昔のAV女優たちは「ノリとしては期間工ですよ(笑)」と語る両監督 昔のAV女優たちは「ノリとしては期間工ですよ(笑)」と語る両監督

これまで80年代、90年代のAV界のトピックスをトークしてもらった両監督。そして2000年代中盤はAV女優の大量発生により、リスカ常習犯、プチ整形女子がAV界へ流入。

その一方でメーカーの「企業化」が進み、新卒の高学歴女子がその門を叩き、業界内部にも少しずつゆがみが起ったという...?

松尾 ひとつ業界内の話をしとくと、この時期、AVメーカーに新卒の高学歴女子が入社するようになるんです。

山下 いかがわしいAV屋さんが、明るい企業になったと。

―06年にSODが『会社四季報』にも掲載されました。

松尾 そういうのに載ったら、AVメーカーにもガチの早慶女子が社員として来て。

山下 80年代、90年は女がいたとしても社長の愛人か元AV女優を広告塔として雇うパターンに限られたからね。

松尾 当時、高橋がなりさんが『マネーの虎』で毎週TVに出てたでしょ。AVがちょっとだけ明るいイメージになったんじゃない?

山下 ネットでメーカーの企業情報を見て、必ずしもデタラメなビジネスをしてるわけじゃないって知ったとか。

―この時期の単体女優の動きでいうと、元アイドルの小沢なつきや、お菓子系グラドルだった萩原舞がデビューするというクロスオーバーがありました。また、今も現役の吉沢明歩やRioがデビューしたのもこの頃ですね。

山下 昔のAV女優は半年も業界にいなかったのに。

松尾 ノリとしては期間工ですよ(笑)。単体だと2年やったらスゴいねって話で。

山下 あるいは「この仕事しかできない」っていう人がダラダラ長くやる世界で。

松尾 単体が息の長い活動をするようになったのは。

山下 リリース本数の増加もあるけど、事務所の企業化も重要なんじゃないの。昔は現場に投げっぱなしで、AVをやるかやらないか、あやふやな状態のままのコを平気でよこしてたじゃん? で、現場で直接口説くみたいな。

松尾 そういうコは事務所がはじくようになったもんね。

山下 中途半端な姿勢のコは面接の段階で切られちゃう。

松尾 結果、仕事としてセックスをまじめにきっちりやるコが増えた。昔は事務所に管理されてないからそんなにセックスに対して執着なかったのに、この頃から「潮吹ける」とか「フェラうまい」とか自分で言うようになって。

世知辛い業界になりました...

―よくも悪くもAV女優が職人的になったというか。

山下 現場でのスタッフと女優の関係も変化してるしね?

松尾 この頃からスタッフと女優が現場でメシを一緒に食わなくなってます。女優はメイク室にこもってマネージャー、メイクと食べるようになって。スタッフが女優とヘタに絡むと事務所ににらまれるからね。男優ですら女優と仲良くしなくなったよね。セックスしてるのに会話はない。

山下 チ○ポ入れて出すだけの関係ってことでしょ。

松尾 それもこれも事務所に疑われてNG出されたくないからですよ。そのコだけじゃなくて、事務所に所属する女優全員NGにされるから。

山下 昔はそれこそ隙あらば女優口説くのが普通で。誰が女優を自宅へ送るかって競争があったじゃん?

松尾 家の前で突然、腹を壊すスタッフ続出で。

山下 トイレ借りるフリして部屋に上がり込んでね(笑)。

松尾 事務所の企業化によって、AV業界のいい加減さっていうのが失われたよね。

山下 AV界が常識の範囲内に入ってしまったというか。常識から外れたことをするとどんどん排除されていく...よくも悪くもそんな世知辛い業界になったわけです。

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●この続きは発売中の『週刊プレイボーイ』本誌でお読みいただけます。さらなるAVトークが全開! こちらの連載は毎週掲載中です。

(構成/黒羽幸宏 撮影/井上太郎 取材協力/HMJM アリスJAPAN マックス・エー ナチュラルハイ)

●カンパニー松尾 1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下 1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など