ヤーサス! ティ、カネテ?(ギリシャ語でご機嫌いかが?)
前回に引き続き、またもや崖の美しいところに来てしまいました。人生崖っぷち女子・旅人マリーシャです。
ギリシャを締めくくるのは、ミュージカル映画「マンマ・ミーア!」の舞台にもなったエーゲ海に浮かぶサントリーニ島!
島全体が火山であるサントリーニ島は、かつての大爆発で形成されたカルデラ地形に青いドーム屋根の教会や白い壁の建物が並ぶ。その美しさは世界一とも言われています。
私がサントリーニ島の空港に到着したのは夜。まずは、宿にチェックインしようとバスで中心街「フィラ」に向かった。
予約していた宿の近くに着いたが、それらしい建物も看板も見つからない。宿の地図は曖昧(あいまい)だし、住所はおおざっぱで番地がない。困ったな。
私はとりあえず、その周辺を探そうと人気のない薄暗い小道に入った。迷路のような細い道が続き同じような建物や道をグルグルグルグル…。ああ、サントリーニ・ラビリンス。
まるで物語やゲームの中に迷い込んでしまったみたいで気分はワクワク。だけど、バックパックを背負ったままの急勾配な坂道や階段で膝はガクガク。
もう限界…。と心が折れそうになった時、とある家のドアの隙間から人々が団らんする姿が見えた。きっとこれは宿だ! 私は、すかさずドアを叩いた。
「ヤ、ヤーサス…」
すると、中から少しビックリした様子の家族が出てきた。普通の家だったのだ。怪しいアジア人が突然すみません。
結局、その家族が事情を聞いてくれ、宿に電話をかけてくれた。しばらく待つと迎えが来て、やっとこチェックイン。宿は他のホテルの敷地内みたいな所にあった。こりゃわからんわ(笑)。
普段から迷う人が多いのか、宿のママは慣れたような様子。それに島人だからなのかギリシャ人だからなのか、とにかくのんびりしてる。
私はハードな宿探しで翌日、筋肉痛。マンマミーア(なんてこった!)です。
見渡す限り青と白!
オフシーズンで大半のお店が閉まってるというのにさすがサントリーニ島、朝になると街は観光客で賑(にぎ)わっていた。西洋人や韓国人、そして特に多いのが中国人。飲食店には英語とギリシャ語の他に堂々と中国語が書かれていたりした。ギリシャでも“爆買い”は行なわれているのだろうか?
さて、サントリーニ島を訪れる多くの観光客の目的は世界一美しいといわれる「イアの夕日」。私もイアの夕日を見ようと市バスに乗り込み、島北部にある絶景ポイント「イアの街」へと向かった。
イアに到着すると、街並みは絵葉書でよく見るサントリーニ島そのもの。目の前に広がる青いエーゲ海と真っ白い建物のコントラストは見事で、360度絵になるその景色に誰もがカメラを手放せない状態になっていた。
建物が白い理由は、地中海で採れる石灰が材料となっているから。暑い日差しで室内が高温になるのを避けたり、殺菌効果があるのだそう。
家もお店も教会も、学校だって徹底して青と白に統一されていて美しい。子供にカメラを向けると「NO! フォト!」と怒られてしまった。ごめんよ…。
今までに行った国の子供は、わりと写真を撮らせてくれたのだけれども、ここは違った。
そう、このイアの街は完全なる観光地。オンシーズンには人が溢(あふ)れかえり、オフシーズンでさえ、こうして観光客が現れる。観光業がギリシャを救っているとはいえ、街の人はうんざりしてるようだった。観光客の立場としては申し訳ないという気持ちと、ちょっと寂しい気持ち。
それを慰めるかのように毛の長い汚れた犬がずっと私の後をついて来た。私が撮影している間は床に寝そべり、歩き始めるとまたついてくる。かわいいやつめ。
そして、ギリシャといえば、やっぱり猫がたくさんいる。財政危機で捨て犬・猫が多いと言われているけれども、この島の動物たちは過ごしやすい気候と絶景の中で幸せそうだ。
「世界一の夕日」を前にして…
いよいよ「世界一の夕日」が始まる。撮影ポイントには人が集まり、私も息を潜めて静かにその光景に目を向けると…何やら、モメ始めるアジア人カップルの声がエーゲ海に響き渡る。気になってそちらを見ると目が合ってしまい、写真撮影を頼まれた。
私がカメラを構えるといくつかのポージングをキメて、最後はキス…。
あ、キス写真を人に撮ってもらう感じ、ですか。ですね。私、秒単位で姿を変える絶景を前に他人のキス写真を一生懸命撮りました。なんだか「マンマミーア!」と夕日に吠えたい気分です。
そして、夕日が沈みかけ、白い壁が赤く染まるにつれ観光客が増えてゆく。すると、今度はどこかの家からおばちゃんの怒号。「NO! ツーリスト出ていけー!」
どうやら私有地に入り込んでいる観光客にブチ切れている様子。注意書きがないところは境目がわかりにくく観光客も困惑している。その後も事情を知らない観光客とおばちゃんとの闘いは夕日が沈むまで繰り返された。
「世界一の夕日」はキスシーンやおばちゃんとの攻防戦とともに繰り広げられる新しい絶景エンタテインメントだった。いろんな意味でドキドキしたよ(笑)。
帰り際に宿近くの小売店で「お手頃ワインはありますか?」と聞くと、出てきたのはなんと1.5リットルのペットボトル!
ちょ、そんな飲めないし、ペットボトルって…。って思ったけど念のため、「おいくらですか?」
「3ユーロ」
「ください」
飲んでも飲んでも減らないワインで、マリーシャの顔は夕日のように真っ赤になってしまいました。マンマミーア。
【This week’s BLUE】 青いドアはこうやって誰かが塗っているんだね。
●旅人マリーシャ 平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】