじん)も感じない。
よく、「日本人と似ている」と言われるドイツ人は時間に正確で健康オタク。ヨーロッパの中でも特にマジメなほうだというのは実際に接してみて頷(うなず)ける。
そして、ドイツといえばビールやソーセージが有名だが、ベルリンはなんと言ってもクラブカルチャーが進んでいる。
近年、日本では「ダンスが中学の必修科目」になりつつも「クラブで踊ってはいけない条例」にはダンサーたちが脅かされた(本年、クラブ・ダンス営業の規制緩和)。一方、ドイツでは「革新的な場所が必要だ」という理由で、09年にドイツ政府から120万ユーロの助成金が付与されたクラブが存在する。
それが「死ぬまでに行きたい」世界最高峰のクラブ“Berghain(ベルクハイン)”!
週末になると、なんと最高36時間営業のツワモノな営業をしているというが、驚くのは営業時間ではなく、このクラブに存在する見えない壁だ。“入場”の審査がとにかくスーパー厳しく、難関なのである。その厳しさは年齢や人数制限ではなく、このベルグハインに相応(ふさわ)しい人間かどうか品定めされるということだ。
ベルリンの壁が崩壊した今、この街で最も厚い壁「ベルクハインの壁」が私の前に立ちはだかったのだ。
難攻不落! ベルグハインの審査基準
さて、一発勝負となる入場試験の対策として、私は可能性のある審査基準についてググりにググってみました。
「とにかくオシャレであること。モード系がベター。真っ赤なリップ。黒いファッションが良い。全身黒はダメ。気合い入りすぎもダメ。イモもダメ。観光客、団体、酔っ払い、挙動不審ダメ。ベルリンを愛している。カルチャーへの尊敬がある…などなど。 そして一切の撮影禁止!」
仕入れた噂は千差万別で正解がない。これはある意味、東大に入るより難しいかもしれないぞ。
旅人の私はオシャレな靴もなければ、モード系でもない。とりあえず黒い服に衝動買いしたカラシ色のコートをはおり、シャネルの赤いグロスをお守り代わりに握りしめた。噂に忠実な私ーー。
そして、インドで出会ったドイツ留学中の旅友ケンちゃんと再会を兼ねて一緒に戦場へ向かった。
現場に辿(たど)り着くと、そこには長蛇の列。入るまでに30分から長い時は2時間待ちだという。クラブの入り口にはバウンサーと呼ばれるいかついドアマンが、まるで「あっち向いてホイ」のように指先で客を選別している。「入れ」か「帰れ」だ。
その選別は容赦なさすぎて、1秒にも満たないジャッジで次々とふるい落とされていく。ハンパない…。
目の前では、ファッション誌VOGUE(ヴォーグ)から抜け出してきたようなオシャレ~でスタイル抜群、米粒サイズの顔と小脇にクラッチバッグを抱えたロングコートの超絶美人が首を振られた。
「ゲッ、マジ? あの美人がダメなら、アジアから来たちんちくりんの旅人なんて絶対ムリじゃん」
「なんで私が…」という表情の美人。「入れなくても失望することはない」と言うが、脱落者たちは少なからず、怒りや落胆の面持ちでその場を去っていくのであった。
どんどん弱気になって行く中、私の直前までに約10組が連続で脱落! この流れ、ピンチ! そしてついに私の番。堂々と余裕の表情でいくのか? それとも子犬のような目で同情を買うか? どうする、私?
いよいよ審査の時、まさかの…
バウンサーは3人。顔までタトゥーの入った、この箱のドンと思わしき男は中米のギャングを思い出させる。(参考記事→第62回「中米ギャングがのさばる危険地帯でビビりまくる」)
品定め中はヘラヘラできず、結局、ウソ発見器にかけられたように正直な気持ちが顔に出てしまった。
「見たい、聞きたい、入りたい! 外は寒いです。凍えそうです。マッチ買ってください…」
「入れ」
え??? マジ??? 思いが通じたのか、私はついにその壁を突破! やったぁぁあ!
緊張感からの解放感。「真のテクノの殿堂」とクオリティを高く評価されるサウンドは重低音にのって骨まで振動が伝わる。HIPHOP育ちの私はテクノにうといが、中へ入れたことがとにかく嬉しくて、しばしその音に体を預けていた。
発電所を改造した古い洋館の中は想像していたよりもずっと簡素。大型倉庫のように広々と吹き抜けていて、階段を上り下り、迷路のようなつくり。広いダンスフロアや、バーではビールが3.30ユーロと良心的な価格で売られ、いくつもの小部屋ではカップルがいい雰囲気だ。
ゲイが多いのが特徴的で、審査基準を無視したいろんなタイプの人間がいた。「男女共同のトイレに数人で入っていく」のは当たり前のようだけど、噂に聞いていたスキャンダラスな映像は私の視界には映らず、個々が空間を大事に自由に音やお酒を楽しんでいる大人のクラブという印象だった。
ひと通り楽しんだ私が帰ろうとすると、「ヘイ! まだ朝の4:00だ。今からメインDJだからそれだけは見ていけよ! ここはベルリンで一番のクラブだ」と言うベルリン出身の男子(21)。ローカルのキミが言うんだ、少し残ることにしよう。
「ところでバナナ食べる? ヘルシーだし朝まで踊るにはこれがパワーとなるんだ」
さすがBIO(オーガニック)にこだわるドイツ人。てゆうか、バナナ売ってるクラブって謎。
「これ飲む? バナナとやると最高だぜ」
透明の液体はストレートのウォッカかと思いきやレモンを絞ったマグネシウム水。どこまで健康志向なんだろ(笑)。ここクラブよ? …すると最後に彼はこう言った。
「ドラッグやる?」
オイ! それはいかんぜよ!
【This week’s BLUE】 ベルリン大聖堂と工事中の町中を走る青いパイプ
●旅人マリーシャ 平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】