SNSを活用してセルフプロデュース能力の高い女優が登場する10年代のAV業界とは? SNSを活用してセルフプロデュース能力の高い女優が登場する10年代のAV業界とは?

今年はAVが誕生して35周年。80年代初頭に誕生し、90年代はバブル...そして00年代はAV女優のアイドル化が進んでいった。芸能人や元アイドルまでもが参入を果たし、業界はお祭り騒ぎに!

―2010年代に入り、AV女優のアイドル化と並行して、有名芸能人や元国民的アイドルが相次いでAVデビューしました。バラエティ番組では、00年代初頭に活躍したグループの元メンバーが「以前、AV出演のオファーがあった」と告白して話題になることもありました。提示されたギャラは1600万円だったと...。

山下 まあ、リアルっちゃリアルな数字ではあるけど、1600万ってちょっと中途半端じゃない?

松尾 手取り額の話でしょ? 事務所には3000万とかのオファーがあって、本人の取り分が1600万って話じゃないかなぁ。1600万の10分の1の金額が単体1本のギャラ相場だってことを考えると、悪くはないですよ。

山下 このご時世には頑張ってる数字か。

松尾 けど、そのコって元アイドルとはいえ、AVだと熟女枠の年齢だから(笑)。

山下 "アイドル"って肩書に需要があるだけでしょ。でも俺はさ、もはやAV女優とアイドルってあんまり違いがないと思ってて。

松尾 なるほどね。

山下 先にAVの事務所に声をかけられたからAV女優やってるだけってコも多いなって。アイドルとAV女優って見た目にも差がないでしょ?

―この頃にデビューした、葵つかさや小島みなみを見てるとそう思いますね。

松尾 そうだね。逆にBiSの解散ドキュメントを撮ってて、俺はあの6人がAVに出ても誰ひとりとして撮らないだろうなって思ったし(笑)。

山下 AV女優とアイドルの境界が、どこまでも曖昧(あいまい)になってきたのは確かだよね。ヘンな話、小向美奈子なんてAV女優よりAV女優って空気あったじゃん?

松尾 失礼な(笑)。何を隠そう、俺、AVデビュー直後の彼女に会ってるんですから。

山下 そうなんだ。

松尾 「ドキュメンタリーを撮りませんか?」という話がアリスJAPANからあって、温泉で1泊2日、好きにしてくれと。でも彼女、明るいのはいいんだけど、落ち着きがないというか、はっちゃけすぎで(苦笑)。あのスケール感はドキュメンタリー向きじゃないってことで、ポシャったよね。

親同伴でイベント開催する女優も!

山下 あと、境界が曖昧って話でいったら、AV女優にもアイドルと同じように追っかけがいて、発売記念イベントの内容も同じなんでしょ?

松尾 一緒。DVDの購入枚数によってサービスが変わるシステムでね。「3枚買うとツーショットチェキ」とか。

山下 週末は秋葉原のショップでイベントって流れが業界のお約束になってね。

松尾 人気女優は200人とか集めて、みんな複数購入するから1回のイベントで500枚とか売れる。2千本売れたら御の字の時代にですよ。

山下 都内だと月にどれぐらい開催されてんの?

松尾 月に約100本。しかも人気女優は地方イベントも入るから大忙し。それでね、大きいライブイベントとかやる時は親まで呼ぶんだって。

山下 へぇ~。

松尾 そこで親に宛てた感謝の手紙を読み上げて、その姿を見た親が泣いて、もちろん女優本人もボロボロで、客席はもらい泣きっていうね。

山下 スゴい光景だね。

松尾 つまり、AV女優のアイドル的な活動って親にも誇れるんです。やりがいにも結びつくし、事務所やメーカーからすると、先々にイベントやライブを設定することで、そこまで女優を引きつけておく保険にもなるから。

山下  あと、客が集まるコって、ファンの顔と名前を完璧に覚えてるでしょ。

松尾 地道な努力を積み重ねたコは人気出るね。キカタンからブレイクした湊莉久(みなと りく)とか、俺も1本撮ったけど、セックスもイベントもSNSもすべてが全力だから。

山下 バイタリティあるね。

松尾 SNSやブログの登場でAV女優のメンタリティはガラッと変わったと思う。やっと自分の仕事や活動に実感を得られたんですよ。毎度、現場で好きでもない男優とパコパコしてるっていうだけではやっぱり心が病むでしょ。

山下 そうかぁ?

松尾 それがSNSやブログの登場で、自分自身の日常について語り、応援してくれるファンがいることを確認できた。AV女優の承認欲求が初めて満たされたんじゃないかって思うんですよね。

※この対談のバックナンバーはこちら!

●この続きは『週刊プレイボーイNo.47』でお読みいただけます。

(構成/黒羽幸宏 撮影/井上太郎 取材協力/ハマジム アリスJAPAN アイデアポケット センタービレッジ ルビー)

●カンパニー松尾 1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下 1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など